A5-5
続けて行われた一回戦、第三試合。
これは明確に一方的な試合になった。
「Noooooooooooooooo────!!」
メインスキルは〈
しっかりと
──が。そのドラゴンマンが、山本道則には手も足も尾も出ない!
「なるほど
言いつつ、山本は至近
「が……手と足がある相手なら、こっちの技は使えるんでな」
「No……! No……! Oh my God……!」
そのまま敵の腕を
爪も、牙も、尾も、相手に
山本は
「Goa……aaaaaaaaaaa!!」
「ぬう……ッ!?」
竜の口から赤い
実力差を肌で感じたドラゴンマンは、大技に
あたりを
必殺の、飛び後ろ回し蹴り。
山本はそれを……爪の
──が! そこに追加で
回し蹴りが通り過ぎれば、当然次に現れるのは尻尾である。不意打ちで何人もの
「Ahhhhhhhhhh!! I……I am……Dragon‐man!!」
竜が
そこをそのまま摑まれた。
「いい技だ。だが不用意だったな」
「What!?」
山本は
「No…………!」
ドラゴンマンは
山本は無言で拳を振りかぶる。
「Wait……!! Wait……waitwaitwaitwait」
そして竜人の
「どうだい? 人間様もなかなかやるもんだろう」
爆発した竜人のアバターを見下ろし、山本は言った。
彼は、スキルを
[FINISH!!]
[WINNER YAMAMOTO]
***
「さあ、いっくよー!」
この試合何度目かのアピール。鳴り
人差し指を天高く
だがそれでも……目の前の相手は、不動。
「いくら
Yamatoは両足をどっしりと構え、右手を引いたまま動かない。不用意に近づけば、
一回戦第四試合は、
「ちっ、ノリの悪い相手ね……どう料理しちゃおっかな」
AKARIは不満げに舌をなめずる。素の顔が出かけている。もっとも、この好戦的な表情のほうを好むファンもまた多いのだが。
(うーん……困ったな。コイツの対策、ちゃんと考えてなかったわ……)
強気な言葉の裏で、彼女は考えていた。
(山本に百道、ヤバイのはもっと
AKARIは目つきを鋭くする。
(コイツをどうするか……)
(今から)
(考える)
そして彼女は
天野アカリはもともと頭の良い少女である。学校の成績も良いほうで、鋭一にも「勉強教えてあげてもいいけど」と言っていた。歌もダンスも
そしてもちろん、その思考力を、戦闘に
一秒にも満たない時間の後。AKARIは顔を上げた。
「……よし、いける!」
AKARIは加速した。「待ち」を決め込んだYamatoを
AKARIの動きがピタリ、と止まる。
ほんの一瞬の停止。これは、あるスキルの予兆を示している。一瞬の「
そのスキルとは? 彼女は今まで、
YamatoがAKARIを再び正面に
彼女の姿が消えた。
──〈ショートワープ〉!
「……つ か ま え た♥」
Yamatoの耳元でアイドルが
右に注意を向け、相手を動かし、その逆をつく。スキルまで使った
目の前には相手の右腕がある。関節技の使い手からすれば、それは
「──ぐうッ」
「ごちそうさま☆」
「何を……油断している?」
「へ?」
AKARIのアピールを打ち切る声がした。敵のHPはまだ残っていた。彼女は視界の
「くらえ。
「おわあ!?」
最大威力の正拳
命中すればHPの大半を持っていくであろう、
「……もう! やってくれるわね!」
「そんなに勢いよく手ェ出すなんて……。
ファンサービスのような言葉とともに、AKARIは
敵アバターが
[FINISH!!]
[WINNER AKARI]
***
「──ふう」
試合を終え、ゴーグルを
ファンたちは喜んでくれている。彼女の勝利を。
それは良い。それは
……でも。
「まだ……まだだよ」
あれではいけない。あれは理想とするヒロインの姿ではない。
「私は──」
金谷がテンション高く場を盛り上げているが、耳に入らない。
自分をスカウトしてくれたのは彼だが、彼が必要としているのは「アイドル」としてのAKARIだろう。
それだけじゃない。自分がなりたいものは、それだけじゃないのに──
戦いの熱が冷めていないのだろうか。思考がおさまらない。ついつい、考えを続けてしまう。少し、落ち着かないと。
「! あかりちゃん」
控室に
「あかりちゃん、勝った。やっぱり可愛いし、強い──!」
「そ、そう?」
つい返事する。可愛らしい表情。
……が、アカリはその手をひっこめる。
「ショートワープ、使うなんてなあ。やるじゃん」
葵の近くには鋭一もいた。その鋭一が……
……が、アカリは両手で自らの頰をパチンと
「わっ、ど、どうした?」
「あかりちゃん……?」
「……当ッたり前でしょ。私は、最強になるんだから……!」
アカリはどこか必死な目で控室の奥へ歩みを進め、二人から
「こんな……私は、こんな程度じゃないんだから……」
アカリの背中
強気な言葉のわりに、彼女の口調がどこか弱めだったからだ。
トーナメント本戦・一回戦
残るは、四人。
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