第22話

 東海道線で東京駅まで向かい、そこから高崎線へ乗り換える。奈良県から三~四時間ほどでもう群馬県だ。そこから地方の鉄道をちまちまと乗り降りすると、そこは半年ぶりの上野村、高天原山だった。

「ナオキ~起きて~ここがお父さんの生まれた場所だよ」

 泣かないように、優しく揺すって目を覚まさせる。まだ生後一ヶ月経ったか経たないかなのだが、果たしてこの子に限らず、人間の子どもはいつになったら目が見えるようになるのだっただろうか。まあいいや。

 紆余曲折は経たものの、彼ら今泉家の大切な形見はナオキという名前をもらい、立派に育っている。

 私はナオキを抱え直して、高天原山に向けさせる。

「……さすがに、まだ立ち入り禁止か」

 隣で岡田がその旨の書かれた看板を眺めながら呟いた。仕方ないといった風だが、少し残念そうだった。

「まあ、別に安全面では何も問題なさそうだけどね。案外実はもう大丈夫なのに看板を外し忘れているだけかも」

 ナオキをあやしながら岡田に話す。ナオキはどこか不思議そうに辺りに目を向けていた。これはもう見えているってことでいいのだろうか?

 いつか、ナオキにきちんと物心がつき、この土地の意味を真に理解できる年になって、それからまた来れば良い。

 そして私たちでナオキを支えるのだ。

 もう、この子の父親のように一人にはしない。

 ナオキはナオキだ。

自分がないなんて、絶対に言わせない。

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