【妙案】

「じゃあ、はのんちゃんはこれ、琴美ちゃんはこれね」

 いつも以上ににこにこしながら、音羽は両手に持った服一式を羽音と琴美に渡した。もちろん、自分の分もちゃんと持っていた。

 琴美はとりあえず手渡され服を確認した。恥ずかしさが増す。自分の事で一杯だったので、音羽と羽音がどんな服を着るのかまでは気が回らなかった。

「誰から着替えるの?」

 試着室の前で羽音に尋ねられた音羽は、ほんわか笑顔で答えた。

「わたしとはのんちゃんかな~?」

 それを聞いた羽音は試着室を指さしながら、ジト目で再度尋ねる。

「試着室、一つしかないんだけど?」

「そんな簡単~」

 しかし、音羽は、人差し指を立てると自信満々で言った。

「一緒に着替えればいいんだよ~」

 それから、羽音の腕に自分の腕をがっちり絡める。

「ちょっ! お、おとはっ!」

 慌てる羽音を無視して、試着室へと連行する音羽だった。

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