第1話 好機
新学期になってから、今日で1ヶ月がたち、もう5月になる。
俺はいつも通りの時間に登校し、自分のクラスである、2-Bの教室の中へ入り自分の席に座った。
「蓮〜!おはよー!」
「おう!おはよう!」
今、俺に声をかけてきたのは、俺と同じ2年B組の
名前にある通り、彼には熊の血が混ざっている。普段は温厚で優しいヤツだが、獣化するとかなり凶暴になる……らしい。
一樹は俺の後ろの席で仲の良い友達の一人だ。
野球部のエース候補であり、先輩や後輩からも慕われている。
そのせいもあるのか、顔が整っているからなのか、クラスの女子からも人気がある。羨ましい限りだ。
「蓮!一樹!おはよー!」
「おはよう!」「おーっす!」
今、声をかけてきたのは
彼女も名前の通り、猫の血が混ざっている。
もともとの見た目が猫に近いから、獣化してもさほど変わらない。
だが、ソフトボール部に所属しているせいか、いつも明るく、人懐っこいのでほんとに猫の血が混ざっているのかと疑わしくなるほどだ。
ちなみに結とは幼稚園のときから小中高と同じで、俺の幼なじみでもある。腐れ縁みたいなものだ。
身長は155cmと小さいので、付き合いも長いせいか、もう妹のようだ。
俺たちは、一樹とも小学校から一緒なので、よく3人で連んでいる。
「一樹!昨日のララライブ見たか!?」
「もちろん、見たよー!昨日の海ちゃんは最高だったわ〜!」
「だよな!だよな!」
今俺たちが話しているララライブとは、深夜にやっているアニメで、女子高校生がアイドルになって廃校の危機にある高校を有名にして救おう!というものである。
俺と一樹は最近、このアニメにはまっており、2人とも推しメンは海ちゃんだ。
オタクである俺たちは、いつもアニメの話ばかりしている。
俺がモテない理由は、教室でこんな話ばかりしているからだと思っているが、いつも一緒に話している一樹はモテるので違うようだ。
リア充なんて禿げてしまえ。
「もー!またアニメの話ばかりしてー!もーすぐ先生来るよー?」
結が少々呆れながら俺たちに話しかけてきた。
丁度、担任の先生が教室に入ってきたので、結は自分の席に戻り、俺と一樹も話を中断した。
「起立、気をつけ。礼」
学級委員である、
あぁ…今日もめちゃくちゃ美しい…。
俺は2年生になって、狐爪さんと同じクラスになったときから、狐爪さんに思いを寄せている。
誰にでも優しくて、友達思いでなにもかも完璧な狐爪さんは俺の憧れだ。海ちゃんに似ているし。
ちなみに、狐爪さんは狐の血が混ざっていて、変化すると耳が生え、美しい毛並みのしっぽが現れるらしい。
見たことはないが……見てみてえ。
そんな狐爪さんは、優しい上に、容姿端麗で、成績トップで男女ともに信頼が厚く、うちのクラスだけでなく、他クラスからもめちゃくちゃモテる。
そりゃあ当たり前だ。なんてったってこんなに美しいのだから。
だから俺は、狐爪さんに思いを寄せていると言っても、ほぼ半分は諦めかけている。
俺みたいなオタクが高みを目指しても無理があるのだ。
だから、俺は眺めているだけでいい。変態とか言うなよ!?
担任がクラスの出欠をとり、今日の予定などを伝達した後、
「えー、今日の1限目はHRなので、このまま学級委員を中心に来月の体育祭のことについていろいろ決めてもらいます。それでは狐爪さんお願いします」
「はい」
先生の合図で、狐爪さんは自分の席を立ち、教壇の前に立った。
その立ち姿は凛としていてそれだけでも俺は釘付けになってしまう。
「それでは、体育祭の出場競技について話し合いたいと思います」
学級委員である狐爪さんを司会に、今年の体育祭の種目が説明された。
狐爪さんの説明によると、今年は100m走、綱引き、パン食い競争、障害物リレーなど、一般的な運動会で行われる種目を行うそうだ。
今年は新しく、障害物リレーに人探しが加わったらしい。
人探しとは、くじで引いた紙におだいが書かれていて、それに当てはまる人を見つけるというものだ。
なんか、青春みたいだな…
「それでは、まず100m走に出場する選手を決めたいと思います。先月行われた、体力テストで足の速かった人から選出しようと思いますが、よろしいですか?」
パチパチパチ……クラスの大半から拍手が起こった。
「それでは、そうしたいと思います。えっと……では、狼坂くんお願いします」
「え!?」
え、俺!?このクラス、俺より足早いヤツいねぇのかよ!
まぁ、狼だから多少他の人よりは速いんだろうけど…ってそれより、狐爪さんに初めて名前呼ばれたああああ!超絶嬉しい!!!
「まじか!頑張れよ!蓮!」
後ろから、一樹が俺にエールを送ってきた。
こいつ…野球部のくせに…
でも、いくら狼だからって足の速いヤツは他にもたくさんいるだろうし…自信ねえなぁ。
ちなみに、この学校は体育祭の時のみ、獣化することが許されている。
生徒は皆、獣化した方が自分の力が最大限発揮されるので、ほとんどの生徒が体育祭の時は獣化する。
「狼坂くん?大丈夫ですか?」
「え!あ!はい!やります!」
うわわわ。思わず返事しちゃったけど大丈夫かな…
その後、他の種目も立候補などでどんどん決まっていった。
だが、障害物リレーの人探しだけは誰も立候補しなかったので、狐爪さんが自分からやると言って狐爪さんに決まった。
やはり、学級委員だからしっかりしているなぁと俺は改めて感心した。
全ての種目が決まり終わったので、これでHRは終わった。
俺が、トイレに行こうと教室を出た時、
「狼坂くん!100m走、大丈夫だった?ごめんね、押し付ける感じになっちゃって…」
と、狐爪さんが声をかけてきた。
うおおおおお!なんて天使なんだ!この人は!
こんな俺のことを気遣ってくれるなんて!
嬉しすぎる!
「いやいや!全然大丈夫だよ!むしろ、俺なんかでよかったのかなー?って思ってたよ!」
実を言うと、全然大丈夫じゃない!主に俺の心臓が!
狐爪さんと話すなんて初めてだし、ましてや、あっちから声をかけてきてくれるとは!嬉しすぎて死にそうだ…
「そんなことないよ!引き受けてくれてありがとう」
そう言って、彼女は教室に戻っていった。
ハーフアップにした髪をなびかせて去っていった彼女はもう、天使というよりむしろ、女神に見えた。
こんなマンガみたいな設定ってありかよ!? @a-r-a-t-a
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