第6話「ここを通りたければ」

 それから大通りを走ること二十分程で目的地に着いた。

 てかやはり他に車いないし、信号も動いてないからスイスイと来れたよ。

 

 そしてそこには、僕が知ってる大阪城と同じ城があった。

 てか遠目で見ることはあっても中にはもう何年も入ってないなあ。

「なあミルちゃん、不思議な力はこの辺りから感じるのか?」

 姉ちゃんがミルちゃんに聞くと

「うん。えっとね、あそこから」

 ミルちゃんが指さした先は天守閣だった。

 ああ、そういや子供の頃あそこで家族皆とはぐれて焦った事あったなあ。

 すぐ会えたけど……っと思い出に浸ってる場合じゃない。

「じゃあ皆、早速行こうか」

 

 それから僕達は大手門を通って天守閣への道を歩いて行った。

 あの石垣、この公園……昔と変わってないな。

 と言っても元の世界では今どうなってるのか知らないんだよな。

 機会があれば行ってみようか。




「やっぱり誰もいませんね」

 ミカが辺りを見ながら言った。

「まあ、何かいたとしてもオイラがやっつけてやるよ」

 チャスタが自分の胸を叩いて言った。

「そんなヤバいのがいるかな? そうだ。ねえじいちゃん、ミルちゃんみたいなエルフって他にいなかったの? それと他の生物ってどんなのがいたの?」

 僕が尋ねるとじいちゃんは

「エルフはミルだけしか見てないぞ。他にいたのは狼男とか鳥人間とか悪魔みたいなのだったな。どうやら皆私が守護神様が連れてきた者だと知ってたようで、とても良くしてくれた……だが最近姿を見せてくれなくなったな」

 じいちゃんは少し寂しそうにしていた。

「そうなんだ。どうしちゃったんだろその人(?)達」

「うーん、さあなあ。もしかすると人間と同じように」




 そして城の入り口

「さて、ここから天守閣へ」

「……待って、あそこに誰かいる?」

 ユカがそう言って指さした先には槍を持った鎧武者姿のおっさんがいた。


「よく来たな。ここを通りたければ俺を倒すんだな」

「え!? てか誰ですかあんたは!?」

「俺か? 俺の名は後藤又兵衛だ」

「な、なんだってー!? なんであなたがここにいるんですか!?」


 後藤又兵衛基次ごとうまたべえもとつぐとは戦国時代、安土桃山時代に黒田官兵衛や黒田長政の下で活躍した武将。

 大坂の陣の時には真田信繁達と「大坂城五人衆」と呼ばれていた人である。

 そして最後は夏の陣で討死した。


「わからん。俺はあの世で武芸の修行をしていたのだが、ふと気づいたらここにいた。そしてどこからともなく不思議な声がしたかと思うと、声の主はここを守ってくれと言ってきた。俺は何故かわからんが声の主の言うとおりにしようと思ったのだ」

「そうだったんですか。あの又兵衛様、僕達はこの世界を元通りにする手がかりを探す為に天守閣に行くんですよ。だから通してもらえないですか?」

 僕は又兵衛様を説得しようとした。が


「駄目だ。さっきも言ったがここを通りたければ俺を倒すんだな」

 そう言って又兵衛様は槍を構えた。


 う、どこが命の危険がないんだよ!?

 めちゃヤバイだろ!?


「ねえ、ようはあのおっちゃんと戦えばいいんだろ? ならオイラがやるよ」

 チャスタがそう言って前に出たが

「待て。あの人の相手はおれに任せてくれ」

 シューヤがチャスタにそう頼んだ。

「え~? オイラミカにいいとこ見せたいんだよ」

「わかってるさ。でもチャスタが万が一やられたら、この先にあるかもしれない罠をくぐり抜けれないだろ。だからここはおれが」

「う~ん、わかったよ。でも気をつけろよ」

「ああ。おれだってユカにいいとこ見せたいしな。じゃあ行ってくる」

 シューヤとチャスタは互いの拳をぶつけていた。

 

 あれってグータッチだよな。

 へえ、何か知らない間に少年二人に熱い友情が芽生えてたんだな。


「はあはあ、あの二人をモデルにしてBL小説書くのも」

 ゴン!


 僕はユカの頭に握り拳をぶつけてやった。



 シューヤは又兵衛様の前に立つと、どこからか出した槍を構えた。

 あ、シューヤって槍も使えるんだな。本当に万能戦士だわ。


「ほう、なかなかの腕のようだな。面構えも一端の武士になってるぞ」

 又兵衛様が感心したかのように言うと

「それは光栄ですね。それでは行きます」

「ああ、来い!」



 そして大和国第四公家次期当主・シューヤと、大坂城五人衆・後藤又兵衛基次の戦いが始まった。

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