第4話「そこにいた理由」

「まあそれは中で話そう。さ、皆疲れてるだろ。入りなさい」

「う、うん。じいちゃん」

 僕達はじいちゃんに案内されて居間に入り、真ん中にある長ちゃぶ台の前に座って一息ついた。


 しばらくしてじいちゃんがお茶を持ってきて、それを全員の前に置くと

「よっこいしょ」と自分も座って訳を話し始めた。


「さてと、どうして私がここにいるかだが、私は死んだと思ったらどういう訳かこの世界にいたんだ。何故、と思っていたらここの守護神様が私の前に現れて理由を話してくれた」

「父さん、その理由とは?」

 姉ちゃんがじいちゃんに尋ねた。


「それはな、この世界ではある日突然人間がいなくなったらしい。原因は守護神様でもわからないそうだ。それで悩んでいたちょうどその時にあの世へ行く途中の私を見つけ、私ならそれがわかるかもしれんと思って同じ体を作って転生させた後、ここに連れてきたそうだ」

「じゃあじいちゃんは生きていたというより、生まれ変わったようなものなんだ」

「まあそういう事だな。そして理由を聞いて私で役に立てるならばと引き受けたんだよ。そっちで死んでからもう十年か?」

「そうだな。父さん、この世界には父さん一人しかいないのか?」

 姉ちゃんが尋ねると


「いや、人間はいないが他の生物はいるぞ」

「そうか。で、何かわかったのか?」

「未だ何もわからん。遠方はまだ調べてないが」


「そうなんだ。そしてじいちゃんはずっと一人でここに住んで」

「いやさっき言っただろ。他の生物はいるって」

 はい? それどういう事?

「ねえ~、あたしも一緒にお話していい?」

 その時部屋の外から声がした。そして中に入ってきたのは。

 金色の長い髪で目がぱっちりとした幼い女の子。服装は若草色のワンピース。

 そして耳が尖っている……この子ってあれだよね。

「ああ、この子はエルフだ。名前は」

「あたしはミルっていうの、よろしくね!」

 その少女、ミルちゃんが元気よく名乗った。

 そしてじいちゃんの膝の上に座った。って

「じいちゃん、まさかこの世界で若い女エルフに会ってその子をこさえたとか?」

「アホか。私には佳子しかおらんわ」

 じいちゃんが僕を睨みつけてそう言った。


「はいはいそうでしたね。じいちゃんがばあちゃん一筋なのはわかってますよ。で、その子はいったい?」

「それはな、私が守護神様に言われてこの家に来た時だった。すると家の中から赤ん坊の泣き声がしてな。入ってみると居間にゆりかごがあり、その中にミルがいたんだ。名前はゆりかごに書いてあったのでわかった」


「そうでしたか。ではそれからずっと男手一つでミルちゃんを育ててたんですか?」

 ミカがそう言うと

「そうですよ。私も孫娘ができたようで嬉しかったんでね。ああそれと遅くなりましたがその節はお世話になりました」

 じいちゃんはミカの方を向いて頭を下げた。


「あ、はい。こちらこそあの時はありがとうございました」

 ミカは以前ヒトシが作った時空の歪を通って二十年前の世界に行き、そこで真君を、ご家族を救ってくれたんだよな。

 その時にじいちゃんや子供の頃の僕や姉ちゃんと会ってる。しかしあれはほんとミカのおかげだよ。


「そうだな隆生。ミカさんのおかげで不幸な出来事を変える事ができたな」 

「ねえおじいちゃん、このお姉ちゃん偉いんだね!」

 ミルちゃんがミカを指さして言った。


「いえ、そんな事ないわよ。でもありがとね」

 ミカは照れながら礼を言った。

「フフ……ああ父さん、話の続きだが」

「わかってるさ。では、さっき言ったとおり私はミルを育てつついろいろ調べて回ったが何もわからんかった。だが隆生や優美子達が来てくれたので少し道が見えた気がした」

「え? じいちゃん、それどういう事?」


「皆は最高神様から頼まれてとある本を捜しに来たんだろ。もしかするとそれが何か関係あるのかも」

「あの、それ世界を滅ぼすものではないと最高神様は言ってましたが」

 ユカがじいちゃんに言うと

「たしかに世界は滅んでない。だが人間やその文明は」

「あ……」

「いや、その本が原因かわからんがな」

「なあ隆生さんのじいちゃん、ここの守護神様ってどこにいるんだよ? 神様なら本の在処くらいわかるだろから聞いてみたら?」

 チャスタがじいちゃんに聞いたが


「うーん、守護神様はあれ以来姿を見せてくれんのだよ。声すら聞こえん」

 じいちゃんは眉を顰めて腕を組んだ。


「そうなのかよ。この状態ならもっと力を貸してくれていいのに」

「まあ、生活に困らないようにしてくれるのが精一杯なのかもな」

「うーん、手がかりもなしに世界中回ってたら一生かかっても」

 姉ちゃんがそう呟くとミルちゃんが

「ねえ皆、もしかしたらあそこかも?」

「え? 何か知ってるの?」

 僕達はミルちゃんの方を見た。

「えっとね、不思議な力を感じる場所があるの。だからそこかな~って」

「それってどこ?」

「えっとね、ちょっと待ってね」

 ミルちゃんはそう言って居間から出て二階に上がっていった。

 そして戻ってくるとその手には

「あ、懐かしいな。それ小学校の地図帳じゃんか」

「うんそうだよ。でね、えっとね、あった。ここだよ」

 ミルちゃんが地図帳を開いて見せてくれた場所は……え?

 

 そこなの?

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