第11話 『カレーにはやっぱり――』


 音楽を聴いて休んでいたらイトウさんがやってきた。


「あのぉ、おわぁりましたあぁ。うめえぇるの」

 

 どうやらお仕事が終わっての報告みたい。

 ホント、しっかりしてるな、イトウさん。


「ほかの五体満足な連中はどうしたんだ? ……まさか全員埋めちゃったっていうオチじゃないよな」


 鳴ちゃんがイトウさんに聞く。

 私も一瞬、過った疑問。でもイトウさんは、


「したぁでまってまあぁす。うめぇますかぁ?」


 と、答えてくれた。


 いやいや、元気なゾンビさんは埋めなくていいですよ、イトウさん。


 ところでイトウさんは次の指示を待ってるみたいだったので、次の指示もしちゃった。

 それは“暴れず騒がず、2階で適当に休憩”。


 穴掘りで疲れただろうからゆっくり休んでいてね。

 


 ◇



 体を動かせばお腹が減る。

 というわけで、昼もとっくに過ぎていることもあってご飯を食べようという話になった。


 そして食料を選びに1階の食品コーナーに行く私達。


「ほとんどありませんね。最初に見たときも思いましたが、ある時期を境に物の流通が途絶えているのかもしれません」


「だな。肉や魚や野菜や果物、その他、日持ちの悪い物は全部棚がすっからかんだしな」


「この分じゃ、アイスもなさそうだね」


「「当たり前です」」


 うー、ごめんなさい。

 と、反省したところで物が陳列された棚が見えてきた。

 えっ、あれってもしかして!


「レトルトコーナーだよっ、鳴ちゃん、栞ちゃんっ! わっ、種類がいっぱいっ!」


 その棚には、カレーを中心とした大量のレトルト商品が並んでいた。

 カレールゥもいっぱいあるっ、やった!


「おいっ、こっちには缶詰がたくさんあるぞ! お、マジかっ、たこ焼きの缶詰まであるっ!」


 となりの棚から聞こえる鳴ちゃんの歓喜。

 どうやらとなりの棚には缶詰があったみたい。


「良かった。レトルト商品と缶詰さえあれば当分の間、なんとかなります。ただ、それだけでは味気ないですね。それに今日は社会実習の記念すべき一日目ですし……」


 栞ちゃんがレトルト商品の前に立って、顎に人差し指を当てる。

 何か考えてるっぽいけど、どうしたんだろ?


「栞ちゃん?」


「まほろさん、確か今は4月でしたよね……?」


「え? うん、そうだけど、それがどうかしたの?」


「新じゃがいもと新たまねぎが旬な季節です」


「そうなんだ」


「はい。なので収穫にいきましょう」


「収穫かぁ。しゅうか……えっ! 収穫っ!?」


「はい、収穫です。だって、晩御飯においしいカレー食べたいですよね?」


 栞ちゃんが女神の微笑みを浮かべる。


 本気なの? 栞ちゃん。……収穫だよ?

 

 でも、おいしいカレーは食べたいかも。





 ◆第12話 『いざ、収穫の地へ出発!』へ続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る