第6話

 ざわめき。怒鳴り声。呻き声。警報音。救急音。悲鳴。爆発音。火災音。

 はっきり言って、地獄絵図だった。

「要救助者発見! 三十代男性! 頭部及び腹部に裂傷! 自立歩行不可能のため、担架と応援願います!」

「――ァァアアアアア! ママぁ、ママぁ……」

「仮説医療所はあちらになります! ご自分で移動の出来る方は建物から十分に距離を取ってお進みください!」

「――――」

「――――」

「……ねえ、これあたしたち暢気に取材しててイイの?」

「ダメだろう、これは。今俺たちが何よりも優先すべきは取材なんかじゃない。まずすべきは――」

「――すべきは?」

「安全確保のためにもうちょっと現場から離れよう!」

「ですよねえええええ!」

 いや、もう既に救助隊は編成されたようで頑張っているようだし? あたしたちが救助の迷惑になっちゃ大変だし?

 そんなこんなで、あたしたちは結局あのまま本社へと帰らずにテロの現場へと来ていた。ちょうどあたしたちが現場の近くを取材中だということで、こうして派遣されたわけだ。よくよく聞いてみるとテロがあったのは鳥取県の大山(剣ヶ峰)という山で、別に広島ではなかったのはご愛嬌。ということでとてつもなく残念なことに、今日あたしは隣で車を走らせて現場から距離を取っている津久井圭吾と共に、夜を越さねばならないのだった。

「ちょっと! もう少しスマートな運転できないの? 揺れるんですけど」

「いやいや、俺だって今さっきまで目の前にあった非日常に何も感じなかったわけではないんだよ? 怖いんだよ、もし途中で銃持った犯人に出くわしたらと思うと……」

「ええいこの意気地なし! 見損なったわこの野郎!」

「まだ見損なわれるほど君が俺に価値を見出してくれていたことに驚きだよ俺は!」

「ああもううるさ~いっ! ……ん?」

 津久井圭吾と言い争いをしている中で、あたしは道ばたに何かが転がっているのを見つけた。もうとっくに日は沈んでいて真っ暗なのだが、何かの金属だろうか?

「ちょっと停めて。何か落ちてる」

 津久井圭吾に車を停めさせて、先程何かを見かけた場所まで小走りに戻る。辺りは何も見えないが、車に置いてあった非常用の懐中電灯を使ってそこかしこを照らす。幸いなことに、それはすぐに見つかった。

「……何これ、剣?」

 それは歴史の教科書に載っていたものにひどく似た、古びた剣だった。

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