第14話「天守閣にあったのは」
そしてやっと天守閣に辿り着くと……。
そこにはサッカーボールくらいの大きさの光る玉が浮いていた。
「ミルちゃん、不思議な力ってあれから出てるのか?」
「そうだよ。何か暖かい不思議な力が出てるよ」
姉ちゃんがそれを指さしながら尋ねるとミルちゃんはそう答えた。
「うーん、これいったい何だろ?」
僕がそう呟いた時
「うわ!?」
「な、何だ!?」
その玉がさらに光り輝きだし、それはやがて人の形になった。
そして
「ふう、待ってましたよ」
「え、イオリさん?」
そこにいたのは巫女服を着た黒髪の、うちの守護神イオリさんにそっくりな幼い顔つきの女性だった。
……いや、もしかしてこの人も男の娘?
「私はれっきとした女ですよ。あの女装趣味の変態兄貴と一緒にしないでくれませんか?」
その人は僕を睨みつけながらそう言った。
「え、ということはあなたはイオリさんの妹なんですか? じゃあもしかして」
「ええ。私はこの世界の守護神。名はサオリといいます」
その少女、守護神サオリさんが名乗った。
「それとあの変態兄貴とは双子です。全く忌々しいわ……っていけない。お久しぶりですね勝隆さん。全然姿を見せなくてごめんなさいね」
サオリさんはじいちゃんの方を向いて頭を下げた。
「は、はいお久しぶりです……あの、守護神様はいつからここにいたのですか?」
「少し前からです。ちょっと力を使いすぎたのであの玉に入って休んでたのですよ」
「え、力を使いすぎたって、何かあったのですか?」
「それは……十年前に勝隆さんをこの世界に呼んだ後、私も引き続き人間がいなくなった原因を探ってたのです」
「そうでしたか。それで守護神様、何か掴めたのですか?」
「ええ。何か途轍もない力を持ったものがある場所にあったの。私はそれを探ろうとしたけどそこに容易に近づけず……全ての力を使ってやっと形が見えただけでしたわ」
サオリさんは疲れた表情をしていた。
「それはいったい?」
「あれは本の形をしてました。だからおそらく隆生さん達が探しに来たものじゃないかと思うのですけど」
「え? じゃあ人間がいなくなった原因はその本?」
あれ、害はなかったんじゃないの?
「それはまだわかりません。ただ途轍もないものとしか」
「そうですか。……うーん、守護神様でも近づけないのなら僕達も無理」
「そんな事ないですよ。あなた達ならもしかしたら、と思ったのでちょっと番人を呼んで試させてもらいました」
やはりあの方達を呼んだのは守護神サオリさんか、でも。
「何であの方達だったんですか?」
僕が疑問に思って尋ねると、
「それはですね。あの世からここへ来れそうな人で、優れた人を選んで呼んだのですが、それがたまたま戦国時代の方に集中していたんですよ」
「そうでしたか。でもおかげでいろんな事に気がつけました」
本当に……。
「あの、最高神様はこの世界に来れないと言ってましたが何故かわかりますか?」
姉ちゃんがサオリさんに尋ねるとサオリさんは暗い顔になって
「……アマテラス様はあの時から一度もこの世界に来てくれないのですよ。来れないはずはないのに」
「あの時って?」
「もう何百年前だったか、私はアマテラス様に告白したんです。それから全然……」
「告白? 何の?」
「告白って言ったら愛の告白ですよ」
……は?
「あの~、サオリさんって女性ですよね? そして最高神様も」
僕がおそるおそる聞くと
「そうよ、それがどうしたの?」
……。
「い、いやすみません。でも女性同士というのは別にしても、最高神様にそんな思い抱くのはまずいんじゃ? だってあなたは最高神様に生み出されたのでしょ?」
守護神って最高神様が直接生み出すか、特に優れた人間や他の生物に力を与えて神にするんだよな。
「はい。私と兄は最高神様の分神体ですから、人間の感覚で言うなら実子と変わりありませんね」
「やっぱりかゴラー! あんた実の母親に告ったんかー!」
「だから人間の感覚では、ですよ。神にそんなものは関係ありません」
「いや最高神様は絶対気にしてるでしょ!? だからここへ来ないんですよ!」
「……私も薄々そうかと思ってますが、でもいつか……あ、来ないなら優美子さんに鞍替えしよかな、大人っぽくて美人だし」
「ねえ優美子お姉様、後で私と寝室で」
サオリさんが頬を赤らめて姉ちゃんの方を見た。
「ええ、最高神様の事など忘れるくらいあんな事やこんな事を、グヘヘヘ」
ゴン!
ゴン!
「痛い……神を殴るとは罰当たりな」
「隆生……お前最近ヒトシの影響出てないか?」
そうかもね、ヒトシは僕の前世だし。
「ところでその本はどこにあるのですか?」
じいちゃんが顔に縦線を走らせながら話を戻してくれた。
「それはですね。ミルちゃん、今地図帳持ってる?」
「うん、持ってるよ。はい」
サオリさんに尋ねられたミルちゃんが持っていた鞄から地図帳を出した。
「それちょっと貸してね。え~と、あった。ここですよ」
サオリさんは僕達にそのページを見せてくれた……けどさあ。
「何でそこなんですか?」
「そんなの知るわけないでしょ。とにかくここにあったんだから」
「そこにはうちの世界と同じあれがあるんですか?」
「いえ、ないですよ」
その場所とは……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます