【バス旅】

「じゃあ、出来るだけバスを使うよ」

 頬を膨らませた音羽を宥めるように羽音は言った。

「わぁーい!」

 すると音羽は機嫌を直して、ほんわか笑顔を浮かべながら、羽音に横から抱きついた。

「ありがとう、はのんちゃん」

「でも、バスの路線が今イチわからないんだよね」

 それを冷汗笑いで受け止めながら、羽音は困り顔をする。

 京都の道は碁盤の目のようになっているが、そこを縦横無尽にバス路線が引かれていて、路線図を見ただけは何が何だかわからなかった。

「それは、自分が調べよう」

 薫が真顔で手を上げた。

 こういう調べ物は薫の得意とする分野だった。

「じゃあ、お願い」

 羽音はにっこり微笑んだ。

「任された」

 それを聞いて、なぜか敬礼を返す薫だった。

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