第8話 『ゾンビさん達のやるべきこと』


 鳴ちゃんがワタナベさんを連れてくる。

 ようやくゾンビさん達全員が私達のところに集まった。


「キャプテンにちゅーもぉくっ!」


 鳴ちゃんが声を張り上げる。


「「「「「「う、ういいいいいいぃぃぃぃぃっ」」」」」」


 一部の負傷者を除く、一列に整列したゾンビさん達が元気よく返事をする。

 どうやら鳴ちゃんが怖くて従順になったみたい。

 

 それもそうだよね、あんなの見たあとだもんね。

 ところで私、ゾンビさん達になんて言えばいいんだろ? 

 私と栞ちゃんや鳴ちゃんのするべきことは決まったのだけど……。


 あ、そうだ。


「えと、まずは皆さんも知っておくべきことだと思いますので、言わせてもらいますね。私、夢見まほろ14歳っ、さきほどキャプテンに任命されましたっ! なので、これから皆さんの上に立つ者として精一杯がんばらせていただきます。宜しくお願いしまーすっ!」


「「「「「……?」」」」」


 ゾンビさん達の頭上に、いわゆる“シーン。”という擬音が乗っている。

 もしかしてキャプテンが何か、いまいち分かっていない感じ?

 そこからの説明かー、面倒くさいなーと思ったら、


「まほろの言うことを聞かなかったら――」


 バゴォォォォンッ!!


 鳴ちゃんの黄金バットが近くにあった机を真っ二つにする。

 

「――こうなるってことだ。分かったな?」


「「「「「う、ういいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!!」」」」」


「拍手もだーっ!」


 うおおおぉぉぉぉ、パチパチパチパチパチパチパチ――。


 ゾンビさん達がさっきよりも大きな返事、そして拍手をする。

 キャプテンの意味合いがちょっと、いやけっこう?違うけど、どうやら分かってくれたみたい。

 よし、話を進めよー。


「あの、これからゾンビさん達にしてもらいたいことがありまーす。それはということでーす」


「そうですね、負傷者が多数いることですし、まずはその方達に回復してもらうほうがいいでしょう。そういえば、余計なことをして自ら負傷者になった方もいらっしゃいましたね」


 栞ちゃんの目線が床に座っているヌクミズさんへといく。

 ヌクミズさんは、栞ちゃんの言ったことを理解したのか、「面目ないです」という感じで、頭をポリポリ搔いていた。


「掘る場所は入り口の脇にある大きな花壇でいいと思います。花も枯れていますし問題ないですね。あと掘るスコップですが工具コーナーにあると思いますので、そこから持っていってください」


「「「「「ういいいいいいぃぃぃ」」」」」


 ゾンビさん達がちゃんと返事をしてくれる。

 そのとき、一人のゾンビさんがおずおずと手を上げた。

 

 確か、イトウさん(♂)。

 これといった特徴はないのだけど、それが特徴とも言える真面目そうでおとなしい青年のゾンビさんだ。


「はい、どうぞ、イトウさん。なんでしょう?」

 

「あ、あのぉ、こおぉぐこぉぉなあぁぁ、ど、どこ?」


 いい質問ですっ。確かにそうだよね。





 ◆第9話 『3人の部屋』に続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る