第14話

「探し物は見つかった、晟?」

 少しだけ息を切れさせながら、真優は真っ直ぐこちらを見ながら話しかけてきた。まるで、最初から僕、今泉晟がここにいるのを分かっていたかのように。

「……うん。荒らされていて、もうもぬけの殻みたいなものだったけどね」

 僕の方も、まるで真優がここへとやって来るのを分かっていたかのように、平然と答える。

 この共通理解の中でしかなし得ない、掴み所のない会話を通して僕は確信した。

 真優はもう、ほとんど答えに辿り着いている。

「……だって、『九州勾玉説』なんて馬鹿げた説を唱えたのは、誰あろう、私のお父さんだもんね」

 真優は、今泉照人のことを「私のお父さん」と言った。ただの「お父さん」でも、「私たちのお父さん」でもなく。

「まあ、確かにちょっと露骨すぎかなとは思った。あんなもの、他の刑事ならまだしも、真優が相手じゃまるで『犯人は僕、今泉晟です』なんて言っているようなものだし」

 でもまあ、あれで良かったんだよ。

 目的は達成できたし、僕は真優に気付いて欲しかったんだから。

「……ここが、本当の神武天皇陵なんだね」

暗闇で何かが見えるわけでもないが、真優はそう呟きながら辺りを見回す。

 そう、僕は全国でテロを起こす中で、奈良県の畝傍山東北陵(うねびやまのうしとらのすみのみささぎ)じゃない、神武天皇の本当の墓を探していた。殺す前に今泉照人から聞き出そうとしたけど、彼は高天原のどこかとしか教えてはくれなかったので、見つけるまでに少し時間がかかったのだ。

「二〇数年前にあの事故が起きなければ、ジャンボ機の軌道が少しでもずれていたら、今泉照人は真優のお母さんを偲ぶためにここに来ることもなかったし、そこで本物の神武天皇陵を偶然見つけることもなかったのにね。そうすれば、僕も生まれなかった」

 思い出すのは、昨日の朝、今泉照人の殺害が報道される隣で紹介されていた、軟組織から恐竜を再生させようとするプロジェクト。ああいった科学医療は、技術の発見から実用されるまでに、安全性の観点から二〇年以上の検査期間がいる。


「――そうだよ。僕は、葛城王朝の創始者で、後に崇神天皇に滅ぼされるまでこの国を統治していた、今は神武天皇と広く呼ばれている男の、クローンだったんだ」

 真優の反応に構わず、僕は続ける。

「『二つの歴史を重ねし者』とは、誰でもない、二〇〇〇年前と今とを繋ぐ、この僕のことだ」

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