第43話「見られたからには……」
「そうだったんですか!? そのご先祖様が……あれ、名前何だっけ?」
「その人の名はね、リュウセイだよ」
近くにいたヒトシが答えてくれた。
「え、僕と同じ名前?」
「うん、そして制限が外れたのも『隆生』、凄い偶然だね」
「そうか。ご先祖のリュウセイ様が制限を。誰かが悪用しないようにと思って」
「誰か、というのは他でもなく、リュウセイ自身だったのよ」
アマテラス様は暗い顔で言った。
「そ、それどういう事ですか!?」
「彼は一族の歴史上最も優れた使い手だったわ。でも幼い時にちょっとした悪戯で力を使い、妹キリカはその巻き添えになって消えた」
「え? でも」
「ええ、キリカは生きていたわ。別の世界に飛ばされてね。だけど彼はそれを知らなかった。ずっと悔やんでいて、ある時一族の力に制限をかけたのよ。二度とこんな事がないようにと思って」
「そうだったんですか。あの、そういうのでも手を出しちゃいけなかったんですか?」
「いいえ。実はね、キリカには人間であった時に一度話したのよ。元の世界で兄が待っていると。でも当時あなた達の世界は二つに分かれたばかりで安定してなくて、私ですら転移しても跳ね返されたのよ。なので安定するまで待つことにしたんだけど……彼の死後だったわ、安定したのは。その後二人はあの世でも再会する事はなかった。彼はすぐにまた人間に生まれ変わっていったから」
「だが今はそれぞれの子孫が共に暮らしているのだろ。それで少しは救われていると思いたいものだな」
いつの間にか起きてきたカルマがそう言った。
「ええ。そうね」
「さ、暗くならないでまた騒ごうよ。せっかく問題が解決したんだしさ~」
ヒトシがそう言ってきた。うん、そうだね。
するとミカとユカがアマテラス様に話しかけた。
「あの、アマテラス様。約束の本は」
「あ、ここにありますわよ。ありがとうね二人共」
アマテラス様はミカとユカに鉄道の本とBL本を渡した。
「おおお、大宇宙にはこんな電車があったのね」
どんな電車なんだ?
僕もちょっと興味あるな。後で見せてよね。
「す、凄い……おとなしい兄とやんちゃな弟の禁断の……ハアハア」
アマテラス様、それまさか実弟二人がモチーフじゃないですよね?
「ところでアマテラス様。その本にはいったい何が書かれているのですか?」
姉ちゃんはアマテラス様が持っている本と鍵を見て尋ねた。
「え? わ、悪いけどそれは言えないわ。ごめんなさい」
言えないって、何か気になるな。
「ねえ、本さんの中身って何が書かれているの?」
ミルちゃんが本に話しかけた。
「……すみませんミルさん、言えません」
本もそう言った。
「え~? そんな~」
「よし、なら……セリス、ルー、チャスタ、シューヤ。ちょっと協力してね」
ヒトシは彼等に向けて手をかざした。すると
「ギャアア!?」
「な、何じゃこりゃー!?」
四人共猫耳フリフリメイド服姿になった、っておい!
「あら、可愛いわね……ハアハア」
え!?
「あ、アマテラス様、さっきのBL本といいもしかして……ショタコン腐女子?」
「ハッ? にゃ、にゃにを言っへるのあなた?」
すげえ噛んでますが。
「それ~(笑)」
「ああっ!?」
その隙をついたヒトシがアマテラス様から本を掠め取った。
「え~と、何が書かれてい……」
僕の側まで来たヒトシは本を見て固まった。
ってヒトシが固まるなんていったい何が書かれている!?
と思い僕も本を覗きこんだ……げ。
「隆生、ヒトシ。そこに何が書かれているんだ?」
姉ちゃんが聞いてきたが
「……言いたくない」
「ん? ……な!」
「!?」
「え」
姉ちゃんやミカやユカも覗きこんで固まった。
そこに書かれていたのは、中二病全開のこっ恥ずかしいまでのポエムだった。
若気の至り、か?
ゴゴゴゴ……。
「見られたからには全員生かして返すわけにはいかないわね」
げ、めちゃくちゃ怒ってる!
ど、どうしよ?
「やばっ! 以前ならともかく、今の僕じゃとても抑えられない!」
「ヒトシでもダメ!? あ、そうだセリスならアマテラス様を抑えられ……げ」
見るとセリスやルー、シューヤにチャスタが透明な大きい球体に封じ込められていた。
「フフフ、この子達は生かしておくわ。後でゆっくりと……ジュル」
ギャアー! 開き直ってやがるー!
「あ、あのアマテラス様、どうかここはひとつ私に免じて」
お! セイショウさんが抑えに入ってくれた!
「フフフ、いくら可愛い孫の頼みでもそれは聞けないわねえ~。それ」
ボン!
セイショウさんはアマテラス様の力で十歳くらいの姿になり、セリス達と同じ球体に封じ込められた。
「フフフ、後で一緒に遊びましょうね~、ジュル」
うわあああ!? 実の孫に何する気だー!
「あ、あ、そうだ、カルマや父さん達は」
姉ちゃんがそう言ったがカルマは何を見せられたのか知らんが、鼻血大量出血で倒れていた。
ショウケイさんとじいちゃんは酔いつぶれて寝ている。
ついでにランさんとサオリさんは眠らせらたのか倒れていた。
「フフフ……覚悟はいい?」
アマテラス様が妖しい顔で言った時。
「やめなされや、ほい」
何処からともなく光が差し込み、それがアマテラス様を照らしたかと思うと。
「……あ」
アマテラス様は気を失って倒れた。
「え、何が?」
「危なかったのう、お前さん達」
そこに現れたのは白髪頭の老人、あの世とこの世の境目の番人である眷属様だった。
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