第1話「平和にやってたのに……」
僕の名前は仁志隆生、二十六歳、独身。男。
とある会社の営業担当兼フィールドエンジニアである。
仕事が終わり家に帰った後、自室で趣味でやってるWEB小説を書いていると
「隆生、夕飯ができたぞ」
部屋のドアを開けてそう言ってきたのは優美子姉ちゃんだった。
「うん姉ちゃん。今行くよ」
自室からリビングに行くと、ちゃぶ台の上には鍋が置かれていた。
中身ははんぺん、こんにゃく、ちくわ、他にも色々入っている。
「へえ、おでんかあ。美味しそうだね」
「ああ。今日は冷えるからな。それにミカちゃんとユカちゃんも手伝ってくれたんだ。向こうにもおでんはあるそうだからな」
「ええ。だいたいこっちのと同じですよ」
そう言ったのはミカ。
「お姉様もわたしもおでんは得意料理ですよ」
ミカの妹、ユカもそう言った。
この二人は信じられないと思うが僕が書いている小説の世界、いや僕が二人が住んでる世界の事が見えていてそれを書いている、と言えばいいのかな?
とにかく異世界からやってきた姉妹である。
「しかしあの世界はどんなファンタジー世界だよ。おでんどころか米もラーメンもあるなんて」
僕がそう呟くと
「世界を創造した神が日本人と同じようなものだからじゃないかな~。あの世界はすべての世界の中心だし」
「え、そうなのかよ?」
僕の隣にいた眼鏡をかけた少年、いや、見た目は少年だが中身はどSのオッサンで小説のラスボスでもあったヒトシが言った。
「うん、君が小説の設定で思ってる通りだよ」
えーと、僕が思ってる設定では、すべての世界を創った創造神様とその子供である最高神様姉弟は元は人間であって日本人みたいな人ってのも考えてたが、そのとおりならそうしよ。
「まあいいだろ。さ、隆生、ヒトシ。食べるとしようか」
姉ちゃんがそう言ってきたので僕達はちゃぶ台の前に座った。
そして皆で手を合わせて
「「「「「「いただきます」」」」」」
僕達六人はそう言った……あれ? 六人?
この家には今五人しかいないはずだが?
「はむはむ。この大根、味が染みてて美味いですね」
声のする方を見ると、少し長めの髪で目がキリッとしていて、弥生時代を思わせる服を着た中学生位の少年が美味そうに大根を頬張っていた。
って、シューヤ!?
「何で君がここにいるんだよ!?」
「……うぐっ! 何でってお忘れですか? おれは優美子様の護衛隊長ですよ」
シューヤは大根を飲み込んでから言った。
「あのさあ、この世界には脅威はないんだから、姉ちゃんの護衛するなら向こうだけでやってよ」
「いえ、こっちでも何が起こるかわかりません。万が一の事があっても対応できるよう、いつでもお側にいないと」
シューヤが真剣な目つきをして言った。だけどね。
「ねえ君、本当はユカの側にいたいだけだろ?」
僕が小声で言うと、シューヤは顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。
あ、シューヤとは向こうの世界の王様で小説の主人公タケルに仕える小姓だったけど、そのタケルが彼を姉ちゃんの護衛隊長にしたんだよな。
そして彼はユカに一目惚れしたんだよなあ。
ユカは最初シューヤに全然興味なしだったけど、今はちょっと気になってるようだ。頑張れシューヤ。
「……シューヤ、あなた」
うん、そうだよ。ユカの側にいたい
「……タケルだけじゃ飽きたらず、隆生さんにも抱かれたいんだ」
「違うわよユカ。彼はヒトシさんも入れてさんp」
ゴン! ゴン!
僕は思いっきり二人の頭をどついてやった。
「うう、隆生さんは虐待が趣味なの?」
ミカが涙目で頭を押さえながら言った。
「そんな趣味はないわ! ヒトシなら」
「さすがに二人にはしないよ~、キャハハハ」
ヒトシが笑いながら言うと
「私はあんな事やこんな事されましたが」
ヒトシの後ろから誰かの声がした、っておい?
「何であなたがここにいるんですか?」
そこにいたのは黒髪で巫女服を着た少女、じゃなくて男の娘。
この世界を見守っている神様、イオリさんだった。
「ああ、私はこの世界のどこにでも現れる事ができるんですよ。何なら隆生さんがお風呂に入ってる時にでも……はあはあ」
イオリさんはヨダレ垂らして興奮していた。
「ねえヒトシ、思いっきりやっちゃって。あ、それをミカちゃんとユカちゃんに見せてあげて」
「うんいいよ~」
「え、あ♡」
あ、イオリさんが目をハート型にしてさらに興奮しだした。てか神様がそれでいいのかよ?
「おい皆、おとなしく食べような」
「あ、ごめん」
姉ちゃんが呆れ顔で言ってきたので僕も皆もおとなしく座った。
「あ、たくさんあるしイオリさんもどうぞ、って座る所ないな。どうしよ?」
「ならユカちゃんが俺の膝の上に座ればいいだろ」
姉ちゃんが真顔でそう言った、って
「おい、何を考えてるんだこの変態ロリコンババア」
「冗談だ。怒るな隆生」
やはり真顔で答えた。
「……冗談に見えなかったよ」
「そうか? よし、なら、はぁっ!」
姉ちゃんが手を上にかざして気合を入れた時、僕の後ろに何かが落ちたような大きい音がしたので振り返って見ると……。
「アイテテテ、あれ、ここどこだよ?」
そこにいたのは頭にターバンを巻いていてアラビアンナイトみたいな服を着た小学五、六年生くらいの少年だった。って
「何で君までここにいるんだよ!?」
「知らないよ。オイラいきなり何かに引き寄せられて、気づいたらここにいたんだよ」
彼はどうやら自分の意志でここに来たわけじゃないようだな。だとしたら。
「姉ちゃん、今何しようとしたんだよ?」
僕はおそらく犯人である姉ちゃんに尋ねた。
「いや、俺は神力でちゃぶ台をもう一つ出そうとしたんだが?」
姉ちゃんは首を傾げながらそう答えた、って
「ちゃぶ台とチャスタを間違えんな-!」
彼、チャスタは僕が書いたサンタクロースが攫われた物語に出ていた元盗賊の少年である。
そして彼は……まあ、これはおいおいと。
「あ、チャスタ……いつ見ても可愛いわ。はあはあ」
ヨダレ垂らすなショタコン鉄オタミカ。
「おお、美少年を手篭めにする二十六歳男、はあはあ」
僕にそんな趣味ない。
想像するのは勝手だが現実になるのを期待するな絶壁腐女子ユカ。
と、まあこんな調子だけど毎日平和にやってたのに……。
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