第13話【復活】
「アイリス、話さねばならぬことは多くあるが、まずはそこの悪魔を倒そう。」
「分かったわ、兄さん。」
相通ずるものがあるのか、その兄妹はその後、見事な連携を見せる。
「
巨大な雷が破壊王ハルファスに突き刺さる。
強烈な電撃は、悪魔の動きをも止めている。
すかさずアイリスが斬り込む。
「もう回復はさせないわ!!
右腕は消滅し、炎の剣は宙を舞う。
「ルーファス、炎の剣を!!」
俺の眼前に炎の剣が落ちてくる。
俺から愛するものを奪った剣。
何度、夢でうなされたことか。
ああ、でもパトリシア、もう終わりにしよう。
そうだ、俺たちの悲しみは今ここで終わる。
ここで終わらせる。
跳躍して炎の剣を取った。
強い力が湧いてくるのが分かる。
これが魔剣というものなのか。
俺はただ、思いきり、斬りつけた。
魔剣が力を与えてくれたのだろうか。
悪魔の体は真っ二つに裂けた。
「やったわ、ルーファス!!」
悪魔の体は炎に包まれ、そして消えていった。
無数の光が天に昇っていく。
殺された者の魂が解放されたのだろう。
「終わった・・・。パトリシア、終わったよ・・・。」
「兄さん・・・兄さん・・・ああ、兄さん!!」
アイリスがパトリックに抱きつき、涙を流している。
10年振りの再会とは、何と悲運な兄妹であろうか。
「アイリス、迷惑をかけたな。良くやってくれた。」
優しい笑顔でアイリスを抱きしめる。
見守る我々の誰もが、永遠にこの時が続くことを疑わなかった。
だが、パトリックは突如、険しい顔になって言う。
「可愛いお前を危険にさらしたくはないのだが、事は一刻を争うのだ。」
「え? 兄さん、どういうこと?」
パトリックが国王に向かって言う。
「レスター国王、魔王アスモデウスが復活します。」
その場にいるもの全員に動揺が走った。
10年前の惨劇がまた繰り返されるというのか。
レスター国王が深刻な
「やはりそうか・・・。ルイッサ魔導士長に調査を依頼しておったのだが、悪い兆候ばかりが見つかっていてな。北部には暗雲、西部の湖も荒れている。」
「そうです、それらは間違いなく魔王復活の前兆です。」
「そ、そんな・・・。兄さんにこんなことした魔王がまた・・・。」
俺は思わずアイリスから目をそらしてしまった。
喜びに満ちていた彼女の顔が絶望に沈むのを見たくなかったのだ。
しかし現実は、俺が想像していたことよりはるかに残酷だった。
「復活を企んでいるのは、ハルファスを含む、魔王の親衛隊です。奴らはこの10年の間、なりを潜めながら復活の儀式を行ってきました。」
「追討を恐れ、表立った行動をしなかったわけか。抜け目のないことだ。」
そこへ、大臣の1人が話に割り込んできた。
「しかし国王、我々には神剣グラムを
たしかに彼らがいれば魔王アスモデウス討伐は可能であろう。
だがパトリックと、そしてルイッサは浮かない顔をしていた。
そのパトリックが言う。
「国王、私の呪いはまだ解けていないのです。」
「なんと!?」
「え? だって兄さん―――。」
「ルイッサ魔導士長はすでにお気づきのようですね。」
「そんな、そんな!? どういうことなの!? ルイッサ!?」
取り乱したアイリスに、ルイッサが静かに答える。
「パトリック様が今のお体を取り戻したのは、封印を施していたハルファスが自ら封印を解いたからです。しかし封印は全部で6つ。このお姿でいられるのは恐らくわずかな間であり、間もなく次の呪いがパトリック様を連れ去るでしょう。」
誰もが言葉を失った。
呪いは解けていたわけではないのだ。
空白の時が流れた。
「・・・やめて。」
アイリスがうわ言のように言う。
「やめて、やめて・・・。なんで兄さんがそんな目に遭わなければならないの?」
すがりついたアイリスを優しく抱き上げながらパトリックは言った。
「愛するお前を、私は危険から遠ざけたいと思う。だが、それが出来ない事態なのだ。私の呪いを解き、アスモデウスと戦わせてほしい。この兄の願い、聞いてくれぬか?」
頬に触れながら、アイリスはパトリックに問う。
「・・・また、あの
「・・・そうだ。」
ルイッサが見せたパトリックの魂は棘で覆われていた。
死よりも深い苦しみ。
パトリックはまた地獄に囚とらわれることになる。
「兄さん、私がすぐに救い出してあげる!」
「ありがとう。頼んだぞ、アイリス。」
神は残酷だ。
世のため、人のために戦う兄妹に、なぜここまで責め苦を与えるのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます