第29話「何であなたがここに!?」

「あ、あれは?」

 ユカちゃんが指さした方を見ると、大地からたくさんの光の粒が天へと登って行くのが見えた。

「あれは隆生と同じ症状だった者達の魂のようだ。ならユイも天へ」

「そうみたいね。まさかユイや彼等までが救われるなんて、ほんと上手い事してくれたわね……改めてありがとう、カルマさん」

 タケルとキリカちゃんは目に涙を浮かべてカルマに礼を言った。


「ああ、なるべく多くの者をと思ったが、よかった」

 カルマも目に涙を浮かべていた。


「うん。さあ皆、隆生と姉ちゃんのところへ戻ろ」

 僕がそう言うと全員が頷いた。


「負のカルマだったものが愛する心と合わさって、私ですらできなかった事を……これが創造大神様ですら予想できない不思議な縁なのかしらね」

 アマテラス様は一人そう呟いた。




「あの、これはどういう事ですか?」

 ミカが僕をすっごく怖い目で睨みつけながら聞いてきた。

「知らん。目が覚めたらこうなってたんだよ」

 あの後目が覚めたらなんか姉ちゃんが隣に寝ていた。

 てか抱きついていた。

「ねえ~、カルマが命かけてる時に何してたのさ~?」

 ヒトシがニヤつきながら聞いてきた。

 てか何もしてないってわかってて聞いてるだろ?

 さっきまで意識なかったんだから。

「隆生さん。優美子さんはいいんですけど、そっちの女誰ですか?」

 ユカがすっごく冷たい目で僕を見ながら言った。

「え……あ!?」

 反対側を見るとそこに寝ていたのは。


「な、何であなたがここにいるんですか!?」

「う~ん、久しぶりにふかふかベッドで寝たかったの~」

 何か寝ぼけた口調で起き上がった女性は


「え、ユイ!?」

「ちょ、ちょっとあなた何でここにいるのよ!?」

「「ええええ!? ご、ご先祖様!?」」

 タケルさん、キリカさん、ミカユカがそれぞれ驚き叫んだ。


「うーん、わたしもあの世に行こうかと思ったけど、世界が復興するのを見届けてからにしようかな~、と思って」

 ユイさんはややのんびりとした口調で言った。

「それはいいけどどうやって実体化したのよ!?」

「あ、隆生さんと優美子さんの力を少し分けてもらって体を創ったの」


「え、いつの間に? てかどうやって?」


「二人が寝てる隙にちゅーして」

 ドゴオオオオッ!

 僕はユイさんの顎に思いっきりアッパーカットをぶつけてやった。


「何するの!? いくら仮初めの体だからって女の子を殴るなんて酷い!」

 ユイさんが顎を押さえながら叫ぶ。

「やかましいわ! あんたタケルさんが好きなんだろが!」

「そうだけどこれはノーカウントでしょ!? それに優美子さんと関節とはいえファーストキスにもなったんだからいいじゃない!」

「僕達は既にニ回してるわ! ……あ、しまった」


「え? 一回はあの宴会の時よね。もう一回っていつやったの~?」

 ランさんがニヤつきながら聞いてきた。

「わたし見たことないわ~、いつの間に~?」

「あ、もしかしたらもっと以前ですか~?」

 ミカユカもニヤつきながら聞いてきたが……言わん!


「まあまあ、それは後にして。お久しぶりですねユイさん。私の事覚えてますか?」

 セイショウさんがユイさんに話しかけた。

「あ、セイショウ様。はい当然ですよ。散々お世話になったんだし」

「そうですか……あの、ユイさん、長い間救えずに申し訳ありませんでした」

 そう言ってセイショウさんが頭を下げた。

「私も。ごめんなさい」

 キリカさんも頭を下げた。

「いえそんな。あれって神様でもどうにもならなかったんでしょ?」

「ええ。全てはカルマのおかげですよ」

「そうでした。あの、カルマさん。本当にありがとうございました」

 ユイさんはカルマの方を向いてお礼を言った。

 だがカルマは無言だった。

「……あの?」

 ユイさんが不安そうにカルマを見つめた。


「はっ? あ、ああ別に礼などいらん……しかしユイ殿はこんなに美しい方だったのか」

 ん、何か顔が赤いぞ? っておい、まさか?


「ご先祖様、早くあの世に行ってよ~」

 ミルちゃんがドス黒いオーラ出してすっごく底冷えするような声でユイさんに言った。てかそれ台詞だけでも怖すぎるわ!


「嫌よ。わたしはもうちょっと現世をエンジョイしたいの」

 おい、あんた世界の復興を見届けるんじゃなかったのかよ?

「でもご先祖様がいたら、カルマお兄ちゃんが」

「あら、心配しなくても盗ったりしないよ。わたしにはタケルがいるから」

「ユイ~? タケルは私のよ~?」

 うわ! キリカさんもドス黒いオーラ出してる!?

「でも一時はわたしに傾いた。ならまた傾かせるまで……ふふふ」

 ぎゃー! ユイさんもだー!?

「……ねえユイ、三千年前のように決闘しましょうか? あの時のあんたは弱ってたから正直勝った気がしなかったのよね~。ふふふ」

「そうね。キリカ、あなたとの完全決着を……ふふふ」

 

「あ、それなら今のユイじゃ不利ね。はい」

 アマテラス様が手をかざすとユイさんの体が光り輝いた。

「え、これは?」

 ユイさんは驚きながら自分の手を見つめていた。

「いつかあなたを見つけたら女神にするつもりだったの。だから神体を与えてそうしてあげたわよ」

 何しとんじゃあんたはー!?


「あ~、ねえ、やるなら僕が作った異空間があるからそこでやってね~」

 ヒトシが冷や汗をかきながら二人に言った。

「わかってるわよお父さん。世界をぶっ壊したら元も子もないもん」

「ヒトシ様、ありがとうございます。思う存分暴れさせてもらいます」

 そう言って二人共その場から消えた。


「まあ、本気で殺しあったりはしないだろうな、多分……」

 タケルさんも冷や汗をかきながら呟いた。

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