第3話
「きれいに折れなくなったの。」と彼女はすでに涙でぐずぐずになった声で、それでもはっきりといった。
何故だか、妙に納得した。
彼女にとって、【きれいに折れなくなった僕】との関係は、修正できるものではなくなっていた。折り目が付かない程、きっと僕らは固くなってしまったんだろう。
それが僕らの関係を終わらせるすべてだった。
ゆっくりとベッドから起き上がる。
朝の冷えた体温に、冬の冷気が容赦なく襲ってくる。
「寒い…」
小さく呟けば、もっと寒さを感じるようになった気がして少し後悔する。急いで着込まないと、僕は軽く震えながら昨日から変わっていない洗濯物の山へと手を伸ばした。
服を着て少しの暖をとる。
いつものように、コーヒーを飲もうと数か月前に買い替えたばかりのコーヒーメーカーにマグカップをセットしようとして、手を停めた。
かちゃん、とかわいらしいお揃いのマグカップ同士がぶつかり合う。僕が手にしようとしている青いくまさん(キャラクターの名前は忘れてしまった)とその横にある桃色のくまさんがきちんと仲良く手をつなぐようにして並べてあった。そういえば彼女は、このマグカップが手をつなぐようにして置かれていないと可愛らしく頬を膨らませて怒ってた。私たちがずっと手を繋いでいられるわけじゃないんだよ、なんて言うから、だからってマグカップにやらせなくても、と笑いながら返したのを覚えてる。
思い出してしまえば、どうにもこのマグカップを離す気になれなくて、一人の頃に使っていたマグカップを食器棚の奥の方へと手を伸ばしてとった。
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