第27話「あの場所は……」
その後僕達は再びドームの中に入った。
ここでミルちゃんが本に語りかける事になった。
ミルちゃんが手にしている本はよく見ると茶色のカバーに鍵がかけられている。
今は光っていないが、やはり意志があるのかな?
「よし、じゃあお願い」
「うんお兄ちゃん……ねえ本さん、お話できるなら返事して」
すると本がまた光りだして浮かび上がり
「ふああ。あ、何か用ですか?」
本から女性のような声が聞こえてきた。
てかこの声って
「アマテラス様の声だわ……ハアハア」
その声を聞いたサオリさんが興奮しだした。
ゴン!
「普通に喋ってる声で発情すんな! てかまだ妖魔が残ってんのか!?」
「痛い……でもなんかクセになりそう、ああ」
サオリさんは頬を赤らめて悶え始めた。
やり過ぎたか?
「あのね、本さんが吸い込んだ人達を元に戻してほしいの」
ミルちゃんはそんな事どうでもいいとばかりに本にお願いしていた。
「人々を吸い込んだ? 私そんな事したんですか?」
「は? あんたが自分の意志でやったんじゃないの?」
僕は本に尋ねた。
「……あ、思い出してきました。たしかに人間や他の生物を吸い込みました。どうも長い間あちこち彷徨ったせいか、記憶が曖昧になってて訳がわからず……すみません」
本は申し訳無さそうに言ってきた。
「彷徨ってた? まあそれはいいからさ、早く吸い込んだ人達を元に」
「できません」
即答してきた。
「ミカちゃんユカちゃん、融合変身してこいつ燃やして」
「嫌です。そんな事したら大宇宙の鉄道図鑑が貰えなくなりますから」
「神話時代のBL小説が……どうしても燃やすというなら、わたし隆生さんをこの手で」
二人は鬼の形相で僕を睨んできた。
「ごめん、ちょっといらついてた」
二人の言い分はともかく燃やしたらダメだよな。
「ねえ本さん、どうしてできないの?」
ミルちゃんはまたお構いなしに本に話しかけた。
「すぐ戻してあげたいのはやまやまなんですが、そうするには私にかけられている鍵を開けてもらわないといけないのです」
本はそう言った。
「そうなのか。で、鍵はどこにあるんだ? 最高神様の所か?」
今度は姉ちゃんが尋ねた。
「どこにあるかわかりません。おぼろげですが、この世界に来た時までは一緒にありましたが」
「あんたは鍵の位置を感じ取れたりできないのか、ってできるならわからないとは言わないか」
「はい、すみません。私にはそういう力は備わってません」
そうなのかよ。じゃあどうしたら?
「うーん、せめて落下地点だけでもわかればなあ」
「いや、もしどこかに落ちてたとしても、誰かが拾って持ち歩いてるかもしれないじゃんか」
シューヤとチャスタがそう話していると、サオリさんが前に出て
「ふふふ、ならこの世界の守護神である私が……ねえ、後でこう言ってくれない?『サオリ、愛してるよ』って……ハアハア」
ゴン!
「ああご主人様、もっとぶって、ハアハア」
サオリさんがうつろな目でそう言ってきた。
「僕が悪かったです! だから戻ってきて下さい!」
僕は慌ててサオリさんの肩を掴んで揺すった。
「はっ? え、えと……あ、では私が鍵の位置を探り出しましょう。この世界の事なら何でも見えるんですから」
「お、お願いします」
そしてサオリさんは目を閉じて手を組み、何かの呪文を唱え始めた。
しばらくして
「……はあっ!」
ドームの中にある大型ディスプレイに向けて光を放った。
するとそこに見たこともないような建物や緑豊かな風景が映し出された。
「あそこに本の鍵がありますね」
「ええ、それはわかりますがあそこってどこですか? あ、姉ちゃん知ってる?」
「知らん。父さんは?」
「私も知らんなあ。サオリ様、あれはもしかして外国のどこかですか?」
「いえ、一応日本ですよ。ただあなた達の方では今は存在しない場所ですが」
「え? 昔はあの場所がうちの世界にもあったんですか?」
「はい、あの場所は」
サオリさんが言ったのは……はあ!?
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