第39話「彼の者」
「さてと、これで全員揃いましたが、ここからどうすれば?」
サオリさんがそう言った時
皆さん聞こえますか?
「あ、セイショウさん。聞こえますよ」
それはよかった。さて皆さんお疲れ様でした。後はアイテムを創るだけですね。
「ええ。それでどうすれば?」
後は勝隆さん達が住んでいる家に戻ってください。
最高神様が言うにはそこにアイテムの器になる物があるそうですから。
「なんだって!? じいちゃん、そんなもの持ってたの!?」
「いや、私は知らんが?」
じいちゃんは首を傾げていた。
「てか、私もそんなものがこの世界にあったなんて知らなかったわよ」
サオリさんも知らんのか。
知らなくて当然ですよ。あれは私だって言われなければわかりませんよ。
あ、それは……ですよ。
「え!? わかりました。じゃあ皆行こう!」
そして僕達はサオリさんの転移術で大阪に、家に戻った。
「あれ? ここってボクのお家に似てる~?」
セリスが家を見てそんな事を言った。
ああ、セリスの家はこの家をイメージして小説に書いたんだ。
そうか、本当に似てるんだな。
そして家の中に入り、僕とじいちゃんで物置を探すとそれは出てきた。
「しかしこんなものが。てかこれ、僕が持ってたやつと同じ?」
それは僕が子供の頃持ってた玩具のロボットと同じものだった。
いつの頃からか覚えてないが、ずっと大事にしてたんだよな。
何の漫画かアニメか知らないものだったけどとても気に入ってて。
だけどいつの間にか無くなって……凄く泣いたよな、あの時は。
「それは私がこの家に来た時二階に落ちてたんだよ。そうだ隆生、ここを見てみろ」
「え、あ!」
じいちゃんに言われてロボットの足の裏を見ると、そこにはひらがなで「にしりゅうせい」と僕の名前が……これ、本当に僕のロボットだ。
「という事はこのロボットは、時空を越えてこの家に辿り着いたのか?」
「おそらく……私でも気づかないなんて、これっていったい何なの?」
姉ちゃんとサオリさんが話しているとセイショウさんがまたテレパシーを送ってきた。
元々それはアマテラス様の弟君ツクヨミ様が創られたものだそうですよ。
それ自体に意志はありませんが、本や鍵と同じように幾つもの世界と時代を彷徨ってたそうで、それが隆生さんの下に辿り着き、今そこにあります。本当に偶然にも程がありますね。
「そうだったんですか。あ、これなら本や鍵に匹敵するアイテムかも」
ええ、でもそのままでは器だけですのでカルマの姿を維持できません。
なのでまずルー君の力でロボットに仮初めの命を与え、チャスタとサオリ様の力で体を強化し、セリス君の力で優しい心を、ミルさんが慈愛と自然界の力を、シューヤが勇気と信念を、ミカさんとユカさんが破邪の力を、そして隆生さんと優美子さんの神力を注ぐんですが……。
「ん? どうしたんですか?」
いえ、ただ気になるのがカルマの心です。
今は大丈夫みたいですが、新しい体になった時に残っている悪しき心が反発するかも。
「それをなんとかする方法は知ってる。だが」
カルマは何か言い淀んでいた。
ええ、あなたの悪しき心を分離させてそれを倒せばいいのですがね。しかし……。
「セイショウさんにカルマさん。何か問題でも?」
「ああ。悪しき心をその場で討ち取れればいいが、もし取り逃したら再び捕らえるのは困難であろう。そして奴は悪しき縁を集めて力を蓄え、やがて今の我よりも強大になるだろう。そうなっては」
もはや誰もそれに敵わないかもしれません。ですから分離したその時点で倒すしかありません。
ですがたとえミカさんとユカさんが融合変身した破邪の力でも、一瞬では無理でしょう。それでは逃げられてしまいます。
「あの、タケルやセリス君ならどうなんですか?」
はい。たしかにセリス君の力は強大ですが、戦い慣れてないので上手くいくという保証がありません。
タケル王なら可能かと思いますが、彼は今そちらへ行けません。
「え? そっちで何かあったんですか?」
彼は姉のぱんつを隠し持ってたのが王妃にバレてシバかれて全治一ヶ月の重症を……はあ、まったくもう。
辺りが静寂に包まれた。
「あの王様って格好いいなと思ってたのに、変態だったんだ」
「オイラも格好いいなって思ってた……うう」
ルーとチャスタは涙目になっていた。
ああ、彼等の中にあったタケルの英雄像が崩れただろうな。
「うわ、一時でもそんな変態が好きだったなんて一生の汚点だわ。でも今はチャスタがいるからいいわ」
ミカ、ショタコンも変態だと思うが。
「どうせならシューヤのを持ってれば……ハアハア」
ユカ、どこまでも腐女子道を突き進むんだな。
「おれには兄弟いないけど、もし姉がいたらそうなって、ないよな。どうせならユカのを……ふにゅ~」
シューヤ、前半は普通だが後半は……まあいいや。
「隆生、お前は俺のぱんつ隠し持ってないだろうな?」
姉ちゃんがそんな事ほざいたが、誰がそんな事するか!
「あの、出来そうな方に心当りはないのですか?」
じいちゃんが尋ねるとカルマが呟いた。
「一人だけ心当りが、いや」
「ん? 誰か知ってるの?」
僕がカルマに聞くと
「いや、彼の者は既にこの世にいないのだ」
「あ、それじゃダメだね」
「いえ、その人がまだ転生してなくてあの世にいるなら、ここに呼べるわよ」
サオリさんがそう言った。
あ、そうか。信玄公や政宗公を呼んでたもんな。
「そうか。だが我は彼の者の名を知らぬのだ。それでも大丈夫なのか?」
「え? それはちょっと難しいわね。せめて特徴がわかればなんとかなるけど」
「ああ。彼の者は少し長い白髪で立派な髭を蓄えた壮年の男だった。彼の者は青い髪の同じ年頃の男と二人であの戦艦に乗って我と対峙し、最後は手にしていた光り輝く剣で我を倒したのだ」
……え、それってもしかしてあの人?
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