【小規模な葛藤】

 そんな小競り合いからしばらくして、試着室のカーテンから琴美がそっと顔を出した。

「終わったけど……」

 直ぐに音羽が喜びの笑顔でカーテンを開けようとする。

「わぁ~、見せて~、見せて~」

「あっ! 待って!」

 しかし、琴美はカーテンを力一杯押さえて抵抗する。

「どうしたの?」

「えーっと……そのぉ……やっぱり恥ずかしい…………」

 首を傾げる羽音に、琴美は頬を赤く染めて照れるように言った。

「大丈夫だよ~」

 しかし、音羽は呑気に言ってから、

「ほ~ら~、ご開帳~」

 楽しそうな笑顔で、剥ぎ取るようにカーテンを一気に開けた。

「きゃっ!」

 不意打ちを喰らい、悲鳴を上げながら身体を隠すように屈み込む琴美だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る