第16話 『ゾンビさん達の確執』
チャンチャンチャン、チャララ~……。
「ふう、やっぱり朝のラジオ体操はシャキッとしていいねっ」
ラジオ体操。
本来それをやる予定はなかった。
だけどこの『イオンモール宵ノ島』は、朝の八時になると放送でラジオ体操が流れるみたいで、だったらやっちゃおーってことになったんだ。
「まほろさんの言った通り、目が覚めていいですね。それにラジオ体操には、むくみや冷えや便秘の解消だけでなく、綺麗な体のライン作りにも効果がありますからね。これからもしっかり続けていきましょう」
「あたいはどれもこれもどうでもいいから、あと一時間寝たいよ。ふわぁ」
鳴ちゃんが大きな欠伸をする。
朝が弱いのが欠点な鳴ちゃんは、ここ一週間いつもこんな感じだ。
ゾンビさん達に示しが付かないよ、鳴ちゃんっ。
「明日からは鳴さんの代わりにヌクミズさんに前に出てきてもらいましょうか」
栞ちゃんが、わりと真面目な顔してそんなことを言う。
でも栞ちゃんがそういうのも、なんかわかるような気がした。
ラジオ体操は一階にある開けたホールで、ゾンビさん達も合わせて皆でやっているのだけど、ヌクミズさんのラジオ体操が素晴らしく出来がいいんだよねー。
多分、生前もこんな感じで元気いっぱいだったんだろうなぁ、と思わせる完璧なラジオ体操なのだ。
「ふうぅんが、ふぅんが、へぇんが、へんが、ほっほっほ、ほえぇっ」
今も、音楽も流れていないのに一人でラジオ体操第二を始めている。
――と、そのとき。
「ぬくみぃずの、ばぁか」
その声は二階から聞こえてきた。
とっさに声のほうへ視線を向ける私。
そこには女性のゾンビ三人に囲まれたナカヤマさんがいた。
「ナカヤマさん、バカなんてひどいっ。なんでそんなこと言うのっ? 今すぐヌクミズさんに謝ってください!」
私はけっこう強い口調で言った。
でもナカヤマさんは、
「ばぁかだから、ばぁかなんだよぉ、ばぁか。ぶえっへっへっへっへっへ」
と、全く反省する素振りも見せず『Jソーン電機』のほうへ去って行った。
「もう、ナカヤマさんのあの態度なんなのさつ。……ヌクミズさん、あんまり気にしないようにね。あとでもう一度ちゃんと言っておくから」
「ナカヤマァのハァゲ。ぶっひゃっひゃっひゃっひゃ」
ヌクミズさんは気にしていないどころか、同じく悪態を吐いていた。
「いや、禿げてんのはお前だろ。……つーかいよいよ深刻化してきたな。リーダー役の三人のいざこざって奴がさ」
鳴ちゃんが言う。
「え、三人って何? ヌクミズさんとナカヤマさんとあと誰なの?」
「イトウさんですよ。イトウさんはポーカーフェイスを張り付けていますが、実はとんでもなくヌクミズさんとナカヤマさんを嫌っているのですよ、ほら」
栞ちゃんがゴミ箱の中から二体の人形を取り出す。
人間を模したようなユルキャラで、いまいちコンセプトが不明な人形。
その二体の人形にはマジックで[ヌクミズ]と[ナカヤマ]と書かれていて、一本づつ五寸釘が刺されていた。
「えぇ!? これをあのイトウさんがやったのっ? あのイトウさんがっ!?」
「イトウのやつ、見かけによらず陰湿だな、おいっ」
どうやらキャプテンとしての試練がやってきたようだ。
でも、どうしよーっ!
◆第17話 『お花見だよ、全員集合!』に続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます