【お願い?】

「音羽ちゃんって本も読むよねぇ? やり繰りとか、大変じゃない?」

 一口、ジュースを口にしてから、琴美は聞いた。作家志望の音羽は読書家でもあり、休み時間によく本を読んでいるの知っていたからだ。

「そうでもないよ~。本は、図書室から借りてるから~」

 ほんわか笑顔で答えてから、音羽は感慨深そうにしみじみと言った。

「最近は、読みたい本も直ぐに入るし~」

「いや……」

 が、その言葉に羽音が静かに異論を唱える。

「それは、おとはが図書委員をたらし込んで、入れさせてるんでしょ?」

 そして、ムッとした顔で自分が知っている事実を音羽に突き付けた。

たらし込む!?」

「そんなことしてないよ~」

 琴美は驚きの声を上げたが、音羽はほんわか笑顔のままできっぱり否定する。

「ちょっと抱きしめて、お願いしてるだけだよ~」

「…………」

 自信満々でにっこり微笑む音羽に、呆れて物も言えなくなる羽音だった。

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