オニカノZERO!
枕崎 純之助
第1部 第一幕 鬼ヶ崎 雷奈
第1話 鬼ヶ崎 雷奈の事情(前編)
たゆまぬ努力は才能の壁を超える。
かつて
「バカみたい……」
一千年続く由緒ある神社の娘として生まれた彼女は、そんなかつての自分を苦々しく思いながら、神社の裏手にある先祖代々の墓である【
家族も寝静まった真夜中のことである。
当然のように無人でひっそりと静まり返ったその場所には、立ち並ぶ墓石の一番奥に巨大な岩が
人の身の丈よりも大きく、直径2メートル以上はあろうかというその異様な大岩の表面には【
「
それはこの
一千年の昔、破壊の申し子として人々に恐れられた大鬼をこの地で封じたのは、
以来、
「まあ、あんたも私みたいな弱い娘は願い下げでしょ。この私が本気で鬼
ほどよい痛みを拳に感じながら彼女は失意の表情でため息をついた。
その時だった。
敷き詰められた
夜中に家の外にいるところを家族の誰かに
だが、敷地内の外灯に照らされてそこに立っていたのは彼女の見知らぬ若い男だった。
ハッと
「こんな夜中に参拝かしら? あいにく神様もお休み中よ」
そう言って相手を
男の様子が明らかにおかしかったためだ。
まだ20代前半くらいの若い男のようだったが、その顔は不自然に引きつり、口からは意味不明な言葉を漏らし続けている。
何よりも異様だったのが、男の頭に奇妙なものがしがみついていたのだ。
それは小型犬くらいの大きさの動物に見えたが、首から上は肉も皮もなく、
この世ならざるものに見識のある
「そっちのお客さんか」
男は
「ウガァッ!」
奇妙な化け物に取り
「くっ!」
狂人と化して襲いかかってくる若い男を前にして
空手を習い、小学校および中学校の頃には全国大会で常に優勝を争うまでに腕っぷしを上げた。
どんなに厳しい練習にも耐え、決して弱音をはくことはなかった。
努力が才能の壁を超えると信じて疑わなかったからだ。
だが、努力ではどうすることも出来ない壁が彼女の歩みを止めてしまった。
「ガァッ!」
男は狂ったような声を上げて
だが倒れた男は
「……やっぱりね」
悔しげにそう吐き出す
鍛え上げられた拳と脚力とでこの若い男を叩きのめすことは難しくない。
しかしその男を狂人たらしめている化け物を倒す
いくら男を痛めつけようが、化け物は痛くもかゆくもないだろう。
そのことが分かっているからこそ、
以前にも似たようなことがあった。
幼い子供が取り
助けを求める
「もし鬼
それは彼女の思いの丈を
鬼ヶ崎
それは喉から手が出るほどの深くて濃い
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*本編はこちら
『オニカノ・スプラッシュアウト!』
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