第9話 個人情報を確認
「ふう……」
人見知りではないが、やはり女の子と二人で部屋にいると緊張する和人。
葉奈が出て行ったのでほっとため息が漏れる。
「さて、帰る前に仕事するか」
そう呟いて、椅子に座る。
とりあえず、目の前にあるノートパソコンを開く。
統合IDは聞いた。
学内のIDは全てこれでいいそうだ。
それを入力し、職員専用ローカルサイトを開く。
そこから更に自分のクラスの生徒の個人情報のページを開く。
葉奈に聞いた話によると、ここでは自分が担任になるクラスや、担当するクラスの生徒の個人情報が閲覧できるらしい。
個人情報と言っても、顔写真と成績やこれまでの担任が記載した趣向や性格、後は住所電話番号、家族構成、くらいだ。
とりあえず、名前と席位置は覚えているので、顔写真で一致させつつも、今日の印象を照らし合わせる。
最初に何度か質問していた生徒、放課後に教壇につめ寄ってきた生徒などを顔と名前、そして情報を照らし合わせる。
そして、最初に「専攻以外の教科を教えるのか」という、少し好感が高いとは言えない質問をして来た生徒。
画面の写真も生意気そうなツインテールが映っている。
彼女の名前は
高校編入組で、成績は普通。
生活態度も問題があるとも思えない。
明るい女の子で、少なくともデータを見る限り生意気な言動はないようだ。
一年生の時の担当は、問題があるなどとは書いていない。
だが、少なくとも教師に向かってあの態度を取るなら、これまで問題にならなかったわけがない。
「うーん……気のせいか……」
別にああいう質問が悪いわけじゃない。
和人が気にしたのは、あの態度だ。
少なくともあれば和人を見下しているような表情が混じっていた。
そして、周囲も彼女なら仕方がない、という態度だったから、そんな奴だと思っていたのだ。
ああ、木庭椰が言うのは仕方がない、という諦めのような態度。
だが、少なくとも、ファイル上の情報では気になる点はない。
強いて言えば、部活の欄に「白百合を愛でる会」という、何をやっているか不明の謎の団体名が書かれているくらいだ。
部活の趣旨は分からないが、お嬢様学校だしこういう古来からの意味不明な部活もあるんだろう。
それを除けば、特に気になるような生徒ではないだろう。
気のせいなら問題はない。
第一印象が気になったからと言って、それだけで判断する職業ではない。
「帰るか……」
確認したかったのはそれだけだった。
ノートパソコンを閉じようとして、ふと思いだして、「麻流山映魅」で名前検索した。
一件表示される。
クリックすると詳細情報が開く。
開くということは、何らかの教科の担当をするということだ。
和人はため息を吐く。
あの子の担当は面倒そうだな、と。
和人の担当は英語。
中学時代の成績は、国語と歴史は得意だが、数学と理科、英語は苦手、という感じか。
体育の成績は実技だけはいいようだ。
だが、部活は特に入っていないようだ。
ああいうのは、スポーツでもやらせておけば、一直線に上達していい成績を残すのではないだろうか、などと考える。
これ以上は本当に調べることもない。
和人はパソコンの電源を切り、部屋を後にした。
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