005 モモンガの闇
気が付けば一日経ってしまった。それは時計での経過時間でそう判断しただけだ。
現実に戻る方法は未だに見つからない。
時間が経ってくると普通は焦るものなのだがアンデッドの身体のせいか、精神は常に冷静でいられた。
それ以外の種族の仲間は多少は元の世界を気にしているようだった。
「アバターだけで活動しているという事は元の世界にあるはずの本体は正常通りに日常を送っているかもしれませんね」
と、言ったのは全身が植物の
種族は『
物事を冷静に判断する能力に長けている。
特に
「つまり精神だけアバターに定着して動いているってこと?」
「そうでなければ現実の方は抜け殻か、止まったままだ」
ゲームしたまま動かなくなっていたら大騒ぎになる、普通なら。
某デスゲームの場合は首謀者が色々と序盤で説明してくれるのだが、今回はそういう存在は現れていない。というか十二年も続けたゲームの最終日にいきなり大ボスが現れるのもおかしなものだ。
理由の一つにユグドラシルというゲームの末期にログインしている人数はモモンガの想像ではかなり少ないはずだ。
苛酷な環境で働く人間が多いし、いつまでもゲームをして遊んでいる余裕は実際には無い。
それでも数万人というところか。
最盛期は海外勢も居たのでかなりの人数が遊んでいたのだが、それも最初の内だけだ。
オンラインゲームは他にもある。
「我々が動いていると同時に現実の本体も日常を歩んでいると?」
「確認出来ないので、断定はできませんが……」
「身体に不調を感じる人は居ませんか?」
という問いに誰もが小首を傾げた。
労働環境が最悪なヘロヘロは特に異常が無いと言って来た。普通なら内臓とか色々と痛めている部分があるのだが眠気も起きていないという。
「昨日まで物凄く眠かったんですが、今は目が冴えて……。何だか健康になった気分ですよ」
「現実の身体から切り離されてアバター特有の身体能力を得た、と考えると納得できますね」
「たっちさんはご家族を残してきたと思いますが……」
たっち・みーは既婚者で娘も居るのは周知の事実だ。一番、現実に戻りたいと思っていても不思議は無い。
「精神が切り離された説が事実なら受け入れるしかないだろう。ログアウトできる方法が見つかるまでは慌てても仕方がない」
腕組しながら言っているのだが、本心は真逆かもしれない。それは他のメンバーにも言える。
弱みは仲間でも見せたくないものだ。
「ここからが問題ですよ」
燃える男『死獣天朱雀』は周りを見回してから言った。
「一蓮托生か、仲間割れで殺し合いか。どちらが面白いでしょうか」
それは笑えない冗談だった。だが、真理であるのかもしれない。
メンバーの誰一人笑わなかった。種族のせいで表情が分からない、ということもあるかもしれない。雰囲気ではそう感じた。
これはとても大事な問題だと思う。
これから先を過ごす上で。
「代表してモモンガさん。指針として決めてください」
「はい。俺は仲間が仲良くしてくれれば文句はありません。それぞれ思うことはあると思いますが、協力し合うべきだと思います」
そう言った後で雰囲気に変化が生まれる。だが、それがどんなものなのかモモンガには分からない。
分かる範囲では、とても不穏な様子だった、としか言えない。
今の言葉に何かおかしな部分があったのか、と。
モモンガの発言を聞いていた仲間のほぼ全ては見えていたし、聞こえていた。
平行世界の様子が見えた、とでもいうような映像が。
一人孤独なモモンガの苦悩が。
「……なるほどね~」
「全く性質の悪い……」
「……世界征服か……」
それぞれ小声で喋りだしたのでモモンガは心配になってきた。唸り始めたので。
「さすが冴えない主人公」
「いや、万年童貞野郎っすよ」
「……それぞれ孤独になったら、ああなるんじゃない」
「……一概に否定できないな」
「あー、いや……。うーん。考えさせられるな~」
たっち・みーとウルベルトが揃って唸っている。そして、何か言いたそうにして言えなくて苦悩している。
それぞれはっきりしない感情に囚われ始めたようだ。
「……エロも必要だな」
「そうかもね」
「……アルベドの設定を書き換えるとは……」
「はっ?」
何だか意味不明な言葉が続いてモモンガは更に不安になる。そして、精神が強制的に安定化される。
「ビッチだもんな……」
「タブラさん、なんでそんなこと書いたんですか?」
「おや、皆さん。
タブラの言葉にモモンガ以外が頷いた。
「あはは。設定ですから何を書いてもいいじゃないですか。自分の
「いや、まあそうなんですけどね」
「今となってはなんであんなことを書いたのか。時間が経つと忘れるものですよ」
「……ですよね」
と、ぶくぶく茶釜が頷いた、ように身体を動かした。というより
「でもさー、個性は大事だよ。全部、セバスみたいなのだったら、堅苦しくて嫌だな」
「ああいうのは一人居れば充分ですよね」
「その点、ウルベルトさんのデミウルゴスも個性的ですよね」
「賑やかでいいじゃないか。無個性な
「全部同じ……」
「全部
「……同じ顔だったら怖いけど」
「データ的にはコピーアンドペーストで楽なんでしょう」
「身も蓋も無いな」
それぞれ話し出したが雰囲気は明るくなってきたのでモモンガは一安心だ。
一時は一触即発のような状態に思えたから。
「仲良くの部分は……、外に出ないでいると危ないかもしれないですね。それぞれチームでも組んで空気の入れ替えのように行動するのが良いのではないでしょうか?」
と、ぷにっと萌えは言った。それに対して五人のメンバーは頷いた。
「……モモンガさんはいつまでもナザリックに閉じ篭っている方がいい? それとも外に出て冒険したいと思わない?」
両手に巨大なガントレットを装備しているやまいこが尋ねた。
モモンガとしてはナザリックで仲間達と楽しく過せれば充分だと思っていた。しかし、冒険するという目的も悪くは無いかもしれない気がする。ただし、一人では心細い。
「ギルドマスターの決断次第では明るくも暗くもなるよ」
「少なくとも今から仲間内で殺し合う事は無さそうだと思うけど?」
それぞれメンバーは殺すべき敵が居ないか探し始めた。
普通に考えればギルドメンバーなのに何故、殺し合わなければならないのか、理解できない。それがクリア条件だとしても行動を起こすのは早計だ。
「一人で宝を独り占めできるんだよ」
と、わざと言った者が居た。それが誰なのかは声色を変えていたのでモモンガは瞬時には判別できなかった。
「……そうであっても元の世界に戻れるわけではない。一人で過すのは寂しいだろう」
ウルベルトの言葉に何人かは頷いた。
「サービスは終了した。それはおそらく確定事項だ。今更アイテムにすがるのはみっともない」
「やめてった人の装備品があるわけだし、一人で王様気分を味わっても孤独は癒せないよね」
だが、モモンガ以外のメンバーは見ていた。
孤独な王様がNPCという大勢の部下に囲まれて幸せそうにしているところを。
ある意味では独りだけ残された哀れなプレイヤーにも見える。
不死のアバターなので死ぬこともままならず、永遠に異世界で暮らすことになる不毛な未来、とも言える。
少なくともぷにっと萌えは終わりの無い人生は恐ろしいと思っている。
永遠にゲームの世界から抜け出せないのだから。
そして、今回はギルドメンバーが半数も囚われた。今は平気かもしれないけれど、次第に精神的な苦しみを味わう可能性は高いかもしれない。
◆ ● ◆
気がつけば百年。千年と過ぎて行くんだろう。
今はその実感に気づかなくて済んでいる。
モモンガのようにぷにっと萌えは慎重に行動するのは案外、有効的かもしれないと思っていた。
物事を性急に進めれば精神もそれだけ早く磨耗するかもしれない。
デスゲームは復活する手段が無いけれど、自分達には方法が存在する。ただ、それを実践するには実際に死ななければならない。
魔法の行使は確認した。おそらく復活コストがかかるはずだ。それも
無理して今から死ぬのも勿体ない気もする。死ななければならない状況でもないし。
ただの確認なのだが、興味本位で取り返しがつかなくなるのも怖い。
「とにかく、まずは知的生命体の発見からですね」
「異議なし」
「世界全土を見てから判断してもいいでしょう」
それぞれ納得し、了承していく。
物騒な話題は避けられたようで、ぷにっと萌えは大きく息を吐き出したい気持ちになった。
アバターは人間的な表現が出来にくい存在かもしれない。特に異形種は。
「不死性の人が多いので●に戻りは出来そうに無いですね」
「残っているメンバーは簡単には死にそうに無いですけどね」
「●に戻りって伏字にする意味が無い事に気づきました」
「……そこはメタ的な意味でぼかせばいいのに……」
「デスルー●はどうかな?」
「一部の固有名詞は使う予定が無いから、そのままでいいんじゃないですか?」
「デスゲームは伏字になってないけれど……。●●●●●●ドはさすがに不味いですよね?」
「●●●●●●ドに
「シズっぽい人は居たかも」
「あれは
賑やかに話し出すメンバー達。
モモンガとしては緊張が和らいだようなので安心した。
ずっと緊張したままの雰囲気は苦手なので。
メタ的な話題をしているのでモモンガは町などを見つけてくれ、と言われて円卓の間を後にした。
執務室に着いてから気がついた。
自分は追い出されてしまったのではないかと。
とはいえ、ずっと居ても会話に参加できる自信が無かったのは事実だ。早く色々と調査したかったから。
『
既に夜、ということかもしれない。
時刻を確認して遠くに視点を向ける。
モモンガは『
画面が暗かろうと問題は無かった。
色々と視点を変えていると横から音が聞こえてきた。つい気になって振り向くとメイドが顔を赤くしていた。
今のは空腹時の音のようだ。
ゲーム時代では絶対に起きなかった事だ。
「……メイドの腹の音か……」
「申し訳ありません。お仕事の邪魔をするつもりは……」
「よい。腹が減っているなら……」
空腹時に装備するアイテム『
アンデッドのモモンガには無用なのだが、生物は空腹になるので長い冒険には必需品となっている。
それを使えば空腹は防げる。そう思ったが食堂が近くにあるのだから使わなければ勿体ない。
金貨一枚で食事を出す『ダグザの大釜』という便利アイテムも思い出した。
「ずっと座っているのも暇だろう」
「い、いえ。そんなことはありません」
「私は操作に忙しい。その間、ここに食事を持ってきても良い。仲間も多くは無理だが……、連れて来てもいいぞ」
モモンガが居るのは仲間も入れる大広間だ。狭いもう一つの執務室には重要なアイテムを保管する上でメイドでも立ち入りを制限している場所がある。
メイド単独では身動きが取れないようなので『
支配者特権という奴は使いどころ次第だが、便利な時もあると思った。
新たなメイドと食事が運ばれる。そこでモモンガは気付いた。
ゲーム時代では当たり前すぎて気付かなかった事だ。
BGMが聞こえない。
いつから聞こえないのかは思い出せないが、メイド達の話し声などを除けばとても静かだった。
魔法を行使する時に妙な効果音は聞こえるのだが、それ以外は音楽らしい音は聞こえない。
別に音を遮断しているわけではない。メイド達の声や食器類の音は今も聞こえているのだから。
「しばらく私は作業に集中するから、お前たちは奥の部屋を使うといい」
モモンガの私室は複数の部屋に分かれている。
寝室。着替えのドレスルーム。書斎がある執務室と応接間。
他にも予備部屋のようなものがある。
「そ、そうですか」
「眠ければ寝てもいいぞ。見張りのシモベも居ることだし」
ギルドメンバー意外にあまり頓着しなかったが、第九階層はたくさんの部屋が用意されている。
メイド達はそれぞれ部屋が与えられているのだが、どんな生活をしているのかモモンガは知らない。
彼女たちを作ったメンバーも設定は与えているが、今も覚えているのかは不明だ。
まさか自我を持つとは思っていないだろうし。
「食事はゆっくりでいいぞ。じ~っと見つめられるとかえって仕事に集中出来ないかもしれないからな」
「そうですね。畏まりました。では、向こうのお部屋をお借りします」
「うむ。……ところで、お前たちは眠る種族だったか?」
「眠ろうとする意思を持てば眠れると思います」
小難しい答えにモモンガは驚いた。
「そうか……。では、眠りたい時はしっかり休め」
「私どものような下賎の者にお心を砕かれるとは恐悦至極にございます」
堅苦しい言葉のせいで良いのか、悪いのか判断できなかった。
「……げせん、とは卑しいって意味か?」
「身分の低い者、という意味でございます」
「……なるほど」
というか、随分と詳しいのだなと驚いた。
一般メイドの知能は自分が思っているより高い気がしてきた。
支配者として少し恥ずかしいと思った。
◆ ● ◆
メイド達を往来がし易い隣りの部屋に移動させた。
本来なら狭い個室に行けばいいのかもしれないが、メイドが待っていると思うと篭れない。とても気になってしまうので。
他人の目。今はNPCの目でも気になるのはどうにかしたかった。
支配者らしくない気がした。
とにかく、画面に意識を向ける。
辺りは真っ暗闇で音は当然聞こえない。
色々と操作した結果、今のところ明かりは見えなかった。
元の世界では何がしかの電気の明かりなどがあり、ここまで暗くなる事は無い。
洞窟の中ならまだしも。
遮るものの無いような草原をここまで暗くしているのは自分記憶の中では見つからないかもしれない。
「……天然の自然ということか……。月明かりはどうなっているのかな」
上空に視点をずらせば夥しい星々の輝きが
鏡越しでは伝わらない美しさがあるかもしれない。これは直接確認しなければならないかもしれない。
一応、メンバーに連絡を入れると、それぞれ嬉しそうな返事を返してきた。
綺麗な青空の次は満天の星空が観賞出来るのだから。
第六階層にはメンバーが想像で作り上げた空があるが、その比では無い。
空想より天然はいつだって勝るものだ。
本当の自然の美しさは科学が発展したモモンガの時代でも再現不可能なほどに。
まず移動する前にメイド達に開けられては困る部屋のチェックをする。
エロいアイテムは持ち込めないので、その心配は無いのだが大切なアイテムというのは色々とあるものだ。それらを不用意に起動させれば部屋が吹き飛んでしまう。
その確認を終えてからメイド達に食事を続けたり、食べ終わった後の退出も色々と許可を出しておいた。
それから転移する。
数度の転移で外に向かうと仲間たちが夜空を眺めていた。
「……凄いですね」
モモンガの視界には何ものにも遮られることの無い星空が広大に広がっていた。
地上に明かりが無い分、より鮮明に星の光りが見えている。
そして、近くには大きな銀色の天体がある。
「あれは……、月でしょうか?」
「……そうらしいのだが……、模様が見覚えの無いものになっている」
地球の月は兎が臼で餅をついているように見える模様なのだが、この世界の月らしき天体は無数のクレーターが見えるだけだった。
「目算が狂っているのかは分からないけれど地球の月より大きい気がする」
「過去の地球……というには材料が足りない感じ」
「……とにかく、綺麗な夜空です」
映像として残すより今は黙って観賞するのが得策かもしれない。
しばし時間を忘れて眺めた後、誰ともなしに墳墓内に戻っていく。
今日で見納めでも無いし、また明日も見られると良いなと思いつつ自室に戻った。
他のメイド達はすでに自室に帰ったようで夜食を終えたメイドが後片付けをしていた。
ただウロウロするだけのNPCではなく、命のある人間のように見えてしまう。
「ずっとここに居る気か?」
「モモンガ様の身の回りのお世話が私の仕事なので……」
ゲームの設定ではそうなっているのだが、実際はただ居るだけで何もしないNPCだった。それが先日までの出来事だ。
今は設定を忠実に実行するようになってしまったらしい。
中には忠実に実行されては困るNPCが居るのではないか、と思い不安になってきた。
モモンガの記憶ではナザリック地下大墳墓を支配しようとするNPCが確か確実に一人は居たはずだ。それが誰だったかは思い出せない。
NPCの中には敵対行動する者も居るかもしれない。特にるし★ふぁーが設定したものは不安しか感じない。
後はタブラなのだが、こちらはどうなっているのか。
アルベドの
唸っていると強制的に精神が沈静化される。
「……確認するのが怖いな……」
一応、それぞれの創造主たるタブラとるし★ふぁーに連絡を入れておいた。
何かあれば奴らのせいだ。
あっちこっちに飛び回れないので、今は明かり探しに集中する。
時間帯が深夜なら完全に暗いままかもしれないけれど、何らかの集落は見つけたい。
見つければ転移魔法で楽に行けるようになる。
目標さえ見つかれば簡単に行けるのは魔法の便利なところだ。
「そういえば、寝ても良いんだぞ」
まだ待機していたメイドに一応は声をかけておく。無理して話しかけなくてもいいけれど、気になってしまったので仕方がない。
「まだ大丈夫でございます」
「睡眠はちゃんと取れ」
「は、はい。では、……朝方まで休ませて頂きます」
「……その前に朝とか夜が何時なのか分かるのか? ここは以前の世界とは違うようだぞ」
「えっ? え……、あの……。申し訳ありません。朝、昼、夜の時刻を正確に言葉で言い表すことはできませんが、だいたいの範囲でよろしければ分かると思います」
メイドが分かると言ってもモモンガには分からない事だ。それをどうして知りえることが出来るのか。少なくともモモンガは教えていない。
「この世界の一日は何時間なんだ?」
「二十五時間五十三分二十八秒でございます」
「……はっ?」
物凄い正確な時間で、尚且つ二十四時間ではないことに驚いた。
「……およそ二時間も長くなっているのか……?」
すぐさまタブラとぷにっと萌え、死獣天朱雀などに連絡を入れていく。
自分達専属のメイドに尋ねて、それぞれ驚いたようだ。
『なんじゃこりゃあ、ですよ』
『メイド達はこの世界に最適化したのか? それはそれで凄いな』
『これはとても興味深いですね』
ペロロンチーノとは違い、純粋な知識人たる彼らならメイドを裸にしたりせず、様々なことを聞き出してくれそうだった。
という事で難しい事はメンバーに任せておくことにした。
人はこれを『適材適所』と呼ぶ。
◆ ● ◆
メイドを自室に帰してしまった後、部屋の中が一段と静かになった。
だが、寂しくは無い。天井には不可視化しているが『
不可視化を看破するスキルも持っているモモンガの視界には彼らの姿が見えていた。
もちろん、床には『
こちらは連絡や荷物運び用だ。
女の子に見つめられるより気が楽になる。
「道なりに進んでいるはずなのに……」
全然集落が見えてこない。
無限ループではないと思うが、そうだとすると嫌だなと思った。
広大なフィールドといえど無駄に長大ではゲームプレイヤーも辟易する筈だ。だから、要所要所に何がしかの目印を置くものだ。
何も無い事もありえないわけではないけれど。
ゲームかゲームでないかの違いは今のところ区別できないけれど、現実世界だと仮定すると目の前の長距離は普通なのか。
移動に何日も掛けるのが当たり前なら不思議は無い。ただ、データ的には無駄という気もする。
モモンガはゲームの思考で物事を考えてしまうので整合性に疑問を感じていた。
ただ、頭のどこかでは思っている。
ここが現実世界だという事を。
確証が無いのでどちらとも言えないだけだが。
「……同じ風景が続き過ぎるな……。道にも変化が無いし」
一言で言えば面白くない。というか、独り言を喋っている。独り身ではついつい自然と言葉が出てしまう。一種の生活習慣病のような感じだ。
いくら平原とはいえ、もう見慣れてしまった。だから、とても退屈を感じる。
明るくなるまで後、何時間だろうか、と思いつつ時間を確認する。あちこちに時計を置かないと駄目かもしれない。
実質四時間は同じ画面を見ていたようだ。
「……もったいない事をしている気がする」
一日がおよそ二十六時間だと仮定すると朝になるまで何時間だろうか。
一日一杯座っていられるのは
飲食も睡眠も必要としない。
ゲームの設定としては理解出来る。だが、それを自分の肉体として納得出来るのか、という問題がある。
あくまで設定だ。実際はお腹が空いたり、眠くて仕方がなくなったりするものだ。
精神がアバターに宿っている、というのが真実だとしても受け入れがたい事実というのはある。
仮に元の肉体と精神が分離しているのならば、元の世界にいる自分は普通に動いている事になる。
仮定の話ししか出来ないけれど、朝の四時となると後一時間くらいかもしれない。
その時間に起きて会社に出社。同時にもう片方の自分は別行動の為に鏡で集落を探す。
理屈としてはどちらも問題の無い事のように思える。
あっちはあっち、こっちはこっち、という意味では。
ぶくぶく茶釜もウルベルトもたっち・みーも。
ただ、もし
時間の流れが同じと仮定する。
ゲームにアクセスしたまま身動きが取れない状態になっている。
下手をすれば衰弱死も起きるかもしれないし、謎の奇病とまでは言わないが病院に担ぎ込まれている事もありえる。
某デスゲームはまさにそんな感じだった。
さすがにあれと同じでは芸が無いけれど。
「●●●●●●ドか……。最終日のタイミングでっていうのは……。●●●ばだともう少し明るい雰囲気のような気もするし……」
オンラインゲームの転移話しを思い出しつつ、どれが適切だろうかと探してみるのだが、あまり詳しくないので結論は出せそうに無い。
仮定は実証してこそ意味がある、とぷにっと萌えは言っていた。
確かに仮定ばかりでは結論など出せるわけが無い。
結局は『机上の空論』に過ぎないのだから。
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