第14話 ドラゴンヴァンパイアと農業と魔力の制御

第14話 ドラゴンヴァンパイアと農業と魔力の制御




 俺が村の入り口に着いた時には兎族たちが村を出発する準備を終えて待っていた。

 村を見渡して何も問題が無さそうなのを確認してから出発の号令をかける。


「皆、村を出発して新たな土地へ向かう準備は出来たようだな。 ……では出発する。 目的地には木材が積んであるのですぐ分かるぞ」


 そうして、今の村をそのままに俺と兎族たち全員は村を出発する。

 捨てた村についてだが、最初は俺の魔法で一気に壊してしまおうかとも思ったが、もし何かあった時の為に残しておく事にした。


 新しい村の予定地までの道中の大平原で何度か弱いモンスターが襲ってくるが俺がすべて殺していく。

 弱いモンスターが襲ってくる以外特に問題もなく兎族たちの移動は順調に進んでいき……やがて兎族たちは全員で木材が山積みになっている村の予定地に辿り着いた。

 ここまで来るのに2日ほど掛かったが、まぁ早い方だと思う。

 村の予定地に着いた俺はすぐに木材で家を建てられる兎族たちに家を建てるよう指示を出し、残っている兎族を連れて農業を教えることにする。

 この日のために幾つか作っておいた木のクワっぽいのと集めた種を持って地を耕そうとする場所に移動した。


「さて、お前たちには食料を種から育てる農業というのを今から教える。 よく見ておくのだぞ」


 俺は早速木のクワで地面を耕そうとするが、なかなか難しい。

 何度かやっていると段々と上手く出来るようになってくる。

 もう見せるのはいいだろうと思った俺は見ていた兎族たちに木のクワを渡す。


「ほら、俺と同じようにそれで地面を耕すのだ。 これが先ず最初にすること」


 すると、兎族たちは見様見真似で頑張って地面を耕そうとする。

 しばらくして兎族全員が地面を耕せたのを確認すると俺は種まきにはいる。


「よし、次は種を蒔く作業だ。 同じ種類の種を均等に土に蒔いていくぞ。 種類が違う種は別の場所に種は蒔け」


 耕した地面の上で俺は均等に種を蒔いていく。

 兎族たちも俺の姿を見て同じように種を蒔いていく。

 すべての種を蒔き終わったら種を蒔いていた兎族たちを一度集める。


「あとは種を蒔いた地面に水をかけて今日は終わりだ。 水は毎日一回かけること。 あとかけ過ぎもダメだ。 あ、水は森の中の川から汲んでこい。 しばらくすると地面から種が成長して何か出てくる。 それが更に成長すると食料が収穫できるようになる。 そしたらまた地面を耕して種を蒔いて……と繰り返せばいい。 正直なところ俺はこの農業にあまり詳しくはない。 だからあとはお前たちが自分で試行錯誤しながらやっていってくれ」


 正直、今回やったことなんて、いくつも間違いがあっただろう。 しかし、俺は農業に詳しい訳ではないので出来ることなんてこれくらいだ。 だからあとは兎族たちが自分で試行錯誤してやっていってもらうしかない。

 どれくらいの時間がかかるか分からないが、兎族たちの頑張りなら俺は出来ると思っている。


 俺の曖昧な知識の農業を終えたあと、俺は兎族たちが家を建てている所にやってきた。

 そこにはリーウが居たので丁度いいと思って声をかける。


「おい、リーウ」

「あ、ティターン様。 農業の方はもういいんですか?」

「あぁ。 あとはあいつらが自分で試行錯誤して頑張っていくだろう」

「そうですか。 ……それでここには何をしに来られたんですか?」

「あぁ。 今、家を建てている者たちに今までよりも大きな建物を1つ建てるように言っておいてくれ」

「今までよりも大きな建物ですか? それってティターン様の家をってことですか?」

「いや、そうではない。 その建物は……学校にしようと思っている」

「学校……ですか。 それって誰かが勉強を教えてもらったり、勉強を教えたりする場所のことですよね?」

「そうだ。 よく覚えているな」

「ありがとうございます。 ……でもそれって今まで僕とムーアが子供たちに日本語を教えていたのと同じなのでは?」

「まぁあれも学校と言えるだろうが、今回は規模を大きくする」

「規模を大きくする?」

「そうだ。 今度のは子供たちを集めて日本語も教えるが、それ以外にも様々なことを教えていく」

「日本語以外にも様々なことですか?」

「例えばお前に教えた日本語以外の知識や……ステータスそれに魔法のことも」

「ま、魔法ですか!? それってティターンが使われるあの御力の事ですよね!?」


 リーウは目を見開きとても驚いた顔をして俺を見つめる。

 魔法を教えるというのは俺が昔、赤い角耳族の少女と出会ってから考えていたことだった。


「そうだ」

「あの魔法というのは僕たち兎族でも扱えるのですか?」

「あぁ。 魔力が有る限り誰でも使える。 もちろん魔法にも人それぞれ適性があって使える魔法もあれば使えない魔法もあるだろうがな。 この魔法が使えるようになれば一気にお前たち兎族の技術は進歩するだろう」

「それは……とても凄いことですね。 是非僕もティターン様に教えてもらって使えるようになりたいですね」

「何を言っている。 お前とムーアにも、もちろん魔法を使えるようになってもらって子供たちに教えてもらうんだぞ」

「ほ、本当ですか!?」


 その俺が言った言葉にリーウはとても興奮して聞き返してくる。

 それにしてもリーウはそんなに魔法を使いたかったのか?


「当たり前だ。 お前とムーアには学校で教師として勉強を子供たちに教えてもらう。 それには魔法の知識も必要だろう」

「や、やったああああ!!」


 リーウは両手を天高く上げて喜びを全身で表している。

 いや、どんだけ魔法を知りたかったんだよ!


「……そんなにリーウは魔法を知りたかったのか?」

「もちろんですよ! 前からずっとティターン様が使う御力が気になって気になってしょうがなかったんです!」

「そ、そうか。 そんなに喜ぶのはいいが、さっきも言ったとおり魔法にはそれぞれ適性があるから俺の使っている魔法をお前が使えるかはわからないぞ?」

「それでも構いません! 知れるだけでもいいんです!」

「わかったから落ち着け!」

「……あ、すみません」

「まぁとりあえず魔法の事は置いておいて、学校というのは様々なことを子供たちに教えて、やがて学校を卒業したその子供たちの中から今度は教える側に教師になる者を選んで運営していく場所だ」

「はい。 わかります」

「最初は俺が学長として学校を運営していくが、しばらくして卒業する子供が出たら俺は学校の運営をリーウ、お前に任せる」

「ぼ、僕にですか?」

「そうだ。 それがこの間俺がお前に言っていたことだ。 これが上手くいけば俺はお前に俺の名を呼ばせてやろう。 どうだ? 出来そうか?」


 リーウは俺のその言葉を聞くと大きく深呼吸してから顔を引き締めて。


「はい! やります、やらせてください!」


 と、大きなしっかりした声で頼もしくそう答えた。


「……まぁまだまだ先の事だと思うがな」

「……そうですね」


 翌日、俺は魔法を教える為にリーウとムーアを集めた。

 リーウもムーアもうずうずしていて早く魔法を使ってみたいようだ。


「ムーアもリーウに聞いたと思うが、今日は魔法を教える。 と言ってもいきなり魔法を使えるようになるとは思えないので、そんなに急がないように」

「……はい」


 とりあえず、俺は2人に最初は魔力の制御を教えることにした。

 

「えー先ず魔法を使うには魔力というのを制御出来なくてはいけない。 魔力というのは魔法の源となるエネルギーで人やモンスターも持っているものだ」

「じゃあ僕たちも魔力を持っているんですか?」

「あぁ持っている。 魔力は基本的に誰でも持っていて身体の中で常に作られて溜められている。 しかし、魔力の制御が出来ない者はその魔力を少しずつ外へと放出している。だが逆に有り余る魔力を魔法にせずに外へわざと放出すると威圧となる。 これを魔圧という覚えておくように」

「「はい」」

「しかし、この魔圧という威圧に感じる程の魔力の放出は普通の人やモンスターには魔力が足らず出来ないので絶対にやろうとしないように。 魔圧を出来る程の存在は俺みたいに常に莫大な魔力を作っていて溜めている存在くらいだ。 ちなみに魔力を放出する量が多ければ多いほど威圧も強くなる。 と、まぁ魔圧についてはこれくらいでいいだろう。 先ずお前たち2人には自分の身体の中にある魔力を感じるところから始めてもらう。 自分の身体の中の魔力を感じられるようになれば自然と外の魔力も感じられるようにもなるし、そこから魔力の制御を覚えれば身体から漏れている無駄な魔力を抑え込むことも出来るようになる。 わかったか?」

「「はい」」

「じゃあ先ずは2人共座って目を閉じろ。 そして身体の中に意識を向けて身体の中から発せられる魔力を感じようとしろ。 さっきも言ったが魔力を制御できていない者は勝手に少しだけ魔力が身体から漏れている。 それを感じられれば制御も早く覚えられる筈だ」

「分かりました」

「やってみます!」


 2人は俺に言われたとおりにその場に座って目を閉じて集中し始める。

 まぁ俺の予想ならすぐには魔力を感じることも制御することも出来ない筈。


 そう考えてから30分が経った頃、突然ムーアが目を開いて立ち上がった。


「……ティターン様、私……魔力分かりました!!」

「そうか……ってえぇ!?」

「ほ、本当なの? ムーア」


 予想外なムーアの言葉に俺はつい驚いて声を上げてしまった。

 ムーアの隣で集中していたリーウも集中をやめてムーアを見る。


「ムーア本当に魔力を感じられたのか?」

「はい!」

「ど、どんな感じなの?」

「なんか身体の中からぽわーって感じで何かが出てて、それが外にも出てるんです!」

「……ムーア。 身体から出ているそれを抑えられるか?」


 まさかと思ってムーアに魔力の制御を出来るか聞いてみる。


「う~ん。 ……あ! 出来ました。 うわぁ~なんか自由に身体の中を動かせるようになりましたよ!」

「ティターン様! 本当にムーアは出来てるんですか!?」


 驚いて俺に聞いてくるリーウに俺は自分が見ているものを伝える。


「……確かにムーアの身体から漏れていた魔力が止まって漏れなくなっている。 間違いないムーアは魔力の制御まで出来てしまっている」


 その言葉にリーウは口を開けてムーアをポカーンと見ていた。

 驚いた……まさかムーアにこんな才能が眠っていたなんて……。


「イエーイ!」


 俺とリーウを驚かせたムーア本人は能天気に喜んでリーウに俺が昔教えたピースをしている。

 驚いていたリーウは急に真剣な表情をしてムーアに詰め寄る。


「ど、どうやったの!? 何かコツはあるの!?」

「え!? ……う~ん、だから身体の中からぽわーって何か? じゃなくて魔力が出てるんだって! で、それをぎゅーってすると動かせるようになるの!」

「……いや、それじゃあ分からないって」


 リーウは真剣な表情から何だか情けない表情になって俺を見た。


「いや、俺を見られてもな。 ……魔力とか魔法なんて今のところ感覚だとしか教えられないから……まぁムーアが言ってることはムーアにとっては正しいのだろう。 ……まさかこんなに早くムーアが出来るとは俺も思っていなかったけどな。 ムーアには予想以上に魔力に関して才能があったのだろう……これはもしかしたら魔法にも才能があるかもしれないぞ」

「やったー! イエーイ! ピースピース!」


 それからムーアには魔力の制御をもっと練習してもらいその間、リーウは必死に魔力を感じようと集中していた。

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