第2話
ある朝、いつものように下校の準備をし帰ろうと廊下へ向かうとまた腹へ突進されるかと思い、反射的に構えると、今日はやけに大人しくなにやら、この後用事があってこれから向かうといいすぐに終わるらしいので教室で待ってて欲しいと頼まれ帰ると言うと選択肢も合ったが妙に気になり、言われるがまま待っていることにした。
「おぉ、なんですかそれは告白ですかな~」
「いや、ぜってぇねぇから、ふざけるな」
ニヤニヤしながら、わざとそう言うと真面目答えられたあげく半目で睨まれた。
こんな時ばかり冗談が通用しなくなり、少々凹んだ。
どうやら先生の呼び出しらしい。
その姿を見送ってから、今日もすぐに教室は空っぽになり自分一人となった、携帯の端末や窓を眺めながら綾斗の事を待っているとふと窓を見ると視界に人影が二人ほど見え近くの木の側へ向かう、まさか今時木の下などで告白なんて少女漫画じゃあるまいし、そんなやり方をするやつがいるなんて女というものは、つくづく謎が多くやはり理解できない。
そのまま興味本意で眺めていると、その姿は間違いなく綾斗だったからだ、なぜ綾斗が外にいる先生の用事は嘘だったのか、いやでもあのとき嘘を付いているような気はしなかった、むしろあいつはそこまで器用ではないし嘘だってバレバレのしか付けないのだからと一人で勝手に焦り始めその様子を見ていると、女の顔は全く知らないが何やら話込んでいるようだった。
遠くてあまりよくはわからないが少したってから綾斗が先に戻っていき時間を置いて女も戻った、まさか嫌な予感が脳裏にちらつく。
遅かれ早かれそうなることなんてわかっていたはずだなのに、なんでこんなに苦しいんだ。
苦しい、苦しい苦しい……
理屈でわかったふりをしても認めたくない、でもアレは、そう言うことだろう。
机に放り出した鞄を手に取り逃げるように教室から出る、誰かの声なんて気ににも止めずに走り去り階段を下りる途中いきなり腕を捕まれ、驚き思わずその手を思いっきり振りほどくとそこには、唖然とした顔の綾斗がいた、その顔を見て我に返える。
「……何かあったのかそんな怖い顔して」
我ながらなんと女々しい事をしてしまったんだ、辛いからって本当に逃げたしてしまうなんて……
なんとかその場を笑ってやり過ごし不審に思われてしまった。
帰り道今日あったあの女についての話はなく先生の話が長かったと言って明らかに隠している事がわかる。
なぜ、教えてくれないんだ
どうしてその事を隠す。
わからない……
俺にとってその間の時間だけが妙に長く感じ苦しい1日だった。
その次の日から、変に気になり何をしてもあいつの事を深く考え何も手につかなかった。
そのままあっという間に、学校は夏休みを迎え綾斗とも会うことは少なくなった。
ベッドに寝そべり携帯の画面にメールが入っていた、その内容はあの女についての話であった。
携帯を枕元へ投げ捨て寝返りでうつ伏せになり下唇を強く噛み締める。
あの時帰ってしまえばよかったと少し前の自分を恨み後悔した。
今まで相談できなかったのは、返事に悩みやはり、一人で考えていてもどうしようもなくやっとの事で俺に相談したと……って今更俺に相談するなよ、と心の中で吐き捨てた。
女は理解できない節が多いが強いな、
俺より断然勇気がある。
まぁ、その前に性別などいろいろ違うものが多いがな。
投げ捨てた携帯に手を伸ばし、メールの内容に目を通す、でも、もし綾斗が幸せになるなら、それでもいいかなど思い始めた。
どんなに諦めたくなくても、いつかはそうなるって前から自分で言い聞かせていたのだし、もしかしたらこれはちょうどよかったのかもしれない。
引きずって大切な人の幸せを願えずにうじうじなんて気色が悪い、あんな無様な姿を見せてしまったし見事に一人で勝手に失恋をしたのだから、最後ぐらいすっきりした形で自分の中で終わらせたい、俺は一度深く息を吸って思いきってメールを打ち返した。
何度かやり取りをしてから最後に綾斗から返ってきた返事は馬鹿みたいにこっぱずかしい文で、今からさっそくその女に返事を返すらしい、苦笑し頬に涙が伝うのがわかった。
辛いものは、辛いからな、自分がどこまで女々しいかよく思いしらされた。
でも、自分の選択は間違っていないと思う。
苦しいという感情から解放され、安心したような不思議な感じがした。
ある意味長年の片想いはここで終わり、少しばかりこの辛さが残っても、時間がたてばいつかこの恋も思い出に変わる、そう考えると本当に心が楽になった。
俺は、一言返し携帯を置き早めに今日は寝た。
なんだがすごく疲れてしまったからだ。
だらだらと特になにもする事がなく適当に過ごしていると気づいたら七月もそろそろ終わりを告げ八月を迎える頃なってきた。
今日は花火大会ともあってか無事めでたく付き合うことになった綾斗とその彼女と会うことになった。
最初は勿論断った、さすがに彼女もいるのに会うなんて何を考えているのやらと呆れたが本人の意思ではなく、その彼女が是非会いたいと言い出したからだそうだ。
会う理由なんて無いのに面倒だと正直思ったが、申し訳ないような気がしてしまい、少しならと挨拶だけしてすぐに帰ると返事を返し夜を待った。
……
夜、一人で待ち合わせの場所まで向かうとそこにはもうすでに二人が待っていた。
俺は、少し駆け足で手を振って叫ぶとそれに気づいてくれた綾斗が手を振り返す、そのあと隣にいる鮮やかな水色に黄色い花をあしらった柄の浴衣を着た彼女らしき女から、深々と会釈をされ無意識に俺も会釈を返した。
緊張しているのか震え気味の声で俺に自己紹介をし始め話を聞いていると綾斗の話でどうしても会ってみたかったということを聞かされ緊張しやすいただの大人しめな素直で良い子であることがよくわかった。
うるさい綾斗にはもってこいのタイプだ。
ちょっとばかり偉そうにそんな解釈をしていると、二人の幸せにそうな姿を見ているとなんだがまた辛くなりそうなので邪魔にならないようさっさと退散しようとした。
「じゃ、挨拶もすんだし
お邪魔虫はそろそろ消えるとしましょ~」
綾斗には、もう少しいろなど言われたが二人のいる間で長居するつもりなんてないので一人出くわさないようふらふらと歩き回り帰り道夜空に浮かぶ花火を見ながら家へと向かっていく。人混みのせいで帰りずらく気づいたら、真っ暗な道に出ていた、人気があまりなく先程よりは楽だが家からは、かなり離れているしかたないので遠回りして帰ることした。
しばらく歩いた先に見たことのある色が目にとまった、真新しいそうなあの鮮やかな水色の浴衣さっきの彼女さんであろうか。
一人で帰っているのか、いやそれにしては俺と別れてから、そんなにたっていないのだからいくらなんでも早すぎる、それにあいつがこんな夜道に自分の彼女をほっとくなんてありえない、きっとはぐれたのだと思い俺は、ほっとけば良いものを親譲り以上のお人好しでその女を追いかけた。
あの時、ほっとけばよかった……
追いかけようとなんてしなけばきっと…
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