7 12月24日 行動直前っ!
マリーの作戦を聞いた半日後。直仁様達は行動を開始しました。
彼女の作戦、その第1段階は直仁様の
まるで着せ替え人形を楽しむ様に、彼女達は直仁様が着るサンタ服をチョイスしました。その結果、これまでに無い程の完成度を持った「女装サンタ直仁様」が完成する事となったのです。
肩をむき出しにした真っ赤な ベアトップ の上から、白いモコモコとした衿をもつこれまた真っ赤なフードを羽織っています。胸元に結ばれた白いリボンが可愛らしさを際立たせていますね。アンダーには短めの紅い ブルームスカート をチョイス。その裾には白いラインが施されてあり、黒く太めのベルトを腰に巻いています。膝から下には紅い レッグウォーマー を装備していますが勿論防寒用ではありません。縁には白いラインが施され、その上からこれまた赤いリボンが結ばれています。靴も黒い サイドゴアブーツ を装着しており、これに関しては動きやすさを重視したのでしょう。今晩は少し濃い目のメイクを施しており、まつ毛のウィッグと真紅の口紅が妖艶さを醸し出しています。明るいブラウンの ボブディ はやや内巻きとなっており、可愛らしい中にも小悪魔的な艶っぽさも演出しています。
そしてマリーもまた、同じようにサンタ衣装に身を包んでいました。マリーは今回手伝いであり、別段サンタ衣装を着る必要もないのですが流石にその辺りは女の子なのでしょうね。
長い袖とミニスカートのオーソドックスな ワンピース には胸元から3個、白いポンポンが付けられています。腰には直仁様と同じ様な黒く太いベルトを巻き、その上から全面の開いたフードを羽織っていますが、上半身に関しては直仁様よりも大人しい、正しくオーソドックスな衣装と言えます。しかし太ももまである黒い ハイサイブーツ が彼女をしてセクシーな雰囲気を醸し出しているのです。スカートとブーツの間に見え隠れする所謂 “絶対領域” が世の男子達を釘付けとする魔力を持っている事間違いありません。もっとも今はすっかり日も暮れ、更には隠密活動で人に見つかる事は好ましくないのでその真偽は定かではないのですが。
そして今回最も目を惹くのは間違いなくクロー魔の衣装でしょう。
赤……と言うにはやや濃い、正しく裾が長く胸元は大きく開いた真紅の ミッドリフジャケット を着用しています。大きめの衿にはサンタ衣装を表現する白いモコモコが付いており、辛うじてサンタ服だという事をアピールしています。おへその辺りでボタンを留めている為クロー魔の胸は露出が激しく、その為彼女は恐らく ブラジャー を付けていないでしょう。アンダーはそのトップスに隠れる様な黒の レザーパンツ を着用しており、一見するとまるで黒い下着を履いている様に見えてしまいます。同じく黒の ピンヒールレザーブーツ が彼女の白く長い足に映えて見事にマッチしています。扇情的なその衣装はサンタクロースと言うよりもまるで海賊の様であり、普通ならば下品とも取れる恰好かもしれません。しかしそこは流石に欧米人と言いましょうか、その様な格好でもけっしていやらしさを感じさせるものではありませんでした。
3人共サンタ帽を被っているので、クリスマスカラーも相まってそれがサンタ衣装ではないと言う人はまずいないでしょう。これでこの任務に取り掛かる衣装的な条件はクリアー出来ました。
―――そしてここからがマリーの秘策であります。
「……スーグー? 履き心地はどーおー?」
小悪魔の様な衣装をしたクロー魔が、その衣装に負けない程小悪魔的笑みを浮かべて直仁様にそう問いかけました。
「……うるせーよ……最悪に決まってんだろ……」
事ここに至った直仁様は流石に腹を括っているのでしょうが、改めて指摘されれば恥ずかしさが先行してしまうのか顔を赤らめてそう言い返しました。
時刻は現在20時を少し回った所です。施設の子供達は通常21時に就寝するので、行動開始はその時刻を以てと決まりました。
「そ……それでもほら、そのお蔭で “異能力” も使えるんだし、今夜だけ我慢して欲しいのでするー」
クロー魔の言葉で再び負のオーラを纏い出した直仁様を、マリーが慌てて宥めすかしました。
「……ああ……それは解ってるよ……しかし生涯最大の恥じ……だな……。まさかこの俺が……女性物の下着を身に付ける破目になるなんてな……」
納得の言葉を呟いている直仁様ですが、それはどこかマリーに対しての恨み辛みとも聞こえました。そう、直仁様は現在、苦肉の策として女性物の下着を上下とも着用しているのです。今まで多種多様な女装を纏い、あらゆる化粧を施して来た直仁様ではありましたが、流石に下着まで女性物を着用する事はありませんでした。そしてそれは直仁様の持っている、僅かに残っていた「譲れない部分」だったのかもしれません。しかし今夜、その
「でもほら、これで今後は気兼ねなく
きっとクロー魔は意地悪な気持ちでは無く、前向きな考えでそう言ったに違いありません。しかし先程までの発言もあり、その言葉は正しく直仁様には届けられませんでした。
本当はその言葉に否定的な意見を言いたかったのでしょう直仁様でしたが、今現在着用している状態ではその言葉もむなしく響くだけです。そう考えた直仁様は、やっぱりガックリと項垂れてしまいました。
でもこのような言い方は直仁様に失礼かもしれませんが、彼は非常に女装が似合っています。いえ、徐々に女装が板について来たとでも言うのでしょうか。元々童顔な顔立ちは、少し化粧をすれば女性と見紛う表情を作りだしますし、引き締まったその身体も女性用衣装を着るのに然して大きな問題とならないのです。
「そうですのー……下着は兎も角、女装をした直仁はまるで別人の様ですからのー……」
ボックの言葉にマリーも同意を示しました。衣装をチョイスする側のマリーやクロー魔にしてみれば、直仁様の様な男性は随分と服装を選びやすいのかもしれません。
「……それで……もう一つの問題はどうするんだ? マリーには何か考えがあるんだろう?」
何とか気分を変えようと、直仁様はマリーに力なくそう問いかけました。弱々しいその姿には、流石のマリーも苦笑いを浮かべるしかありませんでした。
「うん……起きている子供達……と言うか、起きてる人にだけ聞こえる音楽を屋外から流して、その音でそちらに注意を引き付けようと思っているのでするー」
マリーの言葉に、直仁様とクロー魔は怪訝な表情を浮かべました。そんな都合の良い事が可能かと疑問に思っている表情です。ボックも正にそう思いました。
「ふっふっふー……でも実はあるんだなー」
ボックの疑問にマリーは自信ありげにそう答えました。そしてゴソゴソと足元のトートバックから白い立方体の物体を出してみんなの見える様に置きました。一辺が30cm程のその物体はまるで大きなサイコロの様でもありますが、六面に賽の目は刻まれておりませんし所々に切れ込みの様な物も見え、まるで機械仕掛けの置物でもある様です。
「……それは……なんだ?」
直仁様もクロー魔でさえそれを見るのは初めてな様であり、近づいてマジマジと見つめてはいますが決して触ろうとはしませんでした。それこそはマリーが急遽直仁様に買っていただいた代物だったのです。
「これはねー……二足歩行型多機能ラジオコントロールロボット『カクヨムン』って言うのよ」
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