第八話『双子、西へ』
『双子、西へ』
それは衣替えもすんだ六月の頭の事だった。
私立山手女学館の三年生は、修学旅行初日を迎えていた。
地下鉄新横浜駅のホームに降り立った
「ちょっと早く着き過ぎちゃったかなぁ」
集合時間は朝の七時だ。
しかし、時計はまだ六時半ちょっと前だった。
(誰も来てないよね)
そんな事を思いながらエスカレータを登り切る。
「わぁー!」
そこで琴美は驚きの声を上げた。
交通広場には、既に多くの光沢がある白いセーラー服姿の女子で溢れていたからだ。
「羽音ちゃん」
その中に知ってる顔を見つけた琴美は、足早に駆け寄った。
「おはよう」
琴美の声に、
「うん、おはよう」
それから、笑顔を見せる。
「早いね」
すると、琴美は周りをキョロキョロと見回した。
「あれ?」
当然いるはずの
「音羽ちゃんは?」
「そこ」
首を傾げる琴美に、羽音は指さした。
「すやすや~」
その先には、床に体育座りをして、旅行カバンに肩を預けて眠る羽音と同じ軽くウェーブのかかったサラサラの髪を背中まで伸ばし、羽音と同じくりっとした目とぽっちゃり気味の頬が愛らしい美少女――姉の楠音羽の姿があった。
「お休み中かぁ」
琴美は冷汗笑いをするしかなかった。
音羽と羽音、二人は双子姉妹だった。
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