【役割分担】

【役割分担】

「そんなことないよ~」

 羽音は大変お冠だったが、音羽は全然気にする様子もなく笑顔のままでおっとりと首を横に振った。

「わたしも~、ちゃんと自分の役目、果たしてたよ~?」

 それから妹を見詰めて、やんわりと力説する。

(…………はぁ)

 羽音は、心の中で強く溜息をついた。確かに最初は音羽も一緒に酒肴を作っていた。けれども、それを母の元に持って行ったまま戻ってこなくなり、気が付くと、母と共に飲み食いに興じていたのだ。あれで役割を果たしていたとはとても思えない。それでも、疑いの眼差しで姉を見つつ、念の為、聞いてみた。

「……役目ってなによ?」

 と、音羽は、慢心の笑みをにっこり浮かべて言い放った。

「お酌~」

「……」

 自信満々で微笑む音羽に、ストローを口にしたまま冷汗笑いで膠着する琴美と、目眩を覚えたように頭を抱える羽音だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る