第五話

 僕はいつの間にか家のベッドにいた。

 たぶん寝ていたのだろう。

 居間に行き、父がいたので話しかけようとしたら、笑いを必死に堪えている顔が見えた。

「お父さん、なんで笑っているの」

 父は、一瞬真顔になり、やはり耐えきれなかったのか大笑いしだした。

 そこから約一分後。

「絆、お前にいくら話しかけても歩みだけは止めずに口をポカーンと開けているから。ホントにやばかったぞあれは。隣で大笑いしても気付かないんだからな」

 駄目だ。少しだけ想像してみたけど、自分のことなのに大笑いできるレベルだ。

「.......分かったよ。もう疲れたし寝るよ」

 窓から外を見ると、もうすでに日は暮れていて星が見えた。月は見えなかった。

「夕食は食わないのか?」

「そうだね、夕食を食べて風呂に入って寝るよ」

「じゃあ、お母さんを呼んできてくれ、これから夕食を作るからお母さんに手伝ってもらわないと」

 母の部屋に行った。母は本を読んでいた。

 母は僕の姿を認めると、何も言っていないのにいきなり本について語りだした。

「この本すごく面白いわよ。時間についての本なんだけどね、またこの作者の頭がおかしいのよ。.......まあ私にとっては、だけど。多分他の人が読んだら共感する人もいるだろうし、なんだこれはと罵倒するかもしれないわね。でもそこがここの『お母さん、お父さんが料理作るから早く行ってあげて』」

 まだまだ長く続きそうだったので少し強引に話を止めた。

「嘘でしょ。あの人に料理を作らせたら食材が無駄になってしまうわ」

 意外と効果的だったみたい。お母さんは急いで台所へ走って行った。

 元気そうでなによりです。

 暇だった僕は、母の言っていた本.......ではなく中学生の時から持っていた、感動する本を読んだ。これで何回泣いたっけ。

 ただ感動する時間も与えてはもらえず、すぐに呼ばれた。

 今日はお蕎麦だった。なかなか美味しかった。

父の付けだれだけなぜか異臭がしたけど。

 お風呂もゆっくり入って、体を温めたまま懐に入った。

 思えば、明日家に行くと言ったけど、いつ行けばいいのだろう。

 まあ明日にでもなればどうにでもなるかな。さっきまで寝ていたというのに瞼がすごい重い。

 睡魔に抗わないで深い眠りについた。

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