第44話「孫娘」

「え、え? 眷属様って最高神様を抑えれる程強かったんですか?」

 僕は眷属様に尋ねた。

 だって僕はこのおじいさんがそこまでだと思ってないが?


「頭はボケとるが力はまだまだ衰えとらんわ。儂はこれでも全次元世界創造以前から存在しとるからのう」

 何だって!?


「じゃ、じゃあ眷属様って、最高神様に産み出された方じゃない?」

「ああ、儂は創造大神様に産み出された者じゃよ。そして創造大神様の命によってアマテラス様達ご姉弟の補佐をする為に遣わされたんじゃ」

「え? 創造大神様って僕が思ってる通りだと、全次元世界を含む大宇宙を創られた神様ですよね? 本当にいたんだ」

「そうじゃよ。お前さん達が想像もつかんくらいの御方じゃよ。それよりご苦労さんじゃったの」

「いえそんな、眷属様が来なかったら僕達は」


「う、じい。来てたの?」

 気がついたアマテラス様が眷属様を見て言った。


「はい。そろそろ隆生達を出発の時間に戻さなければいけませんしのう」

「戻す必要はないわよ……今ここで」

「ちょっと失礼して……こりゃ! 神とあろう者が何をやっとるんじゃ!」

「ひいっ!」


 うえっ!? け、眷属様がアマテラス様を叱ってる! 


「だいたいあなたがちゃんと本を保管しとかんから、こういう事になったんじゃろが! それに見られたから言うても、隆生達が他言したり悪用したりするはずもなかろうが! 落ち着きなされや!」

「あ……そ、そうね私ったら……ごめんなさい」

 アマテラス様は僕達に謝ってきた。


「あ、いえ、勝手に見た僕達も悪かったですし」

「僕が悪乗りしすぎたから……ごめんなさい」

 僕とヒトシも謝った。


「まあ、お互いに謝ったしこれはお終いに、でよろしいかの?」

「ええ、じい。昔のように叱ってくれてありがとう」

「いやいや、ご無礼致しましたですじゃ」

 ああ、さっき言った補佐役としてそんな事もしてたんだな。


「眷属様、少し聞いてもいいですか? アマテラス様の補佐役であるあなたが何故境目の番人を?」

 姉ちゃんが眷属様に尋ねた。


「ああそれはな、儂は最初アマテラス様達が世界を創っていくのを手伝い、神の力の使い方などをお教えしとったんじゃ。じゃが長い時を経てアマテラス様達は神として立派に成長なされ、各世界の神も育ってきたので儂の役目は終わり、創造大神様の元へ戻る事になったのじゃがのう」

 そして一呼吸置き


「……いつしかアマテラス様ご姉弟を実の子、孫のように思うようになって離れるのが辛くなってのう。それで創造大神様にお願いしてな、正式にアマテラス様の眷属にしてもらい、その後は番人にしてもろうたんじゃよ」

「そうだったんですか。では今は眷属ですが元は何だったんですか?」

「ああ、一応は神じゃったわ。じゃが儂は神って柄じゃないし、眷属としてアマテラス様に『じい』と呼ばれるのが性に合っとるわ」

 眷属様はにこやかな顔でそう言った。


「ええ、じいは私達にとって本当のお祖父様みたいな人よ……これからもよろしくね」

「わかりましたわい。孫娘様」


 なんかいい感じになったな……あ。

「元の世界に帰るなら、じいちゃんとはここで一旦お別れか」


「ええ。勝隆さんは元の世界では既に、というか」

「勝隆殿の寿命はもう尽きかけとるからのう」

 アマテラス様と眷属様は言いにくそうに語った。


「え、なんでですか!?」

「父さんは別の体に転生したのだから、まだ生きられるんじゃ!?」

 僕と姉ちゃんが驚き尋ねると、


「いや、転生いうてもほぼ元のままじゃからのう。それでは病がなかったとしての寿命分だけしか生きられんのじゃ」


「そ、そんな、一緒に暮らせないにしても、またすぐ会えると思ったのに」

「ああ。まだ母さんや兄さん達にも会わせてないし……それにミルちゃんはどうすれば」


「隆生、優美子。もういい」

 酔って寝てたはずのじいちゃんがそう言ってきた。


「じいちゃん! でも」

「何となくだがこれが終わったら私は……と感じていた。それに私はほんの少しでもお前達とまた会えて、一緒に酒が飲めてよかったと思ってるぞ」

「う、じ、じいちゃん」

「父さん……」

 僕も姉ちゃんも涙が止まらなかった。


「それにミルがどうするかはミル自身が決めればいい。あっちの世界に帰るか、それとも」


「……おじいちゃん」

 ミルちゃんがじいちゃんの側に歩いてきた。

 目に涙を浮かべて。

「ミル……」

「おじいちゃん、もうお別れなんだよね」

「ああ、すまん。もう少し一緒にいてやりたかったが」

「……おじいちゃん、今までありがとう」

「礼を言うのは私の方だ。お前という孫娘を持てた事は私にとって、最後の幸せだったぞ」

 そう言ってじいちゃんはしゃがんでミルちゃんを抱きしめた。

 ミルちゃんはじいちゃんの肩に顔をうずめて泣き出した。

 そしてそこにいた全員も……。




 しばらくして顔をあげたミルちゃんはこう言った。

「おじいちゃん、あたし行きたいところがあるの」

「ん? 何処だそれは?」

「あたしのパパとママが住んでた世界よ」

「そうか……隆生、その世界はユカさんが生まれた世界でもあるのだったな?」


「そうだよ。でも今どうなってるのか知らないけど。ユカちゃんは知ってる?」

「いえ、わたしもあれから一度も帰ってませんから」


 するとアマテラス様が暗い顔になり、

「……あの世界はね、もう滅びの時が近づいてるのよ」


「え!?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る