A5-3
「さて……
「……あの動き……俺ならどう対処……〈
「オイ安田?」
「あっ、ハイハイ!?」
「ゴースト・キャットの印象を聞いてんだよ。客席に聞こえるように言ってくれんか?」
「あー、
つい先ほどまで
「ビビってるとモテないぞ安田君。女っ気が
「うるせー。そっちこそ、お熱の女子高生社長から見向きもされてねークセに」
「……ギャラは半額カットくらいでいいかね?」
実況席では、相も変わらず
「コホン。つまりだな、あの『アオイ』はそのくらい
「……ソウジャンは初見殺しを
「そう言えるかもな。でも、ま、ゲームじゃ初見殺しはつきものだ。何がきても対応できるようにしておかないと」
「なるほど。安田君は
「てめェ
「次は、まさにその『初見殺し』の
葵と美羽が去り、次の試合の準備が進められる中央ステージ。
客席からの
ピッピッピー ピピッピピー
ドンドコドンドコ ドンドコドンドコ
南国を思わせるリズムとともに、その戦士は現れた。
パーカーにジーンズ、そこまではいつも通り。
だがその者はキリンのかぶりもので顔を
全身にサンバ
「ヘイヘ~イ! キリンのサンバ~!」
テーブルを挟んで立ち、試合に向けて精神統一していた少年は、その一言で思い切りズッコケてひっくり返り、何もかもが台無しになった。
「な……何がキリンで、なんでサンバだよ!?」
鋭一は
「キリンがサンバしてるから、当然キリンのサンバではないのかね君ィ」
相手の集中を
「まあ、ジャマだからこれはもう取るんだけど」
そして
キリンの中から現れた、サングラスをかけた人物は
「ご
「よ、余計なお世話だよ……」
「どう? もっと楽しくする? この衣装着る?」
百道は全身につけた羽根飾りをうっとうしそうに外しては鋭一に
「……ご心配なく」
「ほう」
「そんなもんつけなくても……俺は、楽しいからな」
「ハハ、そりゃ良かった」
会話の中、会場のスタッフから二人にゴーグルが手渡された。百道はゴーグルをつけるためにサングラスを取り……
「なら……その楽しさ、試合で見せて
そして戦いの
***
白いバトルジャケットを身にまとった少年アバター、A1は
前を見据えて──再度、
「こ、この
彼の目の前に降り立った存在とは。
シュノーケルと水中ゴーグルを装着し、
「クハハハハハ。夏の魔王・バカンスフォームにて参上!」
「まだ夏には大分早えーーよ!」
以前タッグバトルで倒した、百道の勝負アバターと
客席からは笑い声も聞こえてくる。
「これだよ。コイツの、こういうとこだよ……。あと俺より人気取るなよ!」
安田は頭を抱えて
「いやいや。大会さえ盛り上げてくれるなら何でもアリだとも」
金谷は
そうしているうちに──
[READY]
よりにもよってこんなタイミングで、試合開始の合図が始まってしまった。
A1は大慌てで構えを取る。これも百道の計算のうちだというのか?
集中が定まりきらぬ中──
[FIGHT!!]
戦いが、始まった。
先に動いたのは、百道!
「さあ……ワクワクの夏休みの始まりだ!」
浮き輪こそあるが、動きはいつもの
「そんなモンで……何しようってんだよ!」
ギリギリでサドンデスの構えを整えたA1はいつも通りに
集中を乱されはしたが、どんな
そこへ、百道が
──〈フラッシュ〉!
相手の目をくらますA1の定番スキルが発動した。モノが光であるだけに、これはかわしようがない。
浮き輪を顔の前に構え、
光が、浮き輪のビニールを通って分散してゆく。これがスキル〈武具:浮き輪〉の使い道というわけだ。〈フラッシュ〉対策!
A1の至近
「クハハハハ……バカンスの力を甘く見たか──」
が。
魔王の腕はA1の
「……何だと?」
「魔王様が光属性を
閃光はあくまで補助。A1をサドンデス王者たらしめている強さは、その本質はそこではない。
敵の攻撃を見切り、こちらの攻撃を当てる。その地力こそが、彼がこれまで
さらにA1はこのタイミングで〈ショートワープ〉を発動。後退し、百道と距離を取る。そして仕切り直しつつ、口を開いた。
「初撃。決めたぜ」
A1の決めゼリフに、観客席が
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