くそったれ

「それじゃ、また明日な」


 イミナの指輪選びが終わると、三人で食事に行く運びとなった。といってもイミナは試合後のレイナと待ち合わせる予定があったので、それまでの時間潰しに付き合った形だ。ソウジとカズサは食事を摂ったが、イミナは幸せそうにココアを飲むだけだった。

 その食事が済んだタイミングで、ソウジは二人を残して席を立った。

 食事の途中、雇い主からメッセージが届いたからだ。


「……そんなに急かさなくても分かってますよ」


 一人、路地裏を歩くソウジは呟くようにそう言う。口元に近づけた左腕には通信用のデバイス。


「いやだなぁ、それ、俺にやれっていうんですか? はは、それ、俺本当に殺されるんじゃないですかね。……はいはい、それじゃまた」


 乾いた笑い声が喉を鳴らす。

 愉快な話であるわけもなく、通話はさっさと切り上げる。


「恨まれるのかね、やっぱり」


 石造りの路地を、コツコツとブーツの踵が叩く。


「まったく……くそったれ」


 そうしてソウジは、誰もいない陰に姿を消した。

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