第30話「やむを得ん」
その後キリカさんとユイさんはズタボロになって戻ってきた。
だが二人共晴れやかな顔だった。
「あれがユイ様か。さすがミカちゃんユカちゃんミルちゃんのご先祖様、可愛らしいのう……チッ、俺が起きてる時にしてくれたらよかったのに」
さっき起きた姉ちゃんが舌打ちしていた。
あの~姉ちゃん、あれ見た目はともかく中身は約三千歳ですがいいの?
と思った時。
「隆生さ~ん、またあの場所に行きたいの~?」
ユイさんがドス黒いオーラ出してきた。
女神になったから心が読めるんだ……すみません。
「で、どっちが勝ったの、って聞くまでもないか」
ヒトシがそう言うと
「ええお父さん、今回は引き分けよ」
「はい、またチャンスはあるでしょうから今回は」
そう言って二人共仲良く手を繋いでいた。
考えてみれば二人は三千年ぶりに会ったんだよな。
戦いながらも相当話してたのかもね。
「さ、二人共治療するからこっち来て。服も着替えないとね。あ、野郎共は覗いたらダメよ」
ランさんがそう言って二人を別室へ連れてった。
「心配しなくても、んな事したらタケルさんが」
「いや、俺が手を出すまでもなく二人がそいつを殺るぞ」
タケルさんはすまし顔で言った。
「……あの、タケルさん」
「ん、何だ?」
「タケルさんが彼を救ってくれたんですよね。ありがとうございました」
「その事か。といっても俺が何かした訳じゃないぞ。あの妖魔は彼の心の奥底に隠れていてな、俺の奥義でも引きずりだせなかったんだよ」
「え!?」
「だがな、周りにいた者達が彼の心を強くしたんだ。そして妖魔がそれに耐え切れず表に出てきた時に斬った。俺ができたのはそれだけだよ」
「そ、そうだったんですか?」
「ああ。俺がもう少し早く来てればあるいは、とも思ったが……最後は彼自身、そして周りの者がなんとかしたよ、人の心の力でな。ホント凄いわ」
そうだったんだ。
その後ランさん達が戻ってきて、いろいろお祝いしようという事で宴会になった。
だがカルマの事を思うと。
「おい、我の事を思ってくれるなら思いっきり楽しんでくれ。我は最後まで皆の笑顔を見ていたいのだ」
カルマは微笑みながらそう言った。
「あ……うん、わかったよ」
そして宴会が始まった。
皆楽しく飲んで食べて騒いでたが、まさか……。
「ふふふ~、さ~て、三千年ぶりにナマのBL見たいわね~」
ぎゃああ!?
ユイさんがユカの如く酔っ払ってる!?
てかあんたもだったんかー!
「ユ、ユイ様……うん、お手伝いします!」
「わたしも……ボタボタ」
「あたしも~」
うぎゃー!
今回は酔ってねえのにユカやミルちゃんはおろかミカもアッチ側かー!
「私も~、こういうのってなかなか見れないし~」
ミユキもかー!?
「キャハハ、私も好きだけど元祖はやっぱユイよね~、お酒入ってないと言わないから飲ませちゃった~」
キリカさんも酔っ払ってるって、犯人はあんたか!?
「よしタケルさん、連行しろ!」
「すまん! 後は頼んだ!」
「あ~れ~!?」
タケルさんはキリカさんを引きずってどっかへ行った。
「いってらっしゃーい。さてと、あれはセリスにあれを……げ」
「あ、ああ」
「うりうり~」
ぎゃあー!? セリスがまたアマテラス様に記すことすら憚られる事をー!
「だから児童に酒飲ますなー!」
「ううん、あたし見てたけど、セリスはお酒飲んでなかったよー」
そう言ったのはイリアだった。
「え、じゃあ何故!?」
「知らないわよ、何故かいきなりああなったのよー。で、止めようかと思ったけど怖くて近寄れないし」
イリアは歯をガチガチ鳴らして震えていた。
「ま、まあそうだよな……ところで何故?」
「あの、もしかしたら」
ルーがおずおずと言ってきた。
「え、何か知ってるの?」
「うん、シューヤさんが持ってたこれ見たからかも」
そう言って一冊の本を渡してきた。
「ん……おいシューヤ! てめーなんちゅうもん持ってんじゃ!?」
「あ、あ、それは耐性をつけようと思ってタケル様のベッドの下から拝借してきたんです」
それはオネショタエロ同人誌だった。
てかタケルは本当にこんなもん持ってたんか!
つかシューヤ、んなもん持ち歩くな!
「ギャアアアア!」
え、誰かの叫び声が……ああ!?
「ふふふ……さ、脱ぎ脱ぎしましょうね~」
「さあチャスタ、イザヨイさんと」
「イザヨイ~、これはノーカンだから遠慮しなくていいよ~」
うわああ! チャスタとイザヨイが腐女子共に捕まってるー!
「ど、どうしよ?」
「父上様、私達も捕まる前に逃げましょう」
「あんた達ねえ……でもあれはたしかに無理ね」
ヒトシ一家は怯え震えていた。
「おのれらがそれじゃ誰も止められんわー! って、そうだ。姉ちゃんなら」
「優美子さんは酔って寝ちゃったけどー?」
イリアが指さした先を見ると、姉ちゃんはテーブルに突っ伏して寝ていた。
マジか? てか姉ちゃんは寝てしまうほど飲まんはずだが?
「さっきキリカ様に無理矢理飲まされてたの」
ルーが泣きそうな顔で言った。
「タケルさん、思いっきりお仕置きしてやって!」
わかったー!
ァー!
「よし、でもないな。どうしよ?」
「チャスタとイザヨイには悪いけど、逃げよう」
ヒトシがそう言った時
「逃すわけないでしょ、そりゃ」
ユイさんが神の力か何か知らんが、とにかく僕達を金縛りにした。
「ぎゃああ!?」
「だ、だからさっき逃げましょうって言ったのに!」
セイショウさんがややキレ気味に叫び
「ちょっと、あたしは女よ!?」
ランさんが怯えながら叫ぶと
「ええ、わたしそっちもありですし。人妻と美少女の百合も見たい……ジュル」
ユイさんがヨダレ垂らして言った。
「さすがユカのご先祖様、半端ないですね……」
「もうやだ、助けて」
「あ、あたしもアッチに寝返ろうかな?」
シューヤ、ルー、イリアも動けずに怯えていた。
「……やむを得ん、最後の力を使うか」
え?
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