第17話 『お花見だよ、全員集合!』


「そうだ、お花見をしよーっ!」


 私は部屋の中で高らかに叫んだ。


「なんだよ、藪から棒に。でもこの時期のイベントとしては悪くないな」


「そうですね。近くの公園にとてもきれいな枝垂れ桜も咲いていますし、いいのではないでしょうか」


 マッサージ機で気持ちよくなっている鳴ちゃんと、美顔パック中の栞ちゃんが乗り気になってくれる。

 

 ――って、栞ちゃん、そのパック怖すぎなんだけどっ。

 カシオペア座の狂人だっけ?

 その人が付けてる仮面みたい。


「のわっ、栞、なんだその顔は!? まるでぺルセウス座の変人みたいじゃないかっ」


「オペラ座の怪人ですよ。ところでまほろさん。そのお花見にはゾンビ達も連れていくのですか?」


 オペラ座の怪人だった栞ちゃんが不気味な顔で聞いてくる。

 当然、答えは決まっている。


「もちろんだよっ。だってお花見の目的はみんなの親睦を深めるためなんだからさ。ヌクミズさん達の確執もこれで一発解決だよ! じゃ、早速行こー」


 用意を終えてゾンビさん達を誘いに行くと、一部のゾンビさんがお子様用カートに乗ってレースをしていた。私の話もそっちのけで。

 

 黄金バットを持った鳴ちゃんが切れたのは言うまでもない。


 お願いっ。話だけはちゃんと聞いてね!



 ◇



 公園にある枝垂れ桜は見事に満開だった。

 しかも天気も快晴だよっ。気分も高まるってもんだね!


「酔っぱらってうるせーじじぃもいないし、最高じゃん。よっとっ」


 鳴ちゃんがレジャーシートを敷いて、持ってきていたお菓子をばらまく。

 お菓子は消費期限の長いものが多いから種類がたくさんある。

 でもちょっと量が多いかもっ。


 それはそうと――。


「はい、皆さん、今からお花見をしますので、好きな場所にレジャーシートを敷いて座って下さいね。なるべく固まって座るようにお願いしまーす」


 私が言うと、ゾンビさん達が場所取りを開始する。

 するとすぐに問題が発生した。


「このばしょにぃするかぁ。おひさまぁ、さんさんだぁ」


 ヌクミズさんとその取り巻きゾンビさん達が、日当たりのいい場所にレジャーシートを敷く。


「ここぉにしよぉぜ。ひあたぁり、さいこうぉだぜぇ」


 そのヌクミズさんが置いたレジャーシートの上に、ナカヤマさんと取り巻きゾンビさん達がレジャーシートを敷く。


「ここがぁいいなぁ。とってもあったかぁそうだぁねぇ」


 今度は、そのナカヤマさんが敷いたレジャーシートの上に、イトウさんと取り巻きゾンビさん達がレジャーシートを敷く。


 ヌクミズさん、ナカヤマさん、イトウさんの三人がにらみ合う。


「なぁにすんだよぉ、さいしょぉに、おれぇがとったんだぁぞぉ」


 するとヌクミズさんが、下から取った自分のレジャーシートを一番上に乗っけた。

 同じことをするナカヤマさん。そしてイトウさんもまた。

 放っておけばいつまでも繰り返しそうっ!?


「親睦どころか確執が深まっているみたいですね。さてどうしましょうか?」


 優雅にクッキーを食べてる栞ちゃん。

 横では鳴ちゃんが、ヌクミズさん達の行動に大笑いしていた。


 あまり気にしていないような二人だけど、リーダーである私はこの問題を解決しなきゃいけないっ。


 だから私は、考えていたプランを口にしたのだった。





 ◆第18話 『きぎょー秘密』へ続く。

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