第19話「目的地に着いたはいいけど」
じゃあそろそろとお開きとなり、皆で寝台車に向かった。
僕はベッドで横になった後、しばらくは窓から見える星空を眺めていたが、いつの間にか寝てしまった。
そして、明け方
「う、ん?」
何か耳元で寝息が聞こえた気がしたので目が覚めた。すると
「ZZZZZ……」
「……またか」
ミカがいつの間にか僕の右横で寝ていた。
この娘、寝ぼけグセも大概にせんとやばいぞ。
それに下着だけで寒くないんかい?
「お~い、起きろ~……ん? おい」
よく見ると僕の左側でユカが寝ていた。
こっちは白い寝間着着てるが胸元が開けとるがな。
そして足にも何かしがみついてるような?
まさかと思い布団をめくると、そこにはミルちゃんが寝ていた。
彼女は自分で持ってきたピンクのパジャマ着てるな。
しかし……。
「うん、姉ちゃんがこれ見たら『俺と代われ』と言うだろうな」
「ああ。そしてキサマを殺す」
「……」
そこには般若のような顔した姉ちゃんがいた。
「あのさ、これ皆が勝手に入ってきたんだけど」
「言いたい事はそれだけか?」
うん、聞く耳持っちゃいねえ。
「う……ん、あれ? 昨夜はチャスタと寝てたはずなのに。また寝ぼけちゃった」
おいミカ、何気に問題発言すな。
「ぱんつ脱いで待ってたのに」
おいユカ! 超問題発言するな!
てかずっと起きてたんか!?
「キサマァー!」
そして僕は血の涙を流した姉ちゃんにベッドから引きずり出された後、疾風迅雷落としをかけられて気を失った。
「ZZZZZ」
ちなみにミルちゃんはまだ寝ていた。
後で聞いたら彼女も寝ぼけグセがあるようだった。
しばらくしてから僕達は食堂車で朝ごはんを食べる事にした。
「うう、頭がまだ痛いよ……てか下手すりゃ死んでたよ」
「知るか。全く羨ましい事を」
「うう、ユカが、ユカが(泣)」
「大丈夫だよシューヤ、隆生さんが何かするわけないだろ」
「……ぱんつは冗談だったのに」
「ユカ、それは洒落にならないわよ」
「そういえば二時間くらい前から列車が動いてないが、何かあったのか?」
じいちゃんがそう言った時、サオリさんとギンガさんがやってきた。
「あ、サオリさんおはようございます。ギンガさんも運転お疲れ様です、あの」
「はい、列車が動いていない事ですね。ギンガったらずっと休まず運転席にいたの。だから少し休憩させてたのよ」
サオリさんは呆れ顔でギンガさんの方を見た。
「私は大丈夫なんですが、守護神様が休まないなら破壊して永眠させると言うので……すみません、もうじき運転再開しますので」
ギンガさんが頭を下げてきた。
「いやいや無理しないでくださいよ。帰りも乗せてもらわないといけないんだし」
「そうですよ、それにギンガさんには電車の操縦法も教わりたいんですからね!」
ミカがキツめの口調で言った。そこまで電車が好きか。
しかし本当に真面目だなギンガさんは。
もし人間だったら働き過ぎで倒れるタイプだな。
そして列車は再び動きだし、予定より四時間遅れで東京駅に着いた。
ホームに出るとそこは明かりだけが灯る静かな場所だった。
ここにはもっと多くの人がいるはずなのに。
「では皆さん、駅を出たところにバスがあるから、ここからはそれに乗って行きましょう」
サオリさんがそう言ってきた。
「はい。えと、それもギンガさんが運転するんですか?」
「いえ、ギンガには列車で留守番してもらいますよ。バスは私が運転します」
「え? 運転できるんですか?」
「できますよ。さ、こっちですよ」
サオリさんに案内され、八重洲口の方へ行くとそこには白いマイクロバスがあった。
そして皆が乗った後
「では出発しますよ、皆さんしっかり掴まっててくださいね……ふふふ」
な、なんかサオリさんの表情が怖くなってる?
「も、もしかしてハンドル持ったら性格変わるとかか?」
……姉ちゃんが言ったとおりだった。
バスは凄まじいスピードで首都高速を走り、レインボーブリッジを通ってあっという間に目的地に着いた。
「ふう、何か物足りないわね、いっそ首都高速十周くらいしてから」
ゴン!
「何で殴るのよ!?」
「やかましい! あっち見てみろ!」
「あ」
「大丈夫か、ミル!?」
「ふにゅ~~」
「わ、わたし気持ち悪い」
「ユカ……お、おれも、ダメ」
「チャスタは大丈夫? ……おえ」
「ミカの方こそ……うえ」
僕と姉ちゃんとじいちゃんはどうにか耐えられたが、少年少女五人はダウンしていた。
「……ごめんなさい、つい」
「サオリ、後でおしおきしてやろう。グヘヘヘ」
「あ……はいお姉様、私におしおきして、はあはあ」
ゴン!
ゴン!
「目的地に着いたはいいけど話が先に進まんわー!」
一方その頃、とある時空の狭間。
「……相変わらずですね」
「そうだね~、しかしセイショウのおかげで皆の様子がわかってよかったよ」
「皆大丈夫かしら?」
「大丈夫だと思うよ~、あ~僕もあっちに行きたいよ~」
「父上様まで行かれたら、万が一何かあった時困るでしょ?」
「わかってるけどさ~」
ミカやユカ、シューヤ達の世界の守護神セイショウは
母親であるランこと最高神アマテラスの分神精霊ランジェリークと
父親であるヒトシと共に、隆生達の様子を見守っていた。
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