【威圧】

「はのんちゃんのも~、わたしが選んであげるね~!」

 上機嫌ハイテンションの音羽は、機微を返すと喜び勇んで服を選び始めた。

「あっ!」

 それを見た羽音は、小さな悲鳴を上げた。

「あたしはまだ着るって言って・・・・・・」

 そして、慌てて姉の行動を止めようとする。だが……、

「羽音ちゃん?」

 背中から聞こえてきた押し殺すような声に、言葉を遮られる。

 振り向くと、琴美が微笑んでいた。しかし、笑顔が怖い。まるで威圧するような笑みで、羽音に迫ってくる。背後には、どす黒いオーラーが燃えさかる炎のように立ち昇っていた。

「一人だけ逃げるのは、ずるいよ?」

「・・・・・・・」

 こうなると、羽音も覚悟を決めるしかなかった。

「わかった・・・・・・付き合うよ」

「ありがとう、羽音ちゃん」

 仕方ないという仕草で頷く羽音を見て、安心したように柔らかな笑みを浮かべる琴美だった。

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