第9話
取りあえず遠目から爆発テロの取材を終えた後、津久井圭吾を使ってあの謎の剣を警察に届けさせ、あたしたち記者二人は車で雑魚寝に入ろうとしていた。もう立派な深夜……ではない、明け方である。
「えと……うん。もうそろそろ『へ、変なコトしたら許さないんだからね!(据え膳)』みたいな若いノリは面倒になってきたから敢えて言わないけど、そんな感じで」
「そちらこそ変な期待はしないように。三〇代女性の性欲は一七歳男子のそれと同じくらい強いらしいって聞いたけど、今日はさすがに相手できるほど元気残ってない」
「そもそもあたし三〇代じゃないし、何よそれ……どこ情報?」
「三〇代女性が一七歳男子をいただきますするエロゲーだよ」
「信じられるかそんなもん!」
とまあ。
こんな感じであたしたちは疲れ切っていた。とにかく一刻も早く眠りたくて仕方ないのだが、どうにも車の座席というものは眠りづらい。お互い寝るに寝られなかった。
あたしは、テロ現場近くで拾った謎の剣のことを思い出す。ついでに、その剣によって貫かれていた手紙のことも。
「ねえ……『犯人は、先日今泉照人を殺害した者と同一人物である』ってメッセージカード、本当にそうだと思う? 何かうさん臭いんだけど」
「まあ世間の多くはイスラム過激派の仕業だと思っているだろうけど、愉快犯の可能性だって十分あるからね。本当にただの思いつきで、あちこちで犯罪を楽しんでいるのかもしれないし。でもまあ俺たちがこれらを発見できたことは僥倖だ。他のマスコミたちよりもかなり深い記事が出来る。……月刊誌だから相当速報性には欠けるけど」
「まあ、それは諦めなって」
そんなこと、配属になった瞬間から分かっていたことだろうに。
「千歳お前、同級生に奈良県警の刑事いたよな、確か。寝て起きたら話聞いてみて」
「あいよー」
だんだん眠気が強くなってきた。意識が朦朧として自然とまぶたが重くなる。
おやすみー。
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