第13話 ある悩み
人はある時からこの悩みに取りつかれる。
人はなぜ生きる?また人はなぜ死んではいけない? 人が自分を殺せると知った瞬間か
ら取りつかれるこの悩み、ある宗教家は自殺などしては来世でひどい目にあうと語ったそうだ。
しかしこの世界では非常にポピュラーな問題だ。平安に慣れきったこの世界でひそひそ
と語られる死後の世界。あるのかないのか?
幽霊、魂、天国、神々の世界、いまだかつて一部の人を除いては見ることの叶わぬ世界。
スピリチュアルなこの世界……。をめぐる議論はひそひそとおこなわれる。
この議題を人にぶつけてみると、今死んだら子供はどうするの? とか、まだ死にたくないわ、とか。死ぬのって痛いでしょ、とか。
案外、普通の答えがかえってくる、しかし
その心のどこかに死んで楽になりたいという。
どこか死への興味めいたものもあるのも、
人というものだろう。
そして、生きとし生けるものは必ず死ぬという絶対の真理を頭の片隅に刻み込んで……。
そして、この言葉が頭をよぎる時、人はこの絶対の真理からのがれようとなんとかごまかそうとする。しかし時にそのことに失敗した時、人は大いにおちこむそしてこの悩みが
頭をよぎる、人はなぜ生きる?……。
そしてある地球の自治区ではある問いが大きな話題となっている。市場主義ではかられる個性の差別化、または価値化、人は個人の
尊厳の中にある、平等に対する罪。個性を低くはかられるその心の傷の代償……。時に人はこの強力な定理のまえに死という道を選ぶ。ある程度はしかたないとして、五桁や六桁の収入の差をつけるこの世の不条理。まるでその人は最下層を生きる人達の一万倍や十万倍の価値があるかのごとく……。人はそれほどの価値の差をつけられると人は努力する気力がなくなる、まるで貴族と奴隷のごとく、この問題はある意味お金という兌換物があらわれてから、人々を悩ます問題である。
そしてそのことは人々がなぜ生きるということに暗い影を落としている、みんな頑張って生きてるじゃないかという、以前は強力だった力、そこに……。
「へー、人の一般の一万人分の給料をもらっているって、いばっている人の話が出てるぜ」
「いかにしてお金を稼ぐかいろいろとお説教してるぜ」
「いいねえこうゆう自治区の人は」
「僕は興味ないね」
イーグルはそう答えた。
「このご時世にお金の話か」
「ある意味正しいと言っちゃ正しい話なんだけどねぇ」
「地球の人類の皆が、ある意味生物の代表者としての我々が。金の話に目を輝かしているようじゃ。情けない話だな」
「そんなことに頑張って頭を使っているようじゃねー」
イーグルはため息をついた。
「この世じぁ。格差社会の是正や人口問題とかに政治家や経済学者が知恵をしぼっているというのに・・・」
「お釈迦様が、欲望のために使われる人にならないようにと説いていったい何年過ぎたと思ってるんだ」
とまたイーグルはため息をついた。
この世の中も社会の網の目をかいくぐってお金を稼ごうとする人が絶えたわけではない。
中には詐欺まがいのことをしている人もいないわけじゃない。それが現実だ、政治家や経済学者とのいたちごっこでこの世界はかろうじてたもたれている。中には悠久に戦わなければならないこともいくつかある。
「いったい、いつになったらお金という問題に決着がつくのやら」
イングもそうぼやいた。
このお金というもののため生きるという人生の答えにしている、人も少なくない……。
金を稼ぐということで一生を費やす人も同様だ。
だからこそ正義や人の幸せや徳行に生きる人を養成するため二年間の大人として社会を
広く見るための期間として休みがあるのだ。
仕事にあるいい面と悪い面そのことからいったん身を脱して社会を見る。そのための休みなのだ。そこでどう生きるのか? と自分に問うたり、本を手当たり次第読んだり、広い世界を旅したりして自分はどう生きたいかの答えを探したりする。そうして休みは暮れて行ったりする。
そして最終的にどう生きるという名の問題に答えをだす。そして模索する。人生は長いのだ。
「大分世間のことがわかってきたね」
イングはそうつぶやいた。
カールが、
「まだまだひょっこだがなー」
と言って笑った。
こうゆう世の中だからこそ、前話で書いた通り若者に対する目は温かい、この悩みも幾多の人が本にしたり、映画を作ったり、詩を書いたりするいわば、社会の問題の難題の一つだったりする。なかなか歯ごたえがある、
難題の一つだ。
ほかに魂とはとかも難題の一つだ。しかしいちいち書いていては日が暮れるのでこの問題に戻る。人はなぜ生きる? 本当にこの問いに対する答えは百人百様だったりする。死にたくないから、この世を救うまでバラェティにとんでいる。
時に人は犯罪スレスレの生き方を選ぶ人もいる、しかし拝金主義者ばかりの世界よりはずっとましだろう、すべてのものさしがお金という人達よりは……。
前話でも書いたがお金は確かに力がある、
しかし人の個性や尊厳までお金という社会に閉口する人も多い。個人の人柄や努力のすべてをお金に換算するような世の中を……。
奴隷のように人のいっさいがっさいを金に換算していいものだろうか?まるで人の可能性まで価値化してしまうような世の中が……。
そして、ある時代ではまあそう遠くない過去なのだが、まるで自らを自らでスキルや学歴や情熱までもお金という天秤にかけ他人と競う、そして面接官達はまるで値踏みでもするように、その人の価値をなすかきゅうりを見るような眼で値踏みする。まるで金にならない個性には用はないといったふうに。そこにはやさしさや正義感や協調性や人格などお金にならないことなど一切意味のないことのように……。
しかしこの世界ではこの人は何かを秘めているんじゃないかというところから面接官の
目は光る、まあもっともそうゆうところを見抜けない面接官は面接官であって面接官ではないのだが、そしてこのコロニーでは特に何が得意かではなく、何が好きかを重視するさすがに遊びが好きというのは無理だが、働くことをすべてだと見ずに、どうゆう風に生きたいかの一部としかみていなかったりする。
結局人類も生物のひとつということが間違いのない以上ただ金という兌換物を拝むような人ばかりでは困るのだ。種の多様性という意味で、ある意味で天然といった人や奉仕に熱心な人や困難に立ち向かってくれる人や癒し系といった人が必要なのが人類の維持には重要だったりする。一種総合的には金を稼ぐことには無関係に思える能力でさえ、時に重要だ。社会がパーツを取り換えるようには人という生物はできていない。これも一種の真理だったりする。
「結局生きる意味ってなんだろう?」
「さぁ難しすぎるな。」
カールとイングはこそこそと話し合っている。
「しかしこれだけは言える君は十分天然だ」
カールは最後にイングに言い放った。
第十三話完
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