第6話 『キャプテン襲名』


 鳴ちゃんが中から自動ドアの鍵を開ける。

 すると、自動ドアが開いて私達はようやく中に入ることができた。


「鳴ちゃんっ、どうして中にいるの?」


「どうやって中に入ったのですか? やはり裏口でしょうか」


 私と栞ちゃんは当然聞くのだけど、鳴ちゃんは不満顔を浮かべている。

 なんで??


「おい、まずはあたいの渾身のゾンビ顔に触れろよ。こいつらの間抜け面とは一味違う、本物のゾンビ顔だったろ」


「鳴さんは人間で、ゾンビ達はゾンビ。つまり間抜け面でも、ゾンビ達の顔が本物のゾンビ顔だと思いますが」


 冷静に、淡々と、それでいて最もなことを言う栞ちゃん。

 鳴ちゃんは「う……っ」っと言葉に詰まる。


 そして五秒後、


 「え、えーと、中に入った方法だっけか。従業員入り口の鍵が開いていてさ。そこから入ったってわけだ。鍵を拝借してきて正解だったようだな。あ、電気も付けといたぞ」


 と、自分で話を本筋に戻したのだった。

 良かったぁ、鍵の空いている入り口があって。


「さて、中に入れたわけですが、これからどうしましょうか? まほろさん」


「おう、そうだな、どうすんだ? まほろ」


 二人して、何故か私に聞いてくる。


「ん? なんで私に聞くの?」


「だってまほろさんはわたくし達のリーダーではありませんか」


「そうだぞ、この三人でリーダーに相応しいのは、まほろだ。いやリーダーだとバーコードヌクミズと混同するから、そうだな……よしっ、キャプテンにしよう」


「わ、私がキャプテン?」


 と私。


 うんうんと頷く二人は私が更に何か言うのを待っている――ような気がする。

 何を言えばいいんだろっ? えーと……うん、これでいいやっ。


「わ、私夢見まほろ14歳っ、みなさんのキャプテンとして、精一杯がんばらせていただきますっ!」


 わぁぁぁぁ、パチパチパチパチ――と拍手する鳴ちゃんと栞ちゃん。


 ありがとう、鳴ちゃん、栞ちゃんっ。

 私、皆のためにがんばるね。


 さてキャプテンになったからには、迅速な判断を下さなくちゃいけない。

 よーし、まずは――。


 そのとき眼前をショッピングカートが通り過ぎる。

 ゾンビさんが3人乗ってた。

 どうやら遊んでいるらしい。


 周囲を見渡すと色んなところでショッピングカートが走り回っている。

 そのすべてにゾンビさんが乗っていて、なんだかとんでもないことになっていた。


「まるで子供ですね。ゾンビだからしょうがないのですが、まずはこれをどうにかしたほうがよさそうですね」


「そうだっ、バーコードヌクミズはどうした? こういうときこそ、リーダーシップを発揮してこいつらを統率するべきんなんじゃないのか」


「あ………」


 私はそこで思い出す。ヌクミズさんは足が折れて歩けないことを。

 後ろを見る。

 

 自動ドアが、閉まっては、“何か”に当たって開くを繰り返している。


 その“何か”がヌクミズさんだった。

 ちなみに奥には、両足骨折中のタグチさんも放置されていた。




 

 ◆第7話 『鳴ちゃん、キレる』に続く。

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