【昨夜の事】

 そんな話をしていると、突然、羽音が目を濁らせて肩を落とした。

「どうしたの?」

「なんか、お母さんの話してたら、昨日の夜の事、思い出した……」

 首を傾げる琴美に、羽音は疲れたように答えた。

「いろいろあったって言ってたよね?」

 疲労感たっぷりの言い方に、さすがに心配になった琴美は恐る恐る聞いてみた。と、羽音は、まるで悪夢でも語るようにぽつりぽつりと話し始めた。

「昨夜、お母さんが開始早々、儲けたってはしゃいで……」

 それは深夜の零時過ぎ、そろそろ寝ようとしていたところに、上機嫌の母がリビングに降りてきて……、

「いきなり、祝杯あげるからつまみを作れって言い出したの」

「本当~、大変だったね~」

 うんざりそうな羽音に、隣の音羽もほんわか笑顔で同意する。しかし、羽音は直ぐに横を向くと音羽の目の前に人差し指を突き出した。

「って、おとはは、あたしに料理全部任せて、途中から一緒に食べてたでしょう!」

 そして、眉をつり上げておもいっきりツッコミを入れる羽音だった。

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