第4話
「はぁ~い笑顔で! いいよいいよグヘヘ。じゃあ次もうちょっと薄着に着替えてから撮ってみよ~」
「やめんか六本木千歳の皮を被った変態親父め」
後頭部に衝撃を受ける。おそらく津久井圭吾に殴られたのだろうけど別に今は目の前の被写体に夢中で気にならない。
……。
「いや~何だよ先に言えよ! 取材先の養殖家があんなに美人な人だなんて知らなかったぞ、このこのぉ」
「……そうだった。確かお前そういうヤツだったな」
無事撮影を終えて、あたしたちは広島の有名な観光地を巡りながら色々と他の記事に使えそうな写真の素材集めをしていた。これなら当分ネタには困らないだろう。
それにしても、今日は思いのほか取材旅行を楽しんでしまった。何の違和感もなく街に溶け込んで走る路面電車を見た時は外国にでも来たのかと思ったが、たまにTVなどで見る『昭和』というものを直に感じられてかなり興味深かった。機会があったら、今度は仕事ではなくきちんとした観光としてやって来たいものだ。幼馴染みの華蓮でも誘ってみようか。
「あ~可愛かったなあ、あの子。何だかんだで牡蠣もタダ同然でもらえたし……ねえ、あの記事あたしがもらってもいい? どうせあんたあの子にも牡蠣にも興味ないんでしょ? あたしが宣伝効果抜群な記事にしてあげるから!」
「まあそれはいいけど……そろそろ帰り支度始めないと明日の入稿間に合わないんだけど。別に千歳が俺とずっと一緒にいたいって言うなら構わないけど」
「やめい気持ち悪い!」
厚着していたのを忘れるほど鳥肌立ったわ!
と、その時、津久井圭吾の携帯電話に連絡が入った。
「はい、津久井です。――ええ、今広島にいますけど?」
あたしは会話が途切れたのをいいことに敏感になった肌をさする。しかし津久井は先程の軽口から一転、真剣な声で電話先の相手へと聞き返した。
「――えっ、広島で爆弾テロ?」
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