第3話「何で……がここに?」

 しばらくしてどこかに辿り着いたようだ。

 辺りを見渡すと、あれ?


 目の前にあるのは大阪は阿倍野にある日本一高いビル、ではなくそれができる前にあった八階建てだった百貨店。

 振り返って見ると、こっちには今はモール街があるはずだけど、そこは昔あった古い商店が立ち並んでいた。

「ここは過去の世界? いや、違うな」

 姉ちゃんは首を横に振って言った。うん違うよね、だって

「……おかしいわ。太陽の位置からして今って昼間でしょ? それなのに人っ子一人いないなんて」

 ミカが空を見上げながら言った。そう、いくらなんでもこの時間帯に誰もいない、車すら通ってないなんてありえない。

「ここって僕達の世界と似た別の世界、かな?」

「そうみたいですね。あ、誰もいないなら本屋で書籍化作家様の本をタダで取り放題でき」

 ゴン!

「うう、ごめんなさい、ちゃんと買います」

 ユカが頭を押さえながら謝っていた。

 うん、ちゃんと買おうね。


「隆生さ~ん、あまりユカを殴らないでくれませんかね~?」

 シューヤが鋭い目で睨んできた。


「殴られたくないなら夫の君がもうちょい押さえとけよ、たく」

「な、お、夫っておれ達まだ……ふにゅ~」 

 おい、夫って言われただけで顔真っ赤にして倒れるな。


「なあ皆、もしかしたら誰かいるかもしれないし、辺りを見て回ろうぜ」

 チャスタが皆にそう言った。

 君がいてくれてよかったよ。




 それから僕達は百貨店の中や周辺を歩いて回ったが

「やっぱ誰もいないね」

「そうだな。しかしこの世界はいったい何なんだ?」

 僕と姉ちゃんが話していると

「ねえ隆生さん。そろそろ日が暮れるけど、どうする?」

 チャスタが話しかけてきた。

「う~ん、どうすると言ってもなあ」

「隆生さん、もしかしたらこの世界にも隆生さんが住んでるのと同じ家があるかも。もしあったらそこを拠点にしませんか?」

 ミカがそう言ってきた。

「そうだね。よし、元の世界と同じならここから歩いてだと一時間はかかるけど、行ってみようか」

 僕がそう言うと全員頷いた。


 そして住宅街を歩いて行ったが、大通りに出た時

「……あっちの方、何もないね」

 僕が以前住んでいたマンションがあった方向を見ると、地平線が見えるくらいの大草原がそこにあった。

「何なんだこの世界は? まあそれは後にして、行くか」

「あ、うん」

 そして何か遠い昔の感じがする住宅地の中を歩くこと三十分、やっと家がある場所に着いたが

「あれ?」

 そこに家がある事はあるが、全く別の古ぼけた家だった。


「これは……そうだ、昔ここにあった家だ」

 姉ちゃんが手をポン、と叩いて言った。

「え? 昔はこんな家があったの? 僕は自分ちが建つまで空き地だった記憶しかないけど」

「隆生がまだ幼稚園児だった頃に取り壊されたから、覚えてないだろうな」

「そうだったんだ。それで姉ちゃん、どうする?」

「そうだな、実家の方に行ってみるか?」

「うん。でももし実家も無かったら、どっか適当な場所を探そうか」

 そして更に数分程歩くと


「あ、ここは元の世界と同じだ」

 そこには木造二階建ての古い僕の実家と全く同じ家があった。

「えっと、鍵は合うかな?」

 僕が実家の合鍵を鍵穴に差し込むと、戸が開いた。

「鍵も同じか。じゃあ皆入ろ」

「待って下さい、中から人の気配がします」

 シューヤが僕の腕を掴んでそう言った。

「え、誰がいるんだろ? うーん、それなら勝手に入っちゃ駄目だな」

「ねえ隆生さん、もしかしたらここの人が何か知ってるかもしれないぜ。話を聞いてみようよ」

 チャスタがそう言った。

「そうだな。では玄関のインターホンを押すか」

 姉ちゃんが玄関に向かおうとした時

「誰かいるのか?」

 家の奥から誰か出てきた。

 

 それは白髪で眼鏡をかけたお年寄りの男性


 って、え?


「あ、あ」

「嘘だろ……?」

 僕も姉ちゃんもその人の顔を見て驚いた。だってこの人。


「何故お前達がここに……なるほど、そういう事か。さ、入りなさい」

 僕達がまだ何も言ってないのにその人は全てがわかったようだった。

 それ、僕が知ってるあの人と同じってまさか


「そのまさかだ。私はお前の祖父、仁志勝隆だ」

 その人いや、じいちゃんが僕に向かってそう言った。

 って


 亡くなったはずのじいちゃんが何でここにいるんだよ!?

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