第14話 ある正義


 この世には二つの考え方がある。神秘的なことにある正義、大義名分という正義。ややこしい問題である。特に前者は魅力的だ、完全な美しき定理や完全なといわれるような。

芸術や知識。しかしこの美しきと呼ばれるものはすぐにメッキがはがれる。例えば時をへて崩れ去る理想や信念、神、熱狂、新鮮さ、

などである。しかし遅れて後者の大義名分というものもあやしくなる。

 これは人類文化共通の苦労点である。人は神秘的美しさに名前をつける、しかしその時

からじわじわとメッキがはがれだす。完璧なものに文字という不完全なものをつけることによるジレンマ、悩ましい問題である。

 しかし名前や文字がつけられない、絶対的価値というのもあるのが世の中だ。どの言葉をもっても正確に言い表せないというものに、

人が惹かれるのももっともというものであろう。そこに謎めいた美しさがあるのだからしかたない。これを日本では絶句という。

 言葉で表せるものそれがすべてだとビドゲンシュタインはいった。しかし言葉はすべて疑えるとデカルトは説く、両方共、真実ぽい響きがあり、結局すべてのものは疑えるとの境地に行きつく、しかし言葉で表せない、写真でもわからない、しかしなぜだか美しい。

 そんなことないと言ったらうそであろう。

目に見えない価値、文字ではわからない価値。

 しかしわかる人にはわかるそんなものがある。

 でも、これは大義名分としてどうしてもみんなに分かってもらわなければいけない正義、

また美しさとなると問題だ、政治家や法律家や思想家が悩むその問題、はっきり言って深刻だ、そういう問題の解決方法としてとられるのが邪道ともいうべき熱狂の力や無理やりそう見せたりすることだ。

 この怒りににた熱狂のはて大義名分などど。うでもいいという感覚に襲われてしまうのも、

また深刻な問題だ。

 熱狂この厄介な問題、第二次世界の発端となった、狂気に近い感情だからこそ人類は小難しく考えるのを否としてしまう。

 しかし、この恐怖に打ち勝とうと世界統合政府は哲学者や法律家などを集めて、それこそ冷静になれ! と叱咤する。それも政治家の重要な仕事だ。おそらくは今度そのような事態が大国で起きればただではすまないことを政治家たちはもちろん民衆も知っている。だからこそ人類は少し保守的になってしまった。

 そこで宇宙開発という夢を追う、その夢以外ちょっと退屈である。

 しかし、この宇宙では関係ない。日々宇宙船の改良の研究が行われ、またクリーンエネルギーの研究も盛んである。ついに人類は1cm四方の太陽電池パネルで一軒の家の電気を賄えるようになった。また、僕らが持っているショックガンも最新式だ電子の力で人の行動力をなくさせることができる。射程は100m拳銃と張り合えるようになった。しかも後の外傷はまったくない。そして催眠弾だ。

 10m四方の人間をすべて眠らせることができる。しかも一瞬で、などなど、宇宙の真空や無重力を利用した発明はいっぱいある。

 2021年東京オリンピックの熱狂冷めやらぬ中、ロシア大統領の発案である法案が可決した。武器貸与禁止法である、これによって軍事支援の額は制限され、人類はロシア、中国、アメリカ、による地球統合軍が産声をあげた。初めはミリタリーバランスを見ながらの小さい組織だったのだが、アメリカの失敗を研究して武器の使い方をした。組織の警察活動に世界は両手をあげて喝采し、世界の平和への希求は高まった。これから新時代の幕が上がったと書く政治家がいるくらいだ。

 初めは小さな成果だったが年をへるにつれ

平和な地球のスローガンのもとその活動も効果的なものとなり、地球から徐々に武装組織は駆逐され、平和な地球も実感あるものとなった。その活動は地味にその地域の集会場の警護や物資供給ルートの警備から重火器や軍事用爆薬の没収まで多岐にわたった。その地味な警察活動の末、山賊の様な武装組織にたいする、経済活動を守るのが成功し、人類の

治安はあがり経済活動は活発化した。その後人類は宇宙開発という夢を抱くようになった。

 そして今中国では思想の自由が認められ、

結社の自由も認められた。普通選挙制まで後一歩である。

 しかし紆余曲折があった、現実多数決では

一番大きな民族が決定権を持つと言う難題があった、そこで地方自治のあり方を研究し、

つまり少数派をどう擁護するか? アメリカのベトナムやソマリア、イラクやアフガニスタンの失敗を参考にもう一段上の国家体制、アメリカの理想、多種多様な民族や宗教の上に立つ国家体制というものを確立した。それをもって新民主主義体制と呼ばれることとなった。

これを人類の公民教育と呼ぶ。これを教育することが地球中央大学の中心課程であり、ここからいろいろな政治家が巣立っていった。

人間の在り方生き方という根本的問題にまだ人類はこれといった答えを出せないでいる。

 そして前の話でいったように魂があるのか

ないのかそれについても意見が割れている、

快楽主義と禁欲主義との対立である。

 一方は死んだら何もないという考えと天国があり死後報われるという考えである、今も二つの考えは論点である。はっきり言って魂とはなにかと言うところまで話はいく、そして死後の世界について研究のテーマはいく、

さらに問うすべては欲望や快楽のみを追いかける人に問題がある。もう一方は清廉という

お天と様は見ているというボランティア活動や、募金をする人たちの考えである。今でこそこの考えは古臭いという人が優勢だが、影で日の当たらない人達の中に生じる、一種の

生きがいである、今度来世では……。と言う思いである、しかし格差ある限り消えないだろう。結論問題はこの一点にある。

 だがこの根本的問題は筆者が生きている、

この世のメカニズム、英雄のような人に自分のなけなしのお金を払うという、愛憎が混じりあったシステムある限り無理であろう。      

 まあ普通の人はその両方を求めたがるので心配はない、現世利益と天国その二つとも欲しいなと思う人々が普通だ。

 自分とはどこから来て、何をなし、そして何処へ行くのか? それも謎だ。宇宙にいる人もこのことについて悩む。

 宇宙でも欲望派と精錬派の論争はつきない。

欲望派の筆頭が自由競争主義であり、欲望の力を借りて働く、お金の奴隷のように。

 一方精錬派の方は宇宙経済システム使った。

やや計画経済よりな理想主義システムである。

 この二派が地球で大議論を巻き起こしている。大問題である。

 欲望派の急先鋒は精錬派の堕落のしやすさをやり玉にあげる、アメとムチをもってしか、または多額のお金をもってしか精錬などなりはしないと説く、しかし宇宙の方では人間は所詮、獣なのか! 高き理想は何故通用しない?神が見ているという考えは捨てたのかとやり返す。どうどうめぐりである。

 これが現在の一番のトピックスだ。

「君たちどう思う……」         ロック保安官は尋ねる。

「まだどちらの考えが正しいか答えはでてい

ないのでしょう」「興味ある論争ですね」

 イーグルは答えた。

「どっちが勝つにせよ」「我々は働かなくっ

ちゃ」「いつまでも親の世話になっていてて

はね」

「そうゆうことだ」

 ロック保安官は笑って肩を叩いた。


              十四話 完

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