血が滾る僕
「セイヤ……」
家へと向かっている途中、僕は呟いた。
人を傷付けたセイヤは、また施設に送られてしまうのかな……。
先に手を出してきたのは同級生のほう。僕を守るためにセイヤは、先輩である僕の同級生を、殴ったのだ。それは間違い無い事。
しかし、ケイジの例がある。いくら相手が先に手を出したからって、怪我を負わせたほうが悪いという判断が下されるのが常。
それにセイヤは、特殊警棒を持参していたのだ。突発的とは、言えないのかも知れない。誰かを傷付けるために、計画的に持っていたと判断されるかもしれない。
……というか、そもそも。
何故セイヤは、特殊警棒なんて、持っていた?
「あ……っ」
そう考えて直ぐに、答えが導きだされた。
きっと、僕がナイフを購入した理由と、同じなんだろうと、思う。
孤独で。怖くて。不安で。誰もが敵のように思えて。身を守るために、持っていたんだと、思う。
そりゃ、そうだ……さんざん好き放題して、悪さをして、人の嫌がる事をして、居なくなってせいせいしている人が多い男を、誰が迎え入れる? 誰が仲良くしたいと思う? 今セイヤは、孤独に決っている。怖いに決まっている。不安に決っている。
僕だって、同じだったじゃないか。赤ちゃんを誘拐する前は散々持て囃されていたのに、問題を起こした途端、サエちゃん以外、誰も構ってくれなくなって、悲しくて、孤独で……次第に自分から周りを白い目で見るようになって、ナイフを購入したんじゃないか。
セイヤはきっと、帰ってきてからずっと、孤独だったに、違いない。
辛かったに、違いない。
僕のように。
「セイヤッ……! ごめんっ……ごめんねっ……」
胸がギュゥとなり、呼吸が浅くなる。鳥肌が立ち、全身に悪寒が走る。
僕が、悪いような、気持ちに、なっている。
立ち止まり、ポケットの中に入れてある携帯を握りしめながら、来た道を振り返る。
「……施設になんて、行かせないから」
僕に出来る事があるなら、しよう。カヨネェのように、全力で。
セイヤは憎むべき相手の筈なのに、そう思った。素直に、そう思った。
家に到着してすぐに普段着へと着替え、カヨネェの職場に向かうため外に出る。
今でも一人で外を歩くと、時々隠れてしまいたい気持ちになってしまう。特に今は、サエちゃんが帰ってきている筈の時間である。
駅までの道と学校までの道が途中まで同じなので、その間にサエちゃんと出くわす危険性があり、なんだかソワソワしている。
しかしそれでも僕は、道の真ん中を、堂々と歩いた。
サエちゃんを見かけたら、声をかけようと、思った。そして今度は正面から、サエちゃんと向き合おうと、思った。
何故、先生は駄目なのか。理論立てて、説得しようと、思った。
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