第28話「それを作れるのは」
「あそこはあなた達が邪馬台国と呼ぶ場所です」
ええ!? 邪馬台国ってあの邪馬台国!?
「や、邪馬台国って事は、あそこは近畿か九州ですか?」
「九州の方ですけど、普通に考えたらわかりませんよね。だって空に浮かんでる空中都市なんだから」
「「な、何だって------!?」」
僕と姉ちゃんはそれを聞いて驚き叫んでしまった。
「く、空中都市ってどういう事ですか!? 邪馬台国の位置が魏志倭人伝によると、海の上に辿り着くって話は聞いた事ありますけど!?」
「はい、邪馬台国はこちらもそちらの世界でも、初めは同じようにその海の上にあった島だったんです。ですがある時こちらの世界の島が何故か空中に浮上して……そしてそちらの世界にあった島も同じように浮上した後、またまた何故か時空を越えてこちらに辿り着き、二つの島が合体してあの空中都市となりました。今は九州の上空一万メートルの位置にあります」
「あ、あそこには人間が住んでいるんですか?」
「ええ。人間だけじゃなく魔族も獣人族も龍族も……まさに理想の楽園、という所でしたが今は地上と同じで誰もいないようです」
「そうなんですか……」
「あ、あの、あれってこの世界じゃ普通に知られてるんですか?」
ユカがサオリさんに尋ねたが
「いや、あんな島があったなんて俺達も今初めて知りましたよ」
近くにいたホクトさんが答えた。
「ええ。島全体が特殊な気で覆われているので、今地球上に存在するレーダーの類、魔法や秘術でもその気に阻まれてまず見つからないでしょう。だから知らなくて当然です」
「もしかしてそれ、鍵の影響ですか?」
「それはわかりませんが、私や兄でもわからない現象だったので、そうなのかもしれませんね」
「とにかくあそこにあるんですよね。じゃあ早速行きましょうよ、またブルートレインで!」
ミカは目を輝かせながら言ったけど
「ミカちゃん。電車で近くまでは行けるけどさ、肝心のあそこへどうやって行く気?」
「……そうでした、今は空を飛べないんでした。こんな事ならもう少しシクネスさんにいてもらえばよかったわ」
「お姉様、たとえシクネスさんでもあそこまで飛べるものを作れるかどうか・……あ、そうだ。本さんがこの世界の磁場を戻してくれたらいいんだ」
ユカがそう言うと
「え? この世界の磁場がどうかしたんですか?」
本は訳がわからないとばかりに聞いてきた。
「あれ? 世界の磁場が乱れてるのって、あなたのせいじゃないの?」
「……あ、たしかに乱れてますね。でもこれ私じゃないですよ。たぶん鍵がやった事ですので、私にはどうする事もできません」
「そ、そうなの? じゃあどうしよ?」
「あ、そうだわ! サオリ様、こっちには世界のエネルギーを集める道具ってないんですか?」
ミカがサオリさんに尋ねたが、
「ああ、兄がアマテラス様から授かったものですね、私は貰ってないです。てかもしあったらそれペロペロしまくってますよ」
ドゴオッ!
「はあ、はあ……テメエどんだけ変態なんじゃー!」
僕はサオリさんを剣の鞘でどついてやった。
「ハアハア……もっと」
あ、やばい! またスイッチが入ってしまった!
「サオリ、俺がやってやろう。さあ服を脱」
ゴン!
「隆生……やはりヒトシ化してきてるな」
「そうかな~? ヒトシだったらもっとえげつない事すると思うけど。それより何かいい方法を考えようよ」
その後皆で意見を出しあったが
「うーん、俺や隆生の神力でも、あそこまで飛ぶのは無理そうだな」
「さっき試しに浮かんでみたけど、ドームの天井くらいがやっとだよ」
「磁場さえなければわたしは余裕なんですけど、うーん」
「お姉様って何気に浮遊魔法使ってるから驚いたわ。あれって魔法力のコントロールが難しいのに」
「うーん……あ、そうだ!」
チャスタが突然叫んだ。
「何か思いついたのか?」
隣にいたシューヤが尋ねると
「ああ、ちょっと待って。持ってきてるはずだよな、えーと」
そう言ってチャスタは腰に下げていた魔法の袋(簡単に言うと四◯元ポケットみたいなもの)をあさりだし……。
「あった! ほら、皆これ見て!」
そう言って差し出したのは両手に収まるくらいの大きさの光る玉だった。
それが七つ……あ!
「チャスタ、それってまさかあの光の玉?」
「そうだよ、これなら行けるんじゃないかな?」
この光の玉とは七つあって、七人がそれぞれ一つずつそれを持って念じると光の道が現れてどこでも好きな場所へ行けるようになる、というアイテムだ。
チャスタは以前仲間達と一緒にこれを使い、光の道を作ってサンタクロースを助けに行ったんだった。
そこも高いところにある場所……これならいけるかも!
「……あの、それは使えないですよ」
サオリさんが申し訳無さそうに言ってきた。
「なんで!? それも磁場ってやつのせい!?」
「いえ、その光の玉はチャスタくんが元々住んでいた世界でしか使えないんですよ」
「え? でもこれミカの世界でも使えたけど?」
「あそこは全ての中心世界ですから例外ですよ。基本光の玉は、それが存在する世界でしか使えません」
「チェッ、せっかくなんとかできると思ったのに」
チャスタが項垂れているとシューヤがサオリさんに話しかけた。
「サオリ様。この世界には光の玉がないんですか?」
「ないですよ。というかあったら既に出してます」
「そうですよね。あ、光の玉って誰が作ったんですか?」
そういえば僕もそれ思いついてない。
「誰って、そういえば誰でしょう? 私が生まれる遥か昔からあったのは知ってますが」
サオリさんは首を傾げていた。
「サオリさんでも知らない、となると……おーい、覗き魔のセイショウさん返事してくださーい」
僕が上を見上げて呟くと、
- 誰が覗き魔ですか、まったくもう -
セイショウさんがテレパシーを送ってきた。
「いつも覗いてるじゃんか。あの、セイショウさんは誰が光の玉を作ったのか知ってますか?」
- ええ知ってますよ。これでも中心世界シュミセンの守護神ですから。
光の玉はですね、その世界のエネルギーから作りだせるものなんですよ。ですからその世界でしか使えないのです。そして光の玉を作れる方は、ちょうどそこにいますよ -
「え、それって誰ですか!?」
それは……。
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