第10話 『インテリアに凝ろうっ』
部屋は決まった。
でも殺風景で、全然私達の趣味じゃない。
なので次にやることは、家具集めから始まるお部屋のインテリアの向上に決まった。
まずは家具集め。
女子三人だけじゃ重くて持てない物もあるから、ゾンビさんの力を借りることにしちゃった。
手伝ってくれたゾンビさんは二人。
多分スコップ選びに時間が掛かっていたのだと思う。
その二人のゾンビさんは、みんなから大分遅れて花壇に向かおうとしていたのだけど、そこを「ちょっと待って」と捕まえたのだった。
一人はマツムラさん(男)。
ちょっと、いやけっこうなメタボなおじさんゾンビ。
多分、ゾンビさんの中で一番動きが鈍いかもしれない。
もう一人はヤベさん(男)。
こちらはマツムラさんとは対照的にガッリガリの青年ゾンビさんで、はっきりいって力仕事には向いていない。
でも男だし、がんばってもらおーっ。
「ブタとモヤシかよ。どうせだったらナカヤマみたいな奴がよかったぜ」
「いいじゃないですか。人数が二人増えただけでも十分ですよ」
そうだよ鳴ちゃん、栞ちゃんの言う通り。
男手が増えたんだから、それだけでOKだよっ。
……ってそのときは思っていたのだけど、終わってみれば二人のゾンビはほとんど役にたたなかったよっ。
マツムラさんは階段の上り下りだけで息が上がっちゃうし、ヤベさんは思った以上に力がなくって、ソファを持ったときにそのソファに潰されてた。
これは二人のゾンビさんが悪いんじゃなくて私のミス。
ゾンビさんにだって適材適所があるのだから、それを考えてものを頼まなくちゃいけないんだよね。
キャプテンなんだから、しっかりしなくちゃ私っ。
◇
「完璧だよっ、鳴ちゃん、栞ちゃんっ。思った以上にすっごい満足度の高い部屋になったよっ」
テーマはビンテージ。家具は極力アンティーク。
それでいて女の子らしいキュートさも加えた私達のお部屋。
うー、最高だよー、こんなお部屋に住んでみたかったんだ、私っ。
「へへ、まさかここまでうまくいくとはな。時間を掛けたかいがあったぜ」
「このインテリア雑誌に載っている家具や小物に似たものが、インテリアコーナーにあったのも幸いでしたね」
栞ちゃんが見ているインテリア雑誌は、インテリアコーナーの中にあった。
もしそれがなかったら、こうまでうまくいかなかっただろうな。
ありがとうっ、角川社の『インテリアの主役はビンテージ。20X2年度版』!
いやっほーっ、と皮のソファーに飛び乗る鳴ちゃん。
栞ちゃんと言えば、吹き出た汗をハンカチで拭くと、
「ちょっとこれでも聞いて一服しましょうか」
と、いつの間にか手に入れていたCDを、運んできたミニコンポにセットした。
「栞ちゃん、それってなんのCD? 巣鴨フォーティーエイト?」
「あるいは、Xジャポンか? どっちだ栞?」
「なんでその二択なのですか? どちらも違いますよ。ただ私達にはぴったりの曲だと思いますよ」
そして再生ボタンを押す栞ちゃん。
洋楽かな? ちょっと陽気な感じで、それでいて古い印象のある曲。
声は入っていなくて、トランペットの演奏だけが聞こえてくる。
全然知らない曲。
それは鳴ちゃんも同じだったみたいで、私と視線を合わせたあと首を傾げた。
栞ちゃんはイスに座ると、音楽に集中したいのか目を瞑る。
そして安らかな微笑みを浮かべると言った。
「Dawn of the Dead(1978)――映画『ゾンビ』の曲ですよ。この一曲目『The GonK』は私が特に好きな曲なんですよ」
ふーん、そうなんだ。
ゾンビの曲にしてはなんか能天気だね。
でもいい曲かもっ。
◆第11話 『カレーにはやっぱり――』に続く。
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