第8話【仇】
まばゆい閃光と共に稲妻が走り、ハルファスの胸に十字が刻まれる。
「ぐはぁ!? ・・・ぬぅ、これでは実体を維持できん!!」
半身だけにもかかわらず、ドラゴンをも切り裂く光の剣を耐えるとは恐るべき悪魔だ。
しかしルイッサたちの詠唱は間もなく終わる。
我々はそこまで持ちこたえればいいのだ。
「フハハハハハハハッ!!
突然ハルファスが高らかに笑い始めた。
そして赤い
「だがお前たちは大きな間違いを犯している。それは、この『炎の剣』を計算に入れていないことよ!!」
炎の剣を立てて構えたハルファスから妖気があふれ出た。
いや、違う。
炎の剣から妖気がほとばしっている!
「はっ!? いけない!! ルーファス、アイリス様、炎の剣に集中攻撃を!!」
ルイッサの指示通りに攻撃しようとしたが、強大な妖気で近づくことすら出来ない。
その時、突然パットの体が光り、悪魔の頭上へと浮かび上がっていく。
「パットに何する気!? パットの身に何かあれば、乗り移った者も消えるのよ!?」
乗り移った対象が消えれば、乗り移った側も消えるのが道理。
しかしハルファスは不敵に微笑んでいる。
「たしかに、この呪いはそういうものだ。だが―――。」
ハルファスは、勝利を確信したかのような笑みを浮かべて言う。
「俺自身・・・がここに来たらどうかな!?」
炎の剣に集まった妖気から稲光が四方に走る。
その一つが重装兵団に襲いかかり、彼らを吹き飛ばした。
「テレンス!?」
俺が名を呼ぶと、爆発で出来た
どうやら彼らは無事なようだ。
「ぷふーっ、何のこれしき! ・・・はっ、ルーファス!? 気を付けろ!!」
炎の剣に極大まで妖気が集まった。
ハルファスが呪文の詠唱を始める。
「くはははははあ!! アウモデウス様より預かりし炎の剣の真髄を見るがいい!! グーリ・ターラー・イー・バセ・クー・ジ!!
頭上高く浮かぶパットの体から暗黒の霧が流れ出た。
そしてそれはハルファスの半身に集まり始めた。
「え、何!? 何が起ころうとしているの、ルイッサ!?」
「・・・アイリス様、炎の剣は魔力の増幅装置なのです。そしてハルファスが唱えているのは闇の召喚呪文・・・。」
「まさか、召喚しようとしているのは―――。」
「そうです、アイリス様。さすがは『
「え、熾天使ラファエル!? あの剣は人間界の物ではないの!?」
「はい。どうやって魔王たちがあの炎の剣を手に入れたかは分かりませんが・・・。」
暗黒の霧から稲光が走る。
そしてついに、破壊王ハルファスがその全身を現した。
そう、奴は自分自身を召喚したのだ。
「フハハハハハハッ!! 待たせたな、人間ども!!」
魔力がケタ違いだ。
ハルファスの周囲が妖気で歪ゆがんで見える。
これが魔王親衛隊の本来の力なのか。
「はっ!? いけません!! パトリック様が!!」
呪いによる繋がりが切れたパットが、ハルファスの妖気で吹き飛ばされた。
「俺に任せろ!!」
王国一の俊敏さを誇るカイルが素早く反応し、パットを受け止めた。
どうやら無事なようだ。
「ハッ、
ハルファスはそう言うと、王国中に響き渡るような
魔導士たちがその声に凍りつく。
妖気に抵抗力の無い者がここに居合わせたなら、命すら失っていたかもしれない咆哮だった。
だが、アイリスは臆しはしない。
「ハルファス!! 本体を現したのが運の尽きよ!! ダリル叔父様の仇、ここで取らせてもらうわ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます