第40話「新たな道をしっかりと生き抜け」

 その人って、まさか。

「え、それはまさか」

 姉ちゃんもそれが誰だか思い当たったようだ。

 うん、わかるよね。

「そういえば優美子の記憶にあったあの人は既に白髪だったな」

 じいちゃんがそんな事を言った。

 へえ、体質なのか若い頃から相当苦労してたのかな?

「え、そうなのか?」

「ああ。おぼろげだったがお前の実の父親、ショウケイさんはそんな感じだったぞ」


「え、ショウケイ様!?」

 シューヤが驚いて叫び

「誰それ?」

 それを聞いたチャスタは首を傾げ

「ショウケイ様というのはタケルのお祖父さんよ。そして人知れず世界を救ってくれた英雄でもある方よ」

「そう。ショウケイ様とその親友であるバルド様がいなかったら、わたし達は今こうしてここにいなかったかもしれない」

 ミカとユカがチャスタにそう話した。


「そうか。彼はショウケイという名で、そして優美子の父親か。すまなかった、我は結果的に彼を」

 カルマが姉ちゃんに向かって頭を下げた。

「いや、全く思うところが無い訳ではないが気にするな。しかし妙なものだな、お前が今ここにいるお陰で実の父親に会えるのだから」


 そして僕達はアイテム創りの為、世界で一番の聖地だという場所へ……てかここかよ。

「何か行ったり来たりだな」

 姉ちゃんはうんざりしていた。

「まあ、最初から全てわかる訳ないしね」

 そこは空中都市邪馬台国の中心にある歴代女王の墓、前方後円墳だった。

「ここなら妖魔の悪しき力も少しは抑えられますから……ではまずはルー君からお願いします」

「はい、えと、え~い!」

 サオリさんに促されたルーが手をかざすと、地面に置いてたロボットがひとりでに歩き出した。

「お、凄え!」

「チャスタ君、驚いてないで次は私と」

「うん。え~と……そりゃ!」

「はあっ!」

 チャスタとサオリさんが手をかざすとロボットの体が超合金のようになった。

 でもこれ鉄じゃないよな、何だろ?

「あら、体がオリハルコンになっちゃったわ? 私にはそんな事できないけど?」

 なんですとー!?

「オリハルコンってよくわからないけどさ、オイラがこの世で一番固いもので体を、って思ったからそうなったのかなあ?」

 チャスタがそんな事を言った。

「いいもんいいもん、私ってか神以上の存在が何人もいたってさ……シクシク」

 サオリさんはいじけてしゃがみこんでしまった。


「まあ、そっとしとこう。さ、次はセリス君が」

「わかったよおばさん!」

 姉ちゃんが促すとセリスは元気よくそう言ったが

「いいもんいいもん、俺は十歳の子から見ればおばさんだよな……シクシク」

 姉ちゃんもいじけてサオリさんの隣にしゃがみこんでしまった。


「セリス君、次からはあの人の事お姉さんって言ってあげて」

「わかったよ。じゃあ、えい」

 セリスが手をかざすとロボットから何だか優しい雰囲気を感じられるようになった。


「次はあたしだけど、どうやるの?」

 ミルちゃんが僕に聞いてきたが。

「う~ん、まあ、深く考えないでやればいいと思うよ(正直わからん)」

「うん! え~い!」

 するとロボットの雰囲気がさらに良くなったような……これが慈愛なのかな?

 いや自然界の力?


「あの、おれ勇気や信念なんて」

「シューヤ、君は敵が現れた時、率先して先頭に立ってるじゃんか。その気持ちがそうだと思うけど」

「そうでしょうか?」


 自信を持て。お前はかつての私が忘れていたものを既に持っているのだ。

「え? だ、誰?」


 私はお前だ。

「あ……はい、わかりました。では」

 シューヤが手をかざすと何だかロボットに力強さが宿ったような。

 てかシューヤ、キョロキョロした後で誰かと話してたような、って心が読めなくてもわかるわ……前世の自分、ヘルヘイムと話してたんだよね。


「じゃあわたし達が。ユカ、いくわよ」

「ええ、お姉様」

「ちょっと待って。シューヤとカルマさんは目を瞑」

 僕が言い終わる前に姉妹はキスしやがった。

 案の定シューヤは鼻血大量出血で倒れたがカルマはギリギリで耐えたようだ。

「「極大破邪聖光!」」

 融合変身したミカユカはそんな事知らんと言わんばかりにロボットに向けて破邪の光を放った。

 たぶんこれで今のカルマの心を維持できるんだろうな。


「さてと、いよいよ僕達……おい姉ちゃん、はよ立てや」

「……隆生、貴様だっておじさんと言わたらショックだろうが」

「まあそうだけど。いいから行くよ」

「ああ」

 僕と姉ちゃんが神力を放つと、ロボットは光り輝きながら宙に浮かんだ。


 どうやらうまく行ったようですね。これで完成ですよ。


 セイショウさんがテレパシーを送って来た。

「よし、じゃあそろそろ呼ぶわね」

 立ち直ったサオリさんが天に向けて手をかざすと


 僕達の前に光の扉が現れ、そこから壮年の男性が出てきた。

 タケルの祖父で姉ちゃんの実父でもあるショウケイさんが。


「ショウケイさん、わざわざ来ていただきありがとうございます」

 サオリさんがショウケイさんに挨拶した。

「いえいえ、私でお役に立つならば……しかし眷属様の力であの世から見ていたがこのような事になるとは」

「ええ。あ、ここに優美子さんがいますが先にお話されますか?」

 そう言われたショウケイさんは姉ちゃんの方を向いた。

「ユミコ……いや、今は」

「ああ、後でゆっくり話そうな、父さん」

 姉ちゃんの目は潤んでいた。

「ユミコ、俺のことはお父ちゃまと呼んでくれ」

「殴っていいか?」

 姉ちゃんは握り拳を作ってショウケイさんを睨みつけた。

「冗談だ。怒るなユミコ」

「わかってるが兄さんと同じ事言うな」

「リュウホウが俺の真似をしたんだろ。っといかん。では始めましょうか」

「はい。ではカルマさん」


「すまない。あなたの命を縮めておいて」 

 カルマは頭を下げ、涙声でショウケイさんに謝罪した。

「……新たな道をしっかりと生き抜け。それが俺や他の者達への詫びだと思え」

 ショウケイさんの口調は憎しみなどなく、本心からそう言っているように感じた。

「ああ。では」

「うむ」

 カルマの姿がブレ始め、そして黒いものがカルマから飛び出した。

 するとショウケイさんは素早く光り輝く剣を抜き

「はあっ!」


 ギャアアアアーーー!


 それを切り裂き、完全に消滅させた。

 するとカルマはロボットに吸い込まれていき、そのロボットがカルマの姿になった。

 そしてカルマがさっきまでいた場所には本と鍵が落ちていた。


「これで長く暗い道が終わり、新たな明るい道が始まったな」

 ショウケイさんが穏やかな顔で言うと

「……ありがとう。あなたや皆にはいくら礼を言っても足りん」

 カルマは溢れる涙を拭おうとせずそう言った。


 カルマもこれで……。

 姉ちゃんもショウケイさんに会えた。本当によかった。

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